楽天証券のセミナーで堀古氏がアメリカで話題沸騰中の「21世紀の資本論」という本について少し話しておられましたが、東洋経済の7月26日号でその特集が組まれており、読みました。
私は該当本「Capital in the Twenty-First Century」を読んでいません(英文で700ページはちょっとゴメン)ので、東洋経済の記事からの感想になります。
本の趣旨は、フランス人著者のピケティ氏が欧米先進国(含む日本)約20か国の200年分のデータをさかのぼって、富と所得分配の歴史を分析したものであり、その歴史上、経済成長率が高かった時期は貧富の差がそんなに広がっていないが、経済成長率が低い時期は貧富の差が広がっていく傾向にある、というもの。
特に、資産収益性(株、債券など)のリターンは経済成長率や所得の伸びより大きく、今後の低経済成長率を前提とした場合、資産を保有するものがますます富める者となり、持たざる者との差が広がる。
したがって、所得中心に課税するのではなく、資産残高を目処に課税すべきであり、そうすれば富の公平な分配ができる。そのためには国際間の協調関係が必要だ。
ざっくり言えば、こんな感じか。
東洋経済の記事の方は、この趣旨(や著者へのインタビュー)を紹介した後、識者の意見を交えて、この本の評論を行っている。さらには、日本の格差の実態や、実際に貧困に陥ったサラリーマン・サラリーウーマンの実例を交えて紹介し、(比較的中間層以上の読者が多いと想定される週刊東洋経済の読者層が)いつ何時貧困層に転落するかもしれないという警笛を送っています。
私もこの本に興味があったが、よく考えると、私も含め、このブログの読者層は、自分の資産をどうやって効率的・効果的に増やそうかを熱心に考えていて、なおかつ、脱日本目線でそれが実行できうる人が多く、投資リテラシーもそれなりにお持ちの人だと思う。
したがって、経済成長率や自分の所得の伸び率より、株式投資のリターンの方が絶対よい、ということは、200年の統計分析をせずとも、感覚的に理解できている人ばかりだろう。
だから株式投資に時間と資本を投下するんですよね(笑)。アメリカ株のリターンは年率平均6~7%、プラス配当金が2~2.5%でトータルリターンは8~9.5%、そこから円高率で-2~3%あるので、円ベースの実質リターンが5~7.5%、40歳を過ぎると、自分の給料が年率5%以上上昇することなんて、想定できませんわなあ(笑)。
連続増配株に投資していれば、受取配当金も年率7%~9%の増配を期待できます。これも自分の所得の伸び率を上回る可能性が高い(その確実性も高い。なぜなら、経営者は雇用をリストラしても、配当をカットすることがないからだ!!! IBMやP&Gを見れば一目瞭然!!)。
それよりも、彼が資産の保有残高に応じた課税システムを提唱していることにビビってしまった。
ピケティ氏は、フランスの社会党支持者らしいので、まあ、結局はプロパガンダが混じっている可能性も否定できませんが、この本が圧倒的な支持を受けると、ストックに課税する世論が大きくなって、配当金課税の強化や保有資産に応じていろんな負担が増やすような仕組みが増えることが問題だ。
(注:週刊東洋経済では、議論が一方的にならないようなバランスのある議論を配慮していると思う。これは一般的な日本の単純ジャーナリズムにはなく、この特集の良かった点だと思う。某経済新聞だと、たぶん議論が一方方向に偏っているだろう。さすが「東洋」、「日本」より上手!!)
普段は嫌いで、ほとんど見向きもしない、池田信夫氏が「資本収益はリスクに対するリターンであって、これに課税すればリスクテイクするインセンティブを阻害するので、反対」と言っている意見には、大賛成です。