2013年4月16日火曜日

中国は世界の経済大国なのか? GDPは名目で見るの実質で見るのか?





中国のGDP成長率がエコノミスト予想を下回った、ということで、市場のリスクオフ材料になっているようです。

どなたの本か忘れてしまいましたが(岩田日銀副総裁か、高橋洋一教授だと思う)、中国は実質ベースでみたGDPは日本より低い、とおっしゃっていました。

世界経済ネタ帳さんで、測定してみることにしました(以下データは全て「世界経済ネタ帳」より)。

中国のGDPの推移(名目ベース)
2012年は52,184十億元とのこと(1元15円とざっくり仮定すると782兆円となりますかね)。
日本はざっくり480兆円であることと、1元も円安になったこともあって、思いっきり追い抜かれましたね。





中国のGDP実質ベースの推移
わかりやすくするために、名目と実質を同じグラフで比較してみました。
91年ごろまでは名目<実質だったんですね。今の日本のようです。なんでだろ?元レートを高く設定しすぎたのかもしれません。為替レートが文化大革命後の弱体化した中国経済を反映していなかったのかな(単なる推測です)?当時はデフレだったのかな?

91年と言えば、80年代後半に、ソ連のペレストロイカの影響を受け、中国も「開放路線」を歩み出したさ中、反動的な天安門事件が終わったころでした。そして、危機感を募らせた鄧小平氏による、「黒ネコでも白ネコでも、ネズミを捕るネコは良い猫だ」という南方講話が始まって、中国では外資誘致ブームがスタートする直前だったと思う。外資を誘致することで地方政府が中央政府に手柄をPRしたような時期(この前後の時期に中国に進出した企業は今頃大きな恩恵を受けている。ケンタッキーフライドチキンも含めて)。
そして上海市長が最高責任者に上り詰めるのですね。
一方、アメリカも湾岸戦争で財政が疲弊し、80年代の景気拡大路線が循環期に差し掛かり(また日本の電子部品、半導体攻勢に痛めつけられ)、景気が下火で、パパ・ブッシュ大統領は日本や中国に米企業のCEOをひきつれて、トップセールスを行っていましたね。パパ・ブッシュは日本で晩さん会を行った際、けいれんを起こして倒れてしまった。

当時、外資を誘致したい中国側と、とにかく新しい市場(初めは製造拠点だったと思うが)を見つける必要性があったアメリカの利害関係がこの時は一致していたのですね。日本は、Japan as NO.1と言っていたような…。

しかし、このころを起点に中国経済は大躍進を遂げたことは間違いありません。97年アジア通貨危機後は大幅に元安へ誘導したとも聞きます。

ちょっと前置きを長くとりましたが、これが中国の実質と名目のGDPの推移です。驚愕の事実が・・・。







さて、2012年の「実質GDP」は16,657十億元です(ざっくり250兆円で日本の1/2???)。

経済学を学んだわけではないので(法学部卒です。しかし、法律もまじめに学ばなかった…。当時は何をしてたんだろう?)、名目と実質のどちらがより大事なのか正直わかりません。

ただし、中国が世界第二の経済大国である、というのは世界中で既定路線のように語られていますので、経済規模を表すのに名目でもいいのかもしれません(しかし、名目の1/3しか実質が無い、というのも日本に住んでいると、どういう状態なのかよくわかりません)。

私が社会人になったころはいつも実質ベースで語られていた記憶があり、実質が正しいのだ、という先入観があります。
今、アベノミクスで名目成長率を増やす必然性がやっと実行に移されたように思います(国の社会保険構想は名目成長率を前提にシミュレートされている。一般財政最大の支出項目ですね)。

けど、インフレで成長した分は、水ぶくれ的な発想もわからないこともない。
実質と名目のバランスが取れていることが、大事だと言えそうかな?

一人当たりGDPで比較しろ、って言われても、中国の富裕層の絶対数と日本のそれが接近しているのと、日本に伝わってくる中国人像ってバブっているケースが多いから、どうしても隣の芝生が青く見えてしまう(日本と密接にかかわりのある知り合いの中国人も、向こうの基準では高所得者な人が多そう)。

さて、最後に世界主要国のGDPを比較してみました。この結果、中国が世界第2位の経済大国だという事実にどのように思われるでしょうか(ちょっと誘導尋問かな?)。
ブラジルは過去にハイパーインフレを経験したことがあるので、こんな結果になったんだろう(しかし、ロシアでも90年代に国債大暴落とかあったよなあ)。

名目と実質の差がこのように大きいと、しかも、名目-実質の絶対額の差(533兆円)で、日本一国のGDP額と同じぐらいの差(ドイツと英国の実質GDPを合わせても足りないんですよ!!!があるのですから、私にはどのように評価すべきかさっぱりわかりません。

但し、中国の名誉?のために言っておくと、1991年から2012年までの実質GDPの年平均成長率は、それでも10.3%と高成長だった。一方、名目GDP成長率は16.3%だった。高成長だったことは、この数値が正しければ、正しい、ということだろう。

名実約6%の差ですが、改めて複利の原則って怖いですね。



コンマのところが兆円になります。
 
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5 件のコメント:

  1. 為替を固定して計算してるからでは無いでしょうか?貿易財を厚かった産業の勃興・衰退により為替の競争力が違うので、こういう計算になってしまうのではないかと。

    為替の影響を出来るだけ抜いて考えるのであれば購買力平価を使って計算すればいいと思います。多分、その場合中国は日本の数倍の規模になりそうですが。。

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    1. kyorosukekeさん、コメントありがとうございます。
      購買力平価ですね。確かにさらに日中の差が広がりそうですね。

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  2. 各国のストックを比較する場合は名目値、単一国のフローを見る場合は実質値が良いのではないでしょうか。
    例えば80年の中国では自動車の製造技術はほぼ無いに等しい状態でしたが、今ではそれなりの物を作れるようになり新興国に輸出できる程度にはなっています。生産財の量の変化より単価の変化が大きかった事が一因かと。
    そのため乱暴な言い方になりますが新興国における上記の差は技術のキャッチアップと言えるのではと思います。
    またRMBは実態より低く抑えられていると言われておりますので、USDベースでの実態として中国の名目値は更に上るはずです。

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    1. なるほど。おっしゃる通り、まともな産業が無かった80年代と今では雲泥の差ですね。
      確かに、実際経済活動する際には名目の価格で取引するので、名目GDPの方がより近いのかもしれませんね。
      日本の高度経済成長期も近い感じだったのかなあ。
      ありがとうございました。

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  3. この記事が書かれたのは2013年、中国の経済が最も高く評価されていた頃です。この後ゴーストタウンの問題や影の銀行等隠されていたものが次々と明らかになりました。現在、2015年6月、世界の経済学者、エコノミストで中国政府の発表する数値をそのまま信じている人はいないでしょう。最大の推計では、中国のGNPは日本程度、600兆円という事を行っている学者もいます。正直なところ具体的な数値は中国政府にも判っていないようです。日本企業は東南アジアへ工場を移していますが、中国企業自身すらその動きに乗りつつあります。個人的感想としては、これだけの大国(人口、軍事力、経済力)がこれだけの問題(経済、環境、政治、社会)を抱えて、しかもどれもが解決不可能に見えるという例は、人類史上空前の出来事の様に思えます。今後、中国で何が起きるのかはそれこそ紙のみぞ知るですが、投資対象として考えるには余りにもリスクが高すぎる事は確かでしょう。 ただ、中国の歴史を見れば、この様な王朝の栄枯盛衰は何度も起きている事であり、例え今回、共産党が倒れたとしても、又次の権力(軍閥?)が起こり、何事も無かった様に続いていくのではないでしょうか? もちろん、その過程で大きな社会混乱と人口減が起きて、現在の経済的繁栄(?)も消えてしまうかもしれませんが。

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