2015年11月23日月曜日

エディ・ジョーンズとの対話「コーチングとは信じること」を読んで

同著は、スポーツキャスターとしても有名な生島淳氏の著書です。そうです、生島ヒロシ氏のご子息です(似ていますよね)。

エディ・ジョーンズとの対話「コーチングとは信じること」を読んで

現在、NHKBSの「ワールドスポーツMLB」の司会をやっておられます。私はこの番組をよく見ています。

生島氏がラグビー前日本代表監督のエディ・ジョーンズ氏との対話を基に書いたものです。
ただ、本書はワールドカップ前に取材・出版されている点にご留意を。


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ラグビー日本代表の前回のワールドカップでの活躍は皆さんご存知の通りでしょう。前評判が高かったのですが、サッカーの男子日本代表などは散々期待外れでイラつかされていたので、正直あまり期待していませんでした。

しかし、結構テストマッチとはいえ、強豪に勝っているし、ジョーンズ監督はすごい人だ、と聞いていたので、ワールドカップ直前には多少期待していました。
南アフリカ戦はテレビで見ていましたが、前半リードされた段階で寝てしまいました。翌朝起きると逆転勝利だったので、びっくりした、という次第です。

今回のワールドカップではスクラムやモールで日本が相手国を押しまくっていましたが、そんなの今まで見たことがなかったですね。


彼の記者会見での一語一語に普通の監督以上のものを感じたので、もっと彼のことが知りたいと思ったのと、著者が生島氏だったというコラボで買っちゃいました。

第一の感想は、私も例外ないのですが、外国人が見た日本とは、という点に興味がある人、特にスポーツ界全般についてですが、読むと非常に参考になると思います。

ジョーンズ氏は、日本人の血が1/4混じったオーストラリア人です。日本でもサントリーなどのクラブチームで監督を引き受けて、優勝に導いていますし、オーストラリア代表ワラビーズを率いて、ワールドカップ準優勝などトップレベルのヘッドコーチ歴を誇っています。
また、ラグビーだけでなく、サッカー、アメフト、ハンドボール、ベースボールなどほかの競技のトップチームの監督などとも交流があり、一流の指導法などを研究されつくしています。日常と違う異文化に触れると斬新なアイデアがひらめきやすいそうです。

彼のコーチングは目標から逆算して、必要なことを定義して、それを一つ一つこなしていくことと戦略的なアプローチをとっています。その中では決して妥協しない、プロとして貫きます。

そして、選手をはじめ周りの人に、自分は何をやりたいのかを徹底的に説明して回って、理解を得ようと努力するそうです。「コーチとは優秀なセールスマン」と言っています。
徹底的に売り込むためには、選手一人一人の個性・性格も正確に把握するよう努めます。
選手一人ひとりと対話をして、相互理解に努めます。

この過程で、彼は日本と日本人および日本社会を的確に観察しています。この日本的でよくない面を一掃しないとスポーツでは勝てない、と断言しています。

例えば、
弱者を褒めたたえる習慣。スポーツの目的は勝つためにあり、そのために膨大な時間を費やすにもかかわらず、敗者にも勝者同様に光が当たっている点は、初めから負ける言い訳を容認しているのではないか、と危惧しているようである。彼によると、負けて涙するぐらいなら、すべての感情を出し切って最後まで戦ってほしい(涙する余力を残すな)と。

自分で自分の長所に気づかない。自分の持ち味を自分で前向きに表現できないのが残念だと。日本の選手とマンツーマンで対談し、「あなたの長所は何ですか?」と聞くと、なぜか選手たちは自分ができないことを3つぐらい述べるそうです。これは横並び意識や普通でなければならない(無難にこなす)ことを半ば社会から強制されている、また高校や大学でコーチが叱りながら指導するからだ(マイナス面にばかり目が行く)という点も影響しているし最後に自分の強みがわからなくなるのだろう。強みがわからないと自分のチームにおける役割もあいまいになってしまうのでは、と分析していました。
(図星で当たっていますね)

こういったことを日本人に指摘すると、「日本人は農耕民族だから、狩猟民族の欧米人と違うんだ」という答えが返ってきて、ジョーンズ氏はびっくりしたそうです。
あの「オールブラックスのニュージーランドは日本なんかよりはるかに農業国ですが?」と答えるそうです。
最初から言い訳が用意されているようなことは革命を起こして変えるべきだ、と断言しています。

また、高校・大学のラグビー界で、いわゆる伝統校は「自分たちのカラー」に固執してしまっていて、新しい方法やその環境に適合した方法を取り入れようとしない、適切なコーチングを受けていない、と分析していました。したがって進歩が止まっていると。
一方、最近大学選手権で勝っている帝京大は進んで海外の優秀なコーチを雇ったりして、効果的な練習・指導、練習環境の提供を受けたとたん、勝ちだしたのだ、と。

最後の部分は日本社会全体に言えるかもしれませんね。「ものづくり」に固執して、外部環境に適応できずに、中国・韓国の企業に負けてしまうとか。

また、ニュージーランド以下の国がなぜ強くなったのかといえば、それは様々なものを積極的に取り入れ(ポリネシア系の人を移民で受け入れ、ラグビーでも選手層が厚くなった)、選手・コーチがトップチームに上がっていく育成システムが効率的になっているからだ、と言っていました。

一見当たり前にも思ったのですが、「日本のように、選手時代で有名だったからと言って、すぐにトップチームの監督・コーチになるなんてことはあり得ない。コーチならコーチとしての実績がないと上に上がれない」とバッサリ(プロ野球なんて図星)。」

などなど印象深い箇所はまだまだありますが、これぐらいの人に監督・コーチを任せないと日本のスポーツ界、特に団体競技は復活はむつかしいんじゃないか、ラグビーに限って言えば、次の日本大会に向けてヘッドコーチがいまだに決まらないのは非常にやばいのではないか、と感じています。

ジョーンズ氏は、日本が契約延長交渉をやる前に南アフリカのクラブチームのコーチの仕事を引き受けてしまいました。しかし、先日イングランド代表のヘッドコーチに就任すると発表されました。

彼以上の指導者を探してこないと、地元開催のワールドカップを成功に導くのは非常にむつかしいと思います。たぶん日本人ではむつかしいなあ、と正直に思いました。
彼のやり方に異論を唱える向きもありますが、異論を唱える人は現状を否定されて、妬み嫉妬や自己防衛に走っている人だと思います。

日本ラグビー界はもったいない人を逃してしまったようです。



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