2016年10月7日金曜日

制度かイノベーションか? 小野薬品工業 オプジーボの薬価引き下げ

ある程度判明していた話(当初の想定以上に売れた場合、単価を見直す仕組み)ではあるが、改めて思う。

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小野薬品工業の「オプシーボ」と言う処方薬の価格引き下げが議論されている。
「オプシーボ」はがん免疫療法と言われる新しい治療領域を開発したことで、画期的と言われている(従来は、化学療法(抗がん剤)、バイオ薬(分子標的薬)、放射線治療、そして外科手術)。

がん免疫療法は、当該薬品を用い、自分の免疫を使って、がん細胞を殺傷するように仕向けるのが他の方法と違う点である。外から強力な薬剤を使うのではなく、本来人間に備わっている自己免疫力を活用することでがん治療を行う点が画期的と言われている。

これまでは、がん細胞は自己免疫を誤魔化す(がん細胞が正常細胞であるかのように自己免疫に信号を発することで、体内にある免疫ががん細胞を退治することを見逃してしまっていた)機能があった。この機能を破壊する、というのがざっくりとしたメカニズム。

本来、健康な人はがん細胞が体内に発生しても、免疫(キラー細胞とか言われている)ががん細胞を発見して、見つけ次第殺傷する機能が備わっている。しかし、ある遺伝子異常などで、自己免疫の機能がくるってしまうと、がん細胞の増殖を許してしまう。結果、がんと診断される。

シロウトながらのざっくりとした、オプシーボの作用メカニズムを書いてみた(本当にざっくりですけど)。

日本の確か京都大学の教授と小野薬品工業が長い時間をかけて開発したこの薬が、「世界初」をうたい文句で、臨床試験である程度の結果を残すことができたので、日の目を見ることになった(注:莫大な研究開発費のかなりの部分を米ブリストールマイヤーズ・スクイーズスクイーブ社が共同開発で負担している。確かアジア以外の販売権は同社が持っている)。

ただし、アメリカのメルク社も類似薬を同じような時期に開発していたこと、厚労省でも「ドラッグラグ」(要するに日本の新薬承認審査機関が長すぎると批判されている)への批判対策もあって、ある程度「見切り発車」的な承認(要するに少ない臨床結果でも承認する)を下したいきさつがある。

「世界初のがん免疫療法薬を日本で承認」という話題性を厚労省が欲しかったのだろうと思う。

したがって、承認した薬価もかなり高い水準(比較対象する国がなかった等)だった経緯がある。

ここにきて、「海外ではもっと安い」とか、「オプシーボだけで医療費が1兆円かかるかもしれない」とか批判が噴出してきた。

日本では厚労省傘下の中央社会保険医療協議会でこういった議論がなされ、薬の価格が決まっていく。

厚労省では、一方では、イノベーションを促進しないと日本の科学力が低下する(ノーベル賞のような基礎科学はグローバル水準ですが、創薬等の応用・商業科学はダメ)といって、アベノミクスでも文科省・厚労省・経産省を一気通貫してバックアップする、と言っていた。

したがって、本来はウエルカムな出来事である。

しかし、実際こうしてイノベーションが発生すると、高すぎるといった議論になってしまうし、実際世論とか世の中の空気で価格が押し戻されてしまう(マスコミ世論を数値化するのが、何とか審議会の役目)。

医療分野でのイノベーションが、「科学の発展」なのか「社会コスト」なのか、メカニズムが曖昧だと思われる。概念が「市場」と「政府」なので相容れないのは当然なのかもしれないが、日本でなかなかイノベーションが起きにくい原因の一つかもしれない。

もっともこの「オプシーボ」は、がん増殖機能のかなり基本的なメカニズムを破壊する可能性を秘めているので、現在承認されている皮膚がん(の一部)、肺がん(の一部)以外にも利用できる可能性があるので(現在臨床試験中)、単価ではなく数量で稼いでくれる可能性がまだまだ残っている。

そういった意味では、小野薬品工業の株も投資対象としては興味深い。

小野薬品工業
株価:3091
予想PER29.36
配当利回り:1.29

業績予想(四季報)
183期の業績で見た場合、21.5倍のPERとなる。153~173期(予想)で純利益は4.8倍にジャンプアップしていますの見通し。

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