2013年5月28日火曜日

「冒険投資家ジム・ロジャーズのストリート・スマート」を読んで

冒険投資家ジム・ロジャーズのストリート・スマート
冒険投資家ジム・ロジャーズのストリート・スマート
著者:ジム・ロジャーズ
価格:1,680円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

週末に読んでいました。久しぶりに本屋さんに行くと、投資本関係の新刊が数冊出ていて、やっぱりこれを優先的に買って読みました。

一言、面白かったです

ジム・ロジャーズの著書を読むのは初めてです。過去2冊は立ち読み程度で結局買わなかった(古かった)。
本書は彼がこれまで何をやってきて、どのように感じたか・考えたかを書き下ろしています。自叙伝の様な感じかも。

個人的なハイライトはやはりウォール・ストリートで鳴らした70年代が一番面白く、投資に関する示唆が詰まっている。
 
ジョージ・ソロスと袂を分かった直接の理由に初めて触れたのではないか?(内容は本で確認してくださいね)
 
リーマンショック以降の最近の事象に関する彼の見解は、ブルームバーグやCNBC等に出演して繰り返し主張していることがそのまま書かれています(基本的に破壊と創造が資本主義のあるべき姿で、ダメな企業は潰せ、というもの。お金ばっかり印刷していたら通貨の価値が下がって、インフレを引き起こし、国をダメにするという筋書き。米国経済政策を批判しています)。
彼が今一番投資先として魅力的だと思っている国は北朝鮮とミャンマーだそうです。

投資家としての彼の成績は正直謎である。Forbes誌のビリオネアーに名を連ねているわけではありません。
彼のご推薦の中国も株式市場はさっぱりです。
ただし、ああやって好きなことをしても十分やっていける財力があるので、かなりの資産家であるだろうことは間違いなさそうだ。憧れますねえ、Financial Freedomを手に入れて、好きなことをやっても悠々自適…。これが彼の一番の魅力かもしれない。

ジム・ロジャーズの投資アプローチはクオンタム・ファンド時代と大きく変わりなく、グローバル・マクロ的な発想です。市場が歪んでいると思われるセクターに丸ごと投資するタイプ。アフリカのボツワナで上場している企業7社全部の株を買ったと言っています。

しかしながら、日本のサンリオやタカラ(こっちは売却しているかも)の様に、ピンポイントで買ったりしますので、変貌自在といった感じか。バフェットと違って、日本株や円も買っている辺り、日本人が彼を好きになる理由かな?

なおかつ、世界1周を2回もやっていて、現地を実際に知っている、というのが強み。正規の両替所とブラックマーケットと2回両替すれば、国の経済状態が分かりやすい、等は彼の様な投資家的目線を持った人が、ドサ周りをやらないと出てこない発想です。
今風に言えば、ウォール・ストリートのインディ・ジョーンズって感じか?(え?インディ・ジョーンズ自体が古い…。80年代に大いに流行った映画です)

本書には書かれていませんが、QE3前頃のインタビューで、これ以上金融緩和を行うと、アメリカ経済とドルは崩壊するので、絶対支持できない。といったことを言っていましたが、しかし、だからこそドルを買うのだ、なぜなら自分がこれだけ怖がっているのだから今が底値だろう、と言っていました(円も買っていましたが)。これぞ究極の逆張りですね。その後ドルは持ち直していますから、結局投機に勝ってしまいました。

ジム・ロジャーズ、ウォ―レン・バフェット、ピーター・リンチetc…。成功した投資家が共通して言うことがあります。

「投資対象のことをよく理解してから、投資すること」

です。

ほかにもジムとウォーレンの共通点といえば、
  1. 2人とも若いときは自分に自信がなかった(ジムは田舎者でチビだったのが劣等感だった。ウォーレンはディール・カーネギーの「話し方教室」に通っていた)。
  2. 好きなことをして成功している。
  3. 頭がいいから投資で成功するわけではない、と言っている(しかし、実際は2人とも若いころから相当な秀才であった。この意味ではピーターもMBAなんて投資と関係ないと言いながらもペンシルバニア大ウォートンスクールを出ているので同じかも)。
 
すごく当たりまえのことですが、ジムは(金は買いかとか、農産物は買いか、とかを)インタビュアーにあれこれしゃべったと、「最後は自分のホームワークをこなして、自分で決めて買うことだ。他人の意見なんかに従ってはだめで、勿論私の意見も鵜呑みにするな」とよく言っています(本書でも述べている)。

それでも耳を傾けてしまう辺りは、彼の人間性なのかなあ。



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2013年5月23日木曜日

北米「非在来型エネルギー」と投資戦略 その8 シェール革命、日本のLNGコストは本当に安くなるの???

当ブログは、出来るだけ少ない所持金で、出来るだけ多くの配当収入を得るためにアレコレ考えて投資している私の記録帳のようなものなのですが、どういうわけか、検索ランキングではMLPMaster Limited Partnership;マスターリミテッドパートナーシップ、で辿りつかれる方が多いようです。
人気記事でも、パイプライン会社に関する、北米「非在来型エネルギー」と投資戦略 その4 パイプライン会社 がダントツで1位となっています。MLPに投資するとどうなるのか、をわかる範囲で噛み砕いたつもりでした(自分が投資しようと思っていましたからね)。

ちょっと意外な結果です。個人的には、『配当増加方法』あたりが最も言いたかったことだったのですけど、最近のアベノミクス相場で配当よりキャピタルゲインの方に関心が高くなったのでしょうね。配当利回りもすっかり低下してしまったし…。

記事を書いた当初とは、シェール革命に関する取り上げられ方も、少しエスカレートしている様に思われます。昨日もワールド・ビジネス・サテライト(TV東京23時)を見ていると、アメリカのヘッジファンド運用者が日本の証券会社にMLPを売り込んでいる、というニュースが流れていました(今さらかよ。なんでファンドマネージャーが金融商品を売り込むのだろうか?)。

某有名エコノミストNさんも、これまでは、「アメリカ・日本経済沈没」と散々煽っておいたくせに、シェール革命で全てが変わった、などとおっしゃっています(要するに自説の過ちをシェールで取り繕っているだけだろ)。

個人的に、シェール革命(というより、非在来型エネルギーの存在)は、非常に大きなインパクトがあると思っていましたが、「全てを変える魔法の杖」とまでは思っていません。確かにアメリカの貿易収支にインパクトを与えてドル高バイアスをもたらす可能性を指摘したことはありますが。
2012/2/19Yahoo! Financeのビデオ

経済新聞社さんが盛んに「アメリカから」(経済新聞社さんはなぜかアメリカから買うことが重要らしい)シェールガスを買うことで、エネルギー調達コストが下げられる、とバラ色ストーリーを書いています。
個人的には下手にアメリカにペコペコしなくてもいいじゃない、と思いますけどねえ。

さて本題ですが、
シェールガスの輸入で日本のLNG調達額の全体が引き下がるのか?
この根拠に使われる分析記事がなぜか、日本政策投資銀行のレポートだそうだ。同レポートを読んでみたが、政投銀の試算はMAX15%削減と記載されており(3枚目の図の3-3)、その前提も、

  1. 201212月時点におけるアメリカのヘンリーハブ(米国天然ガスの価格指標)と日本の平均調達コストとの差額が2020年まで継続すること、つまり、この先ずっとアメリカがかなり割安であり続ける必要性がある、
  2. アメリカから輸入するLNGのコストが全て同じ単価であること、
  3. 2020年までに日本が他の国のLNG事業者と新規で契約したり、更新契約する価格もアメリカから輸入する価格に合わせること、
  4. 現在申請している日本が絡む全プロジェクトが容認される前提(この前第一号案件が許可を得ただけ)、が記載されている。
 したがって、政投銀の最も楽観的なシナリオが独り歩きしている。数字はよく理解しない人が取り扱うと独り歩きし易い、という典型例である。

同レポートでは、アメリカは2030年までに最大限3000万トンしか輸出する計画が無い、と言っていて、現在日本が申請しているのは、1470万トン(先日認可された220万トンを含んでいる)。
アメリカがざっくり半分も日本に輸出を許可するのかはわからない(アメリカの立場に立てば、誰に輸出しても、同じ価格で輸出することになりますから)。

したがって、更新時期を迎える他の国LNG輸出業者が簡単に「値引き」に応じるかは、どうでしょうね?アメリカが日本にジャンジャン輸出すると宣言しない限り、既存輸出国向けの交渉力の材料にはなりにくいと考えるべきでは? ただし日本企業もシェールに相応に投資しているので、アメリカへの輸入に対する交渉力は比較的ある方だと思う(それでもこびへつらっている様なシーンばかりマスコミは流すよな)。

そもそも、アメリカで天然ガスの価格が上昇すれば、まったく逆の結果にさえなりうる。天然ガス・LNGはいったん契約を締結すると20年程度は継続的に買わなければならないのが通例で、「逆ザヤ」となっても買わざるを得ない。ただし逆ザヤリスクはそれほど大きくないとは思いますけど…。しかし、アメリカの天然ガス価格が上昇して、在来のLNG価格とのスプレッドが小さくなるリスクは大いにある。

私が経済新聞社さんの編集委員か何かだったら、引き下げるような努力はすべきだと思うが、あまり夢を見過ぎない方がいい。なぜなら「アメリカの」シェールガス輸出量は無茶苦茶増えることは期待できないから。などと書いたかもしれない(ひょっとしてそういう記事を見落としている可能性がある)。

ちなみにこの政投銀のレポート自体はよくまとまっており、シェールガスに興味がある人は読むと役に立つだろう。これを読めば新聞報道に惑わされないだろう。私が3年程度かけて積み上げた知識を20分程度にまとめている(したがって、本質はもっと深いですけど)。

私は依然、シェールガス、シェールオイルをカナダから輸入する、という代替案を支持しており、一度こちらに北米「非在来型エネルギー」と投資戦略 その7 日本が採るべきエネルギー戦略の雑感 記載しています 

カナダをお勧めする理由としてこれ以外に、

  1. カナダはブリティッシュコロンビア州が出港地になるので輸送日数が短い
  2. パナマ運河を通らないので、メキシコ湾のLNG基地で使用するタンカーより、さらにドデカイタンカーで運べて、つまり輸送効率がいい(輸送賃が安くなる)、
  3. カナダのガス価格の方がアメリカより、現時点では割安(安くしないとアメリカ人はカナダから天然ガスを買う理由が無いから)、
ガス価格+輸送賃の双方がアメリカより現時点では割安だと思います。

但し、最終投資意思決定は今後行われるプロジェクトが多いため、時間軸ではアメリカの方が早い可能性がある。しかし、アメリカにだけペコペコする必要性もないし、カナダは日本が買うと言えば、アメリカの様にもったいぶってなく、喜んで売ってくれるだろう。

ロシアもサハリン沖で最近ありましたね。個人的にはLNGにする必要ないと思いますが…。

もうひとつ、エネルギーコストを引き下げる方法は、日本の電力会社の天然ガスタービン発電施設を新型に更新することがある。
簡単に言えば、旧式車をハイブリッドカーに乗り換えて、燃費を改善する様なものだろう。同じ天然ガスや石炭を使っても、より多くのエネルギーに転換できる技術に発電施設をスイッチしていこうという発想である。

コンバインドサイクル発電などとも言われており、例えば、発電機で発電した余熱を使ってお湯を沸かして、お湯に使うガス代を節約する、等がある。六本木ヒルズ等に自前の発電施設がある(したがって、自粛しなくてよかったそうだ)。
幸い、アベノミクスの中核でもある、産業力競争力会議において、石炭発電、天然ガス発電の高効率化が議題となっており、脱原子力発電におけるエネルギー効率に向けた議論がなされている。資源エネルギー庁も前向きな模様である。これをさらに加速化するように支援していってほしいです。




産業力競争会議(3/29)における経済産業省の資料から

要約すると、日本のLNGコストが安くなるか否かは
まず、前提として今後原子力発電をどういう前提で考えるのか を決めて

プラス面として
原子力に依存できない部分を火力に置き換える、そのうちいくら天然ガスで賄うのか
LNGの調達先の戦略的分散(全体コストを引き下げるべく、ロシア、カナダを含めて総合的に)
火力発電の熱効率の改善スピードを上げる(少ないLNGで多くの発電)

マイナス面として
円安、
インフレ(一応世界的には天然ガスは原油価格連動が原則です)

が変数になると思いました。15%マイナスは現時点での前提条件を点検するとRosyだと思います。
しかし、原子力発電をどうするかは、国民的感情が入るので、難しいですね。

(LNGと関係ありませんが、週刊ダイヤモンドの小沢一郎氏へのインタビューが面白かった)

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2013年5月19日日曜日

格差について

マスコミはある程度、不満の吐け口代行業のような側面を持ち合わせている、という前提に立てば、

「アベノミクスで株価が上昇しても、我々庶民にはその実感が無い」

というニュースを流して、均衡というか、バランス感覚をもった存在を示すことは意味があるように思います。

ただ、資本主義市場において格差社会はある程度当然の帰結であり、今も昔も格差はつきものであった点も知る必要はあると思います。
その格差が、生まれ持った差別的な側面(中世ぐらいまでは世界各地で身分制度が正当化されていた)なのか、制度は平等になっても個人の努力の側面なのか、等は変遷していると思います。

あまりにもマクロ過ぎましたが、身体や家庭環境で皆と同じ土俵に上がれないような人を除き、124時間は全員に平等にあり、それをどのように活用するかで、経済的側面以外でも格差は生じるのではないでしょうか?

勉強に時間をより割いた人は、試験の成績がいい。
化粧やファッションにより時間を割いた人は、その道の知識が他人より多い(私にはネイルアートなんてさっぱりわかりません)。
野球やサッカーにより時間を割いた人は、そういった競技のスキルが高い。
友達作りにより時間を割いた人は、他人より友達が多い。

お金儲けにより時間を割いた人は、お金が貯まる?
例えば、株式投資に時間を割いた人は、株式投資のスキルが高い。

もちろん、時間の割きかた(正しい努力の方法や個人の集中力、吸収力には差がある)によりさらに格差が出てくるかもしれない。例えば、いくら毎日サッカー漬けの生活を送ってもワールドカップ選手になれるとは限らない。サラリーマンがそこそこ努力しても大会社の社長にはなれない。

投資に限って言えば、「複利の法則」という誰にでも平等な理論があります。
例えば、今年に入ってTOPIX40%程度上昇しています。
年初の所持金が100万円の人が全額TOPIX連動ETFにでも投資していた場合、140万円になっています。
同じく、所持金が1000万円の人の場合は同じ商品に投資していたら、1400万円になります。
同じく、所持金が1億円の人の場合は、同じ商品に投資していたら、14000万円になります。

同じリターンを得ても、40万円、400万円、4000万円と得た利益の絶対額に大きな差がつきます。
40万円の利益の人と、4000万円の利益の人では、差が大きいのは仕方ない。消費行動に差が出ても仕方ない。

「庶民」がタンス預金しか持たなかった場合、Nothingになる。しかし、タンス預金は過去20年近くのデフレ経済下(金融危機時代を含む)では最も安全かつ、割のいい所持金の保管法だった。
その間株をやっていた人は(特にTOPIXのインデックス)ボロボロになっていた。

そのように考えると、ある程度フェアな結果だと言ってもいいのではないか。但し、日本においては、資本主義である以上、投下資本のリターンが長期では生まれ続けると信ずるに値する政策や経営管理(ガバナンスを含む)が今後もっと改善して欲しいと思います。そのうちの前者がアベノミクスでしょう。
後者は今、SONYがアクティビストファンドからコロンビアピクチャー株を一部IPOさせろ、と言われていますね。こういった株主価値を上げそうな提案に如何に真摯に取り組むか、今、試されていると思います。

やや話がそれましたが、24時間をどのように活用するかで、なにがしか他人と差がつくのは仕方ない、と思います。株式投資における資産効果の恩恵は、One of themだと思います。カネに直結するので、話題になりやすい。


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2013年5月15日水曜日

日本版ISAをどうするのか?

結構、迷っていたのですが、第一候補が決まりそうです。
楽天証券の日本版ISANISA口座」。
ポイントは当然外国株の取り扱い可(米国株、中国株、アセアン株)。
実際にどのような税金処理がなされるのかまではHPで確認できなかったので、資料を取り寄せてみることにした(US税を10%源泉されて、確定申告で取り返すのかな?)。

また、肝心の配当金を一般口座のドルと混合して、次の銘柄が買えるのかとか、一般口座とISA口座相互間の資金移動など(あまり正確に勉強していないので)。

ただし、外国株を本格的に取り扱っていて、外国株のISAを受け入れている証券会社は楽天が現時点では最大手になるのかな?

以前、楽天証券に外国株の取り扱い可能性を問い合わせていたので、こういった人が多かったのか、希望がかないました。

売る予定もなく、ただ増配を繰り返す(可能性が非常に高い)連続増配株を毎年100万円5年分で2回転させると結構な税務メリットを得られるのではないかと思います(全く当てにならない為替が一定の前提ですけど…)。

出来るだけ配当利回りは高く、成長率は低くてもいいので、連続増配株がいいような感じがしています。
このニュースを聞くまでは、NTT(又はNTTドコモ)、J-REIT1銘柄(アドレジを想定)、武田薬品又はエーザイで100万円前後かな、と思っていましたが(昨年暮れから今年初めだとこれで平均利回りが5%前後はキープできたと思う。そしてあわよくば増配にありつける)、異次元の株価上昇により、100万円じゃ足りなくなりそうなので(かつ利回りが急低下)困っていたところ、この知らせで一安心。

もし楽天でAnnaly Capital等のUS m-REITの取り扱いがあれば…、とは思ったものの(100万円分全額突っ込んでもいいと思う)、取り扱いがなさそうなので、KMRKinder Morganの現株配当タイプ)、タバコ銘柄、ベライゾン又はAT&Tの通信株、医薬品株(ファイザー)辺りをリストアップしてみることにしました。

10年間たっぷり配当を吸い取れるよう組み合わせていく予定です。





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2013年5月12日日曜日

「アベノミクスの真実」(本田悦郎内閣官房参与著)を読んで

アベノミクスの真実
アベノミクスの真実
著者:本田悦朗
価格:1,470円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

「アベノミクスの真実」静岡県立大学教授・内閣官房参与、本田悦郎著、幻冬舎
 副題は「安部総理公認」と書いてあったので、思わず買って一気読み。
 
なぜ買ったか?

著者が「内閣官房参与」という地位にあり、安部政権の中枢にいる方であること
 
これに尽きる。
 
安部総理が何を考えているのかが分かる(注:副題は「安部総理公認」と謳ってあるが、著者は「あくまで私の目で見た、私の理解しているアベノミクスです。誤解などの全責任は私にあります。」
と個人で出版している点を23回記載されています。

(この辺が出版社のアレですね。日本経済出版社とか東洋経済とかだとここまで書かないだろう)

内閣官房参与と言えば、Yale大学名誉教授の浜田宏一氏の「アメリカは日本経済の復活を知っている」(講談社)の浜田氏も同じ肩書き。こちらは黒田日銀総裁誕生前のもの。こちらも読みました。

デメリットとしては、アベノミクスについてFavoriteなことしか書いていないのではないか、という点。報知新聞に巨人軍の悪口は書いていないのと同じ。

この本の内容は、アベノミクスを平易に書いてあることでしょう。一般読者向けにアベノミクスをわかりやすく書いている。
 そして何より、安部総理のリフレ経済への理解度を知るに良いと思います(どこまで本気なのか)。

一般的なアベノミクス批判への回答も網羅されているので、新聞やアンチ派のさまざまな批判で疑心暗鬼になっている人にもお勧め(ただし、反論の論理は入口程度にとどめてある)。


私がこの本で得た知識

安部総理は若いころから経済に対する造詣が深かったこと(安倍さんへの印象は拉致問題ぐらいしかなかったので)。

ハイパーインフレは、戦争の空襲や破壊で生産供給能力が大きく落ち込んだ時にしか起こりえないこと(よく考えれば、需要はあるのに、生産能力がないからハイパーインフレになる)。

政治経済に対する考え方は各国の歴史や文化に根差しているので、簡単に変えられないこと。

需要を上げて、市場全体を成長路線に持っていかないと、改革は進めづらいこと。

などです。

疑問点は

著者は長年のソ連東欧生活で、各国には歴史・文化などが深く根ざしているので、経済政策も外国が干渉しても変えるのが無理、と言っている点。日本はどちらかと言えば、変革よりも現状維持・問題先送り体質の国民性であり、緩やかなインフレが実現しても、変革への意識が継続するのだろうか? (「いつか来た道」、「のど元過ぎれば熱さ忘れる」)
 
市場全体が成長すれば、古いものに固執しなくても、安心して新しいものを受け入れやすい素地ができる、というのは、新しいおもちゃを買うと、古いおもちゃを忘れてしまう子供の様に見えますが、案外そんなものかもしれませんし、かつての郵政問題の様に、西川元三井住友銀行頭取が官僚と一部の国会議員にはめられて追い出されてしまうような、「保守反動」事件もありうるような気がしています。

(郵政グループはまた民間元経営者が社長に就くそうですが、三井住友の西川さん、伊藤忠の丹羽さんの様に、最後はポストを妬む官僚とスキャンダル好きのマスコミの餌食にならないか、心配です。せっかく「お国」に尽くそうとしているのに)

 
最後に、アベノミクスは緒についたばかりで時期尚早かもしれませんが、私は安部総理を完全に誤解しておりました。安倍さんの第一次政権時代の印象は、お坊ちゃん内閣で、「小遣い帳」のような政治団体の収支記録もろくにつけられない「会計バカ」ばかりを大臣に据え、郵政造反議員の復党を認めてしまう暴挙に出て、最後は政権を放り投げてしまって、二度と表舞台復帰はないだろう、と思っていました。

しかしながら、インフレターゲット宣言を行い、とりあえず、日銀をある程度コントロールすることに成功したので、この功績は大きいと思います。彼の決意を再評価しなければなりません。
 自分の見る目のなさを恥じる思いです(副総理に対しては以前と変わらない思い)。

インフレ率2%が継続するのかはまだわかりません(住宅家賃が「持続的に」増えていく、というのがなかなか腹落ちしない。これに腹落ちできれば、どう考えても不動産投資にメリットがある)。

第三の矢がやや失速気味なので、何とか踏ん張ってほしいものです。

アベノミクスを批判するマスコミや学者・エコノミストは澤山いますが、解決策や対案を出す人は皆無です(評論するだけでいい人だから当然かもしれませんが)。しかし、やってみる価値のある政策であること、(妨害勢力等が跋扈しなければ)成功確率も比較的高いのではないかと思います。
 
デフレでジリ貧になるより、マイルドなインフレでモノの価値が上がった方がモノづくり立国である日本に都合がいいのは明らかなんですけどね。

モノづくりを称賛するくせに、そのモノの価値が下がる円高デフレがいい、とかいうやつは論理矛盾を起こしているとは思いませんかね

ちなみに株式投資はアベノミクスの成否に関係なく、持続的に増配が期待できる安定成長企業への投資方針に変化はございません。アベノミクスだから日本株ってようなことはない(というよりやや割高感を持っている) 
 


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2013年5月4日土曜日

4月の投資状況



 


4月のS&P500はプラスで終わっています。今月の集計は雇用統計終了後のものです(日本時間深夜2時ごろの暫定値ですけど)。

雇用統計はなんとか16万人プラスとこれまでのペースに回復しましたが、それ以外の経済指標が落ち込んでいるのは明らかなような気がします。FRBが金融緩和の継続にためらわない程度にゆっくり回復している感じで、やっぱりソフトパッチ感がぬぐえません。しかし、これが金融相場を引き延ばしていますね。

ちなみに米国債10年物金利は去年とほぼ同水準まで下がっています。

EUが予想通り利下げを行いましたが、1回程度の利下げで十分なのかを見極めるのでしょうか?個人的には第4四半期か来年の1月ぐらいからボチボチ前年比がプラスに転換するかもしれない、と期待を抱かせますが、どうでしょう?米企業のCEOの話を聞いていると英国とロシア・東ヨーロッパはそんなに悪くなく、スペイン、ギリシャ、イタリアが悪く、フランス、ドイツは微減という印象ですね。

日本の方は、黒田バズーカのおかげで同じ数だけ販売しても、軒並み2ケタ増益が期待されるような感じでしょうか。その黒田バズーカは本当にざっくりですけど、決算を読む限り、米国企業の連結売上高を1%程下げる威力があるようです。もちろん企業によって影響度はマチマチですけど、各CEOCFOは円安を理由に売上高の見通しを慎重においています(IBMP&G、フィリップモリス、アボット、JNJ等)。

不気味なのは相変わらず中国ですね。経営者が未熟なのか雇用を維持するための国の圧力なのか、需要がないのに、生産調整がうまくいっていないような記事をよく見かけます。コモディティの暴落の引き金を引かなきゃいいのですけど。一説ではGDPはゼロ成長だとかも言われています。

4月の売買

売り:プレミア投資法人(残りすべて)、ピジョン

買い:NTT、プラネット

プレミア投資法人は結局残り単位も売却。投資期間4年弱で約3倍のリターンでした。戦闘力の弱いREITはこの辺が潮時かなと思いました。アドバンスレジデンスとユナイテッドアーバンは引き続き保有方針。REIT2銘柄になってしまった。

ピジョンは、株価の上昇が激しく、今この時点で8,000円は高すぎると判断し、売却。投資期間3年程度で3倍のリターン。その売却代金で、倍近い配当が得られる株数が確保できるだろうと判断。つまり、より配当利回りが良い銘柄に変えようと。業績も投資ストーリーに沿った形で進んでいるため、その辺は安心できるのですが、なにぶん適正価格の上限を超えているのではないかと思った。

プレミア投資法人(NTT都市開発がスポンサー)を売却し、NTTを買っているので、意味不明な印象を持たれる可能性がありますが、プレミアとNTTの配当利回りが同じかNTTの方が少し上だったので、中長期的な配当(増配)の安定性から考えて、NTTに切り替え。

通信会社のキャッシュフローと不動産賃貸業のキャッシュフローとどちらがより安定性が高いのか、ということですね。前者の方がより小口分散されていて、なおかつ不況抵抗力が強い。また、デフレ経済にあっても、スマホとかLTEとか言う理由で、通信代が値上がっても消費者の抵抗は少ない。あとはNTTデータのグローバルクラウド戦略に少し期待。

プラネットは子供名義で3年近く保有していて、自分も3年前には一時期保有していたことのある銘柄で、Economic MoatWideなんじゃないかと思います。創業経緯もあって主要顧客が軒並み大株主である点と、流動性の点は留意しなければいけませんが、顧客基盤がしっかりしていて、ネットワーク効果が大きいので、長期で配当を狙う分には適した銘柄だと思います。

予想受取配当金増加率



7年程度で倍のペースを考えていましたが、2年半で達成しました。円安が大きく効いています。これを利用して、あまり長期保有に自信のなかったREITの個別銘柄をを売却することができました。

今月の増配発表:4月は例年増配発表が多い。

Cisco Systems+21.5%これは3月の終わりごろに発表されていますが、先月見落としていたらしい。増配ペースが思ったよりも早い。

沖縄セルラー電話+2円増配(+2.6%)。来期あたりからもう少し増配ペースが上がるんじゃないかと思います。

Procter & Gamble+7%増配。57年連続増配中。但し、そのペースはやや落ちてきている。欧米の消費回復が遅いのが要因だが、ユニリーバ辺りに少し苦戦している。一方、株価は今年に入り、跳ねあがった。

Chevron:+11.1%増配。27年連続増配。毎年3兆円以上の設備投資を実施しても、しっかり増配するところはさすが。ダウ平均採用銘柄で、経営力はさすがです。これも天然ガス関連銘柄(但しLNG)と言ってよいと思う。もう少し安くならないかな?

Kinder Morgan Inc.+2.7%。毎4半期ごと少しずつ増配しますね。天然ガスの価格が上がると、石炭の競争力が上がるので、米国で火力発電に石炭を使うか天然ガスを使うのかは、やや微妙になってきた(しかし、旧式の石炭火力が新式のガスタービン火力にスイッチする流れは環境問題もあるので継続すると期待はしている)。

Johnson & Johnson+8%増配。52年連続増配だったか?やっと増配率が回復傾向を見せ始めた。医療機器部門の単価引き下げ圧力が心残り。医薬品事業と消費者向け事業は好調。株価的にもやっと報われ始めた。平均買い付け単価は$60を切っています。

JT 日本たばこ産業+32% またまた増配。年92円まで引き上げ。メビウス(旧マイルドセブン)を値上げするのかな?値上げするとインパクト大きいと思う。もうしばらく+5%~+8%のマイルドな増配が期待できそう。早く赤字の医薬品と旧加ト吉事業を処分して欲しい。

I.B.M.+12% 17年かな、連続は。2ケタ増配が確実だと思われる銘柄。第2四半期の決算で不安な点を一掃してくれると思います。


日銀、米決算、ECB利下げ、米雇用統計、ときました。よい材料は何が残っているのでしょうか?FRBが緩和策を継続するという予想だけ? よくない材料は現状、あまり織り込まれていないようですが、結構出ていますね。
 
 

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