2016年1月25日月曜日

Kinder Morgan 第4四半期 まあまあ 経営陣は率直な印象

KMIの第4四半期決算が20日に発表され、カンファレンスコールの議事録を読みました。
単なる個人的な感想です。


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弱い経済環境ながらも、改めてそのSolidなビジネスモデルの強さを発揮した半面、原油相場に左右される点が多いといった感じです。

今回は決算発表がメインで、2016年の見通しは今週改めて行うといっていました。
経営陣は配当を大幅にカットしたことにより、当面の財務戦略の柔軟性を十分確保し、市場からの雑音をシャットアウトできたのではないでしょうか?

KMIは元々MLP(Master Limited Partnership)という形態の会社でした。

MLPとは、ざっくり言えば日本のREITのようなもので、投資資産からの収入の90%超が石油・天然ガス等のエネルギー関連のもので、そこから得たCF90%超を投資家に配当等として還元するのであれば、法人税は免除する、というもの。

日本のJ-REITとの違いは、J-REITは税引き前利益のほぼ全額を配当可能原資とすることができるのに対し、MLPは投資家との規約により、CFの全額(つまり、営業利益に減価償却費やのれん等の償却から運転資金や維持管理に必要な修繕費を控除したCF)を配当とすることができる、という点でさらに踏み込んでいる点である。

(石油天然ガス等の施設は初期投資費用が莫大であるが、いったん生産が軌道に乗ると、あとは数十年、維持管理だけでそれが使える装置産業)

したがって、MLPは本来、成長投資は資本市場から増資か社債あるいは銀行借入金などにより調達して、資産を大きくし、その中で、一株当たり配当を増やす、というのがビジネスモデルだった。

しかし、原油価格が急落し、エネルギー関連株はつるべ落としのように下落してしまった。
このことは、従来100の資金を市場から調達するのには、50の増資と50の負債が必要だったと仮定しよう。50の増資に見合う発行株式数が一株35ドル~40ドル台の時と現在の15ドル程度では、必要な株数が増加してしまい、既存株主への大幅な希薄化を生じさせるので、既存株主に不利益になってしまう。

100の投資から生まれるCFの前提が同じだとすると、一株当たりの利益やCFも「分け前が減る」)

しかし、(ここが重要)受注済みの仕事が山積みになっており、これに対処しないといけない。増資できないが、受注残をこなさなければならない、となると配当を削って受注をこなす以外にない、これが今回の減配要因です。

したがって、本業がダメになったわけではく、MLP型ビジネスモデルの前提が崩れてしまったのです。

J-REITでも、リーマンショック直後で不動産市場が崩壊したときに、やはり銀行からの借り換え資金を、貸し渋りにあって破たんしたREITもありました(当然その当時増資に走るREITもなかったけど)。

しかし、その後REIT市場も落ち着きを取り戻していますね。

将来、こういった資金調達方法がどのように評価されるのか、それは現在不明です。アメリカのREIT市場も正常化に向かいつつあるので、たぶんある程度戻るとは思いますが、MLP各社は成長資金の全てを市場から調達しないでも、やっていけるような戦略をとっていくと思われます。

さて、カンファレンスコールですが、

2015年度のDCF(分配可能キャッシュフロー)は$4.9B(実績ベース)
2016年度の予定配当金
優先株                    $0.2B
普通株(減配後)               $1.1B
成長投資用の設備投資資金           $3.3B
バッファー                  $0.3B

というのがざっくりした見立てのようです。2016年度のDCFについては今週改めて発表される見込みですが、15年度を下回ることはないような気がします。

あと、電話会議ではCounter Party Risk(たぶん与信リスク、取引先の破たん)について議論がされていましたが、上位25社で収入の44%程度しか占めていないので分散化されている、収入の1%以上を占める顧客は20社程度ともこと。

上位25社のうち8割は投資適格の格付けを得ているようです。

ただし、最後に90年代からの株主と名乗る人が、「もともと2011年には一株配当が$3ドルになる、というのがコミットメントだった。今回の減配の理由はわかるが、本業がSolidなら2011年にDCF$3ドル以上になるという見通しができるのか教えてほしい」
と質問したが、

Rich Kinderさん(オーナー)は、数字の約束はできない、今はただキャッシュを確保して、市場に依存せずに受注をこなしていくことだけを考えているので我慢してほしい、と弁明する場面がありました。

最大株主でもあるRichさん(役員報酬は$1しかもらっていないので、当社からの配当がすべての人で潔い)は以下のようにコメントしていた点が印象的でした。

I think that's a very wrong-headed, short term view, but the market is what the market is. Obviously we believe we are tremendously underpriced.

(アナリストに今のマーケット環境について質問され、ひどく過小評価されている、と回答。ただし「Market is what the market is」と仕方ないとも)

会社の最優先方針は
Look, I think you have to look at what the situation is when and if that occurs. Obviously in today's market if something happened, we would love to be buying stock at this kind of ridiculous level. But that may not be the case a year or two years from now. If the market is more rational we might use that to increase the dividend. We are certainly going to be continuously mindful, as Steve said at keeping our investment grade rating and maintaining a real solid balance sheet.

(ざっくり意訳すると、こんな馬鹿げた株価レベルなら喜んで自社株買いをしたいものだし、市場が合理的になったら配当も増やしたい。優先順位は投資適格を維持することだ)

Nobody’s affected anymore than I was by dividend cut, okay ?
(彼の報酬は配当だけですから当然の言い様)

IBMとの比較では、IBMではCFOの回答は非常に歯切れが悪かった。一方、KMIはアナリストの質問に対し、できるだけ透明性を持たせていたし、彼らも納得しているようだった。

そして、今できることはキャッシュの温存だ、というシンプルなメッセージをストレートに表現していたので、聞いていて納得感があった。

目先まだまだ苦戦が予想されるが、こちらの投資予算さえ都合がつけば、配当利回りが3.5%~4%(株価にすると12.5ドル~14.3ドル;金曜日終値は15.3ドル)ならいったん売った株数を買い戻してもいいかもしれない、と思った。

やはり株価次第か。

それから、ターミナル事業では大手石炭会社の経営破たんの影響を受けて損失が発生したといっていた(大きな額ではないが)。したがって向こう3四半期は同社からの利益がなくなる。これは当社よりも鉄道会社への収益インパクトが大きいように、単純に思った(鉄道会社の業績をしっかり把握していないので、ドタ勘ですけど)。

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