2013年12月27日金曜日

12月の投資状況【速報値】

年末は早々に実家に帰省することにしましたので、12月分はさっさと仮締めしておきたいと思います。

株の方は正直11月とあまり変わらないと思うのですが、円安と配当で押し上げられているようです。
 
米国株は今年、散々な出来で、S&P500の上昇率の半分以下という感じです。しかし、アベノミクス円安という追い風が吹いたので、まあまあの結果になりました。
 
このようなUnderperformは今年限りにしておいてほしいですねえ。
高配当株は金利上昇と共に売られるというのは理解できますが、それ以外にも個別銘柄の被弾が多く、見る目がないのか、我慢の時期か、来年以降捲土重来を期するより他ありません。
 
それでも円換算すれば50%のリターンなので、よしとすべきです。
 
12月の売買
売り買いともありません。
 
12月の配当状況
 

12月の増配
Enbridge 11%の増配発表。予定通りですね。当社は配当性向70%がメドです。投資家の期待が増配なので外せませんね。
 
予想受取配当は、年初来+36%、Yield On Costはついに7%台に達してしまいました。円安がどこまでも続くことの影響が大きい。出来すぎです。
 

主な低パフォーマンス銘柄(外国株)の推定原因
 
最終的な円ベースのパフォーマンスにはニュートラルだったんですが、米国のグローバル企業のうち、日本で稼いでいる企業の業績に円安は大きく影響していたと思います。

フィリップモリス
 
日本のドル高円安、アジア新興国におけるたばこ税引き上げによる反動減。EU諸国の失業率の高さ等。日本は同社の営業利益の8%~10%ぐらいあると言われています。
2014年のガイダンスも期待以下だった模様。しかし、悲観はすでに織り込まれている。あとは、アッと驚くポジティブサプライズがあれば・・・。

IBM
 
ハードウエアの販売が急落。特に中国等の新興国。アメリカの議員が中国の通信機器メーカーである華為(Huawei)を人民解放軍のスパイ呼ばわりしたことに対し、中国政府のアメリカに対する「倍返し」ではないか、という陰謀説がある(さらに米国のドイツ、日本にスパイ疑惑が重なる)。
 
アマゾンにCIAのシステム入札で負けるなどクラウドへの対応に十分な技術がないのではという疑惑(その後内務省ではIBMが落札できたが、CIAの方がIT企業にとってインパクトは大きい)。
 
売上高の10%程度を占める日本の円安ははっきり影響が大きいと思う。但し、円ベースの日本市場は好調に推移しているが、日本IBMの売上高伸び率よりも円安の方がはるかに大きい。

フォード
 
リーマンショック後のフォード再生の最大功労者であるアラン・ムラ―リCEOがマイクロソフトのCEOに転出するとの噂があったことが株安要因に(時期的に、マイクロソフトのCEO就任は難しくなった)。ムラ―リさんは2014年いっぱいの退任は既定路線。
米国車で唯一公的資金に頼らず、会社を再生させた名CEOとして歴史に名を残すでしょう。
 
その後、12月の半ばに2014年度の業績ガイダンスが市場予想よりも弱気だったので、株価は10%以上暴落してしまった。
 
2014年末までにベルギー・ゲンク工場を閉鎖し、EUのリストラが完了するので、2015年以降の赤字要因はなくなります。これがアップサイド要因。株価には織り込まれていないはず。
 
優秀なCEOの退任という要因があるものの、株価は割安水準に逆戻りしたと信じています。
 
次期CEOの最大候補者はマーク・フィールズ氏です。そうです、マツダの元社長だったあの青年です。現在COOだから当然でしょう。最近はアナリスト向けのテレカンなどでも受け答えして、徐々に投資家向けに慣らしています。

Kinder Morgan
 
ストラクチャー上、借入金等が多いため、金利上昇局面では、株価はプレッシャーを受けやすい。
生産量が思ったより増えないため、長期ガイダンスを下方修正(年平均配当増加率は10%~12%と示していたが、9%~10%に引き下げた)。
 
加えて、Hedge Eyeという独立系アナリストから、メンテナンスコストを削って配当をねん出しているというレポートが重なり、売り浴びせられる。
 
当社の企業構造が複雑である点は変わらず、株価の重しとなっている(株式会社の下にMLPがぶら下がっている。PERでは異常値の様な高い数値になる等)。
 
しかし、毎年9~10%の増配が見込めるKMIの配当利回りが4.6%程度であるということは魅力的な価格である点は変わりがない。シェールガスだけではなく石油・石炭・LNGおよびメキシコへのガスの輸出などポテンシャルは十分高い。
 
CEOであり創業者でもあるリチャード・キンダーさんは、役員報酬はたったの1ドル(年間)で、主要収入源は自分が保有するKMI株からの配当収入であるという折り紙つきのオーナー。情報開示の透明性も十分だと思います。

米銀で、金融危機直後に、申し訳程度に1年だけ、報酬1ドルとしたCEOはいましたが、リッチーさんは万年1ドル給料です。

マクドナルド
 
アメリカではバーガーキングやウエンディーズ等が復活している。EUは不景気、日本は危機的状況。中国は鳥肉騒動で外食産業がダメ。良い材料は今のところない。
 
しかし、全て株価に織り込まれているはずと思っています。景気回復と共に外食機会の増加による増収を見込むよりほかない。
 
正直、メニューやサービスのマンネリ化を打破して欲しい。

シスコ
 
上述した中国の「倍返し」が要因なのか、長期業績目標を下方修正してしまった。決算の度に株価が乱高下する。新興国での受注が減っている。
 
ウォ-ルストリートでは、チェンバースCEOの交代を求める声が、一段と大きくなった。彼も、シスコの快進撃を支えたが、CEO20年ぐらいあるはずで、マイクロソフトの株が伸びややんでいた状況に似ている。しかも中国を逆恨みする様な発言がひんしゅくを買っている。
 
さらに、通信機器のスイッチをソフトウエア制御で出来るようになると、当社の製品は売れなくなるという懸念が充満しており、株価の重しになっている。ただし、当社側はその対策を打っている。
したがって、株価は割安だと思う。

AT&T
 
電話やパイプラインのような公益的な銘柄は、今年は散々。
 
ソフトバンクがスプリントを通じてドイツテレコムUSを買収するカモ、という報道があるが、AT&TがドイツテレコムUSの買収検討をした際に(最終的に独禁法的にM&Aはダメになった)、スプリントとドイツテレコムUSの合併では、無線技術が違うので、シナジーはあまり見込めない、という話であったが…。孫さん、どうするのかな?
 
CNBCでもソフトバンクの快進撃は話題になっていて、関連記事をよく見かけます。
 
現時点では自社株買いが唯一の成長要因だが、ボーダフォンやテレフォニカ買収などEUの同業者買収のうわさも多い。
 
電話会社もついに国境を超えた再編の時代に入ったのかもしれませんね。

 
Enbridge 
 
これもパイプライン会社なので、株価はほとんど上昇せず。金利と株価が逆相関する。
2010年の原油流出事故の補償費等が予想以上となったため、資金繰りがややタイトになってしまった。
 
しかし、米国ノースダコタのバッケンシェールのシェールオイルをシカゴに運ぶパイプライン計画がGoサインとなり、明るい材料もある。
 
また、カナダのオイルサンドを運ぶパイプラインもアメリカ企業とうまく提携して、建設許可を取り付けたりしているので、Key Stone Exellの許認可に手間取っているTransCanada社よりも優位に事業を進めていると感じます。
 
アメリカのシェールオイルが増産されると、カナダのオイルサンドが打撃を受けるのか、という点は、それほど気にする必要はないだろう。
 
シェールオイルは軽質、オイルサンドは重質で、同じ油でも用途が違うので、バッティングしない。
オイルサンド重質油はテキサスの湾岸に位置する世界最大の石油コンビナート群で渇望されている(なお、オイルサンドは正確には原油ではなく合成油と表示されている)。


以上が今年低パフォーマンスだった持ち株たちですが、来年は頑張ってくれるでしょう。株価が伸びなくとも、配当が伸びれば、合格点です。


以上、本年もご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


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2013年12月23日月曜日

日経新聞とウォールストリートジャーナル



後者については、5年前Web購読を開始しました。当時は英語版しかありませんでした。

その後、株式投資を開始し、同紙に自分の持ち株の記事があれば、必ず読むようにしていました。

それからスマートフォンになり、WSJも日本語版が登場し、英語で購読申込みをしていた会員でも日本語版が同じフィーで読めるようになりました。

今では、スマートフォンのアプリで、移動中の電車の中やちょっとした空き時間に気になる記事を確実に読んでいます、今は日本語で…。

 
比較すれば、日経新聞よりずっと読み応えがあります。論説の批評が妥当か否かは別として、記事が奥深いものが多い。

日経新聞だと、通り一辺倒のことを「さらっ」と書いているだけの編集記事が見られ、その結論に至る根拠や経緯にかんする説明は、正直内容が薄い。これは紙面や字数の制約を受けている可能性がある。

時折数回シリーズに分けて、取材したりして特集を組んでいることがあるが、あれで兆度ぐらいかもしれない。

 

WSJの場合、当たり前かもしれないが、記事がより客観的に書かれている。たとえば、尖閣諸島に関する飛行区域問題については、かなり早くから韓国にも同様に飛行区域の制約に関して記事にしており、アメリカが日韓両国と中国にどのように対応すべきか、対応したのか、などがしっかりと冷静に書かれていた。

 

日経の場合(日経以外の場合ももっとひどい可能性があるが)、中国との2国間問題を大きくクローズアップさせることに腐心しているようであり、大きく東アジア全体の枠組み、という視点はある程度議論が盛り上がって、書くネタがマンネリ化したころからやっと出てきている、という感じである。


ぶっちゃけ言えば、どこで読んでも他社と同じような内容の記事が紙面の大半を占めており、「日経ならでは」の記事が少なく、記載があっても結論が中庸的なものが多い。べた記事と呼ばれる何気ない数行の記事に「キラリ」と光る価値のある情報が掲載される一方、見出しが大きくなればなるほど、別の媒体で情報がすでに消化されてしまっているものが多く、非常に非効率な状態である。

M&Aのスクープも、スクープありきの編集方針)

ロイターのような通信社でも、論説記事があり、それなりに内容があるだけに、ロイターとの費用対効果を考えると、どう考えても日経新聞の価格は高いと思う。2014年は真剣に購読継続を見直すことにしている。

そもそも規制なのか何か知らないが、インターネット全盛時代に、紙面を大きく割いて、株価や投資信託の基準価格を新聞に掲載することには正直、まったく意味がないはずである。

どうしても掲載しなければならないのなら、そのページだけをHPに掲載して、見たい人は見させるようにして、その紙面が少なくなった分、価格を下げるべきである。新聞配達の効率はすくなくとも上がるだろう。

新聞代はインフレもデフレも消費税増税も関係ないそうである(今盛んに軽減税率の話題を盛り上げているのは、自分の業界だけ8%10%の増税の例外として取り扱ってほしいからだそうだ)。

政治・社会面では他の日刊紙に遅れをとり、経済でもロイターやブルームバーグに食われつつある、という中途半端で独自性が見出しにくい、論調は万年同じ、そんな印象である。

 

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2013年12月16日月曜日

キャッシュフロー計算書(CF)を活用しよう! ケーススタディ エマソン・エレクトリック(EMR)


財務分析の専門家さんは、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の分析方法について熱心に指導、解説されることが多いと思います。

そういった解説本にも書かれていることですが、決算と言うのはある種見積もりの部分があり、その見積もり方法は企業の経営者に決定権が一義的にはあると思います(もっとも、いったん決定した会計処理方法を変更するのは、かなりハードルが高い。例:減価償却費の償却方法他)。


一方、CF計算書はいくら現預金が増減したのかを示すための表であり、誤魔化す余地は小さいです(BSPLを組み合わせたものが原則)。

また、連続増配米国企業の決算を読んだり、聞いたりしていますと、「今期の営業CFはいくらで、前年同期比よりXX増えた」とか、「フリー・キャッシュフローの過去3年間の累計はXXで、配当にいくら、自社株買いにいくら、M&Aにいくら使った」など言及することも多い。配当収入をアテにする投資家ならCFについて、注目することは重要だと思います。

さらに、粉飾(同然の)決算や業績不振企業でも、BSPLを見るより、CF計算書を眺める方が、ヒントが多いことも過去の経営破たん企業の財務分析で、その有用性が立証されたりしています(経営破たん=現金の枯渇ですから)。

 
PLBSよりも分析も比較的容易なので、ご活用をお勧めします。

 
CF計算書は営業CF、投資CF、財務CFの順で記載されます。

営業CFは簡単にいえば、日常的な営業・業務により発生したPLBS科目の増減を基に作成されたCFと言えると思います。

営業CFは基本的に、法人税支払い後のCFを計算していますので、会社が日常業務稼いだ税引き後キャッシュと言えると思います。

したがって、営業CFが増え続ける企業が、CFを伴った成長を実現していると考えられます。

現在、IBMは営業CFの成長が止まっているため、アナリストからダメ出しされています。

 
次に投資CFは企業が投融資に使用したCFの増減を示します。一般的に設備投資やM&Aによる資金はこの範疇に入ります。当然更新投資もこの中に入ってしまいます(持ち合い株の購入もここに入るはず)。

中には、IR用にM&Aによる投資を除外して、投資CFをアピールする企業もあります。これは、Underlyingな設備投資金額と、戦略的に支出した金額を区別して投資家に理解を求める場合に用いることが多く、英米系の企業でよく使う手です。


営業CFから投資CFを引いたものをフリー・キャッシュフロー(FCFと呼びます。

これはIRの観点に立つと、企業が債権者・投資家に償還・還元できる資金がいくらなのかを明示するのに役立ちます。ここでは既に設備投資等をした後の資金ですからね。事業の競争力は維持されているはずです。それでも余ったお金をどう使うのか、ということです。

したがって、M&Aに使った資金を投資CFと別枠で示したくなるということです。

 
CF計算書を活用したIR事例
 

 
上記は、Emerson Electric(EMR)という米国の電機会社のIR資料からです。同社は電源、空調機器、プロセスマネジメントなどを行う会社で、日本でいえばキーエンスと富士電機を足して割ったような事業の会社だと思います(多分)。

業績は非常に優秀で、S&P Dividend Aristocrat に入る企業です。電機メーカーで連続増配株なので、その経営の優秀ぶりは折り紙つきといってよいでしょう。

個人的に買おうと思っていましたが、結局買えなかった企業でもあります。


上のスライドは運転資金をマネジメントしながら、営業CFを売上高の12-15%の水準に持って行き、売上高の10~14%FCFを維持する。同時に、FCF÷当期純利益は確実に1を超える(つまりFCF>当期純利益)水準を目指す、というのを長期的な目標水準としたい、と言っています。

下のスライドでは、2012~2015年の営業CF110億ドル(1.2兆円程度)を目指し、その使い道のうち、36%は配当(約40億ドル)、22%が自社株買い(20~30億ドル)、買収も22%20~30億ドル)、設備投資は20%で約20億ドルという風に計画しています。

株主には概ね、営業CF58%程度を還元すると言っていますね(純利益からではなく、営業CFからと言っていますね)。


これだけCFに対して、目標を示していると、現預金がバランスシートに貯まっていることはありえないように感じます。それと、設備投資をそんなにやらない点も注目ですね(多分そんなに必要ないビジネスなのだろう)。投資しなくても、キャッシュフローが出る電機会社、いいですねえ。

借入金は少ないながらも、ありますが、返済には全く触れていません(残高を維持するということでしょう)。


多くの日本企業は営業利益をいくら目標とするか、設備投資はドカーンとやりますよ、ということは示しますが、キャッシュの使い道をここまで深く示すことはないと思います(一部の先進的な企業を除く)。

最も、エマソンも買収案件には実際には柔軟な対応をするとは思いますが…。

 
この結果、投資家が最も注目する1株当たり当期利益(EPS)は以下の様な水準を目指すと言っています。

 
売上高は+3~5%の成長、営業利益率は19%、買収と自社株買い、それが出来れば7-9%の成長が可能である、FCFは売上高の10~14%、設備投資は売上高の3%程度、とほとんど自らの財務規律をガラス張りにしていますね(但し、当社は現在の低成長な外部環境を脱すれば、EPS10~13%の成長を目指したい、と別のスライドでは説明していますので、念のため。その場合、売上高が5~7%増が基準になるようです)。
 

配当成長投資の観点から見れば、売上高が年4%程度成長してくれれば、配当も8%程度増配が見込めそうな感じ、という風に見ることが出来ると思います。

(結局は今のS&P500企業の多くは大なり小なりこんな感じの企業が多いのです)
一般的に米企業は、レンジで中期の目標を掲げるケースが多いです。また、いつまでに達成するという期限を設定することもあまりありません。持続的に一定の成長率で成長していくことを目標に示すという感じです。

この辺、「アメリ感」ですね。 数値目標を掲げると、コミットメントとなって大きく拘束されてしまいますので、それを経営者は嫌ったりします。達成できないと、CEO自ら無能を証明するようなもので、即進退伺に発展しかねません。
日本の様に、できなかっても誰からも何も咎められないようなことはないのです。
 
エマソンもリーマンショックの煽りを乗り越えた後は、得意の中国経済の減速などで必ずしも業績は好調とは言えない状況です。しかし、そのマネジメント能力は優れており、上記の7-9%のEPSの成長は難しくはないと個人的には思います。

 

アメリカのトレンドは数年経つと日本のトレンドになり易く、外国人株主の多い日本企業等は上記の様な計画を既に株主に示している場合もあります。配当投資家は最後はShow me the Money!! ですので、CFはよく見ておいた方が良いと思います。
 

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2013年12月7日土曜日

アメリカ株が好調です、いや、アメリカ株をネタにした商売も好調のようです


アメリカ株を代表する指数であるダウ平均やS&P500は史上最高値を更新しています。

NASDAQ4000を回復するなど(これ急ピッチですね)、好調です。

こういった状況を受けて、最近やいろんなニュース・記事などではアメリカ株が見直されているかのような雰囲気が出ております。

 
そしていまさらながらに、アメリカ株で新規投信を設定したり、アメリカ株を推奨する証券会社があったりして、私から見れば、「カモネギ」ですね。

(もっとも、日本人が少し米国株を買ったからと言って、相場全体を押し上げるほどの力はないと思いますが)

私もこんな急ピッチで株価が回復するなんて思っていませんでした。

 

要因を私なりに考えると・・・

米経済は悪化しましたが、米企業は堅調だった。実はこれが投資チャンスだったと思います。

(日本では自動車業界や金融など一部の不況業界だけに焦点が当たっていたように思います)

米国経済と米企業の業績は年々連関性が低くなっているような気がします。

S&P500を構成する企業の売上高のうち、米国外の占める割合は年々大きくなっています。先進国では世界一ともいわれる法人税率にもかかわらず、納税先は(為替の影響もありますが)2011年ごろは米国外の方が多かったのです。

アップル、マイクロソフト、ジョンソンエンドジョンソン等の企業では、バランスシートに占める現預金の8割内外は海外現地法人に存置されたまま、積みあがっています(米国に資金還流すると、米国で課税される、つまり2重課税されるため)。


 

(出所:「S&P500 Global Sales」より)


つまり、米企業の大手企業はグローバル企業が多いのです(私は、この数値は金融業を除くと、売り上げも納税額も確実に50%を超えると思います)。

たとえば、マクドナルド、コカコーラでは70%以上、インテル80%以上(アメリカでPCなんて作りませんからね)米国外での売上高なのです。オイルメジャーのエクソンモービル70%以上が米国外売上高です(世界中で石油&ガスを掘っていますからね)。クアルコム(携帯電話のチップの開発製造。QUALLCOMです)に至っては90%を超えています(これも携帯電話なんて米国で製造しませんから)。フィリップモリスは当然ながら100%米国外売上高です。

(ちなみに日本だと「ダメ車」の烙印を押されているGM50%以上が米国外売上高なんですよ!!

また、株式市場では、(良くも悪くも、他国と比較すると)投資家が主役である点が制度的にも運用的にもはっきりとしていますので、わかりやすいと思います(企業は公器だ、なんてきれいごとを言うバカはいない。真の大株主であるカルパースを始めとする年金基金はリターンを上げるのに必死ですから)。

敵対的買収(非友好的買収)、CEOの更迭、コングロマリットディスカウント企業へのスピンオフ(分社化)の圧力、配当&自社株買い圧力などは茶飯事です。

CEO達は、株主にとって良い、と取締役会が判断すれば、かなりの割合でその提案に従います。

CEO達は人件費を変動費の様に扱っています。すぐにリストラします。

もっともCEO自身も出来が悪ければ、即リストラされてしまいます(Yahoo!の前々CEO(マリッサ・メイヤーさんの前々任)は携帯電話一本で、「あんたクビ」と更迭を告げられたらしいです。P&Gもマクドナルド氏は3年程度で事実上、クビだった)。

各企業は業界で1位か2位あるいはニッチなポジショニングを持っているなど事業では競争優位性を確立している企業が多い。

さらに、ゼネラルエレクトリックの航空機エンジン部門では、エンジンを納入した後のメンテナンスなどサービス収入もしっかり確保しています。シスコも同様です。

クアルコムは、チップの特許使用料収入が営業利益の半分近くを占めていたりします。

つまり、ボラティリティの大きい製造業でも、経営を安定化させる工夫がみられる企業が多いです。「ものづくり」へのこだわりよりも、キャッシュフローにこだわっている様に感じますね(もちろんボーナスにも)。

したがって、全般的には不況でもキャッシュフローは確保されていて、自社株買いや配当は好不況にかかわらず実施される傾向にあります。それが最終的には株価を下支えします。


まとめると、比較論になりますが、米国企業の経営者は普段から投資家の厳しい目に耐えるために、経営を安定化させる努力を怠っていないと言えると思います。そうでなければ、企業もCEO自身も生き残れないような土壌になっています。

 


一方、日経平均には、世界のトヨタや今や米国でも有名になったソフトバンクから未だに東京電力オリンパスといったXXな企業やシャープNECといった千鳥足経営の企業、あるいは、旧財閥グループの縄張りの維持のためか単なる意地かわかりませんが、かろうじて生き残った複数の某自動車メーカー(中にはかつてコンプライアンス問題で大揺れした会社もある)など「日本を代表する企業」で構成されるらしいですが・・・。

ソニーもサードポイントからちょっとエンタメ事業の件でケチをつけられただけで、大騒ぎ。
(日本の証券会社系のコメンテーターがソニーを擁護しているのを聞いてワロタ。エンタメは長期で見ればソニーとシナジーがあるだって。今まで30年ほとんどなかったじゃないか。説得力ゼロだね)

投資家目線から見て、理不尽な企業や話しはある意味、良くも悪くも「日本を代表」していると言えなくもない・・・。そういった事象が目立つ。

 

さて、アメリカ株が好調で、これから私も投資してみよう、と考えているのなら、

アメリカ経済の見通しを考えてインデックスに投資することは、大きくは間違ってはいないと思いますが、上述の理由により、世界経済に投資するような感覚があってもいいかも知れません。

(繰り返しますが、アメリカ経済の好不調とアメリカ株の相場に連関性が強いことは認めなければならないが、アメリカ経済が悪化して株価が安くなった一方、アメリカ企業は比較的堅調だったことが投資チャンスだったんです。これは日本でも一定の企業には当てはまると思う)


単に、金融緩和とドル高でアメリカに資金が集まって、アメリカ経済が回復している、だからアメリカ株が高くって、だから自分も投資しよう、と考えているのであれば、気をつけてください。

原則的なことですが、自分の投資目的と、アメリカ株の期待できる投資リターンをしっかり吟味して、よく調べてから投資されることが良いと思います。

もっともアメリカ株から期待できる投資リターン、というのは例えば成長株と成熟株でもかなり違いますので、奥が深いのですが・・・。

今の時期がスタートとしてよいか悪いか、という点については、投資期間と期待リターンの問題の様な気がします。20~30年のスパンであれば、今からでも遅くはないと思います。半年で結果を出したいのならお勧めしません。

但し、正直、手数料や信託報酬率の高い投資信託を買っても、「理論上の期待リターン」-「販売手数料・信託報酬率」となると、日本株と変わらないような気がします。

アメリカでは、如何にこういった手数料を低くして、投資資金を集めるかが、各投信会社の経営のキモになっていますので(それだけ投信会社が巨大化して規模のメリットを発揮している)、時代に逆行していると思います。

ヴァンガード社(非公開ですが)、フランクリン・リソーシーズ社、レッグメイソン社、ブラックロック社等の独立系投資会社が、よいアイディアでコストが安いパッシブな投資商品を競っています。それで十分だと思います。

実は投信を買うより、投信会社の株を買う方が、よっぽどリターンが良いとも言われています…。

投信会社は債券ファンドも保有していますので、ファンド商品を個別に買うより、ブラックロックやフランクリン・リソーシーズの株を買う方がバランスは取れていたりしますね。

もっとも、自分が普段利用していて、製品やサービスのよさが既に分かっている身近なアメリカ企業(探せば思った以上に結構ありますよ)を自分で調べて投資されることが最も確実だと私は思います。


濡れ手に粟、はありません。数年前、新興国ブームで新興国に投資して、塩漬け資金をアメリカ株に振り分けようなんて考えていると、また同じ轍を踏むかもしれませんよ~


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2013年12月1日日曜日

武田薬品工業の外国人社長の登用についての私見


武田薬品工業の長谷川社長が、次期社長に英国のグラクソスミスクラインのフランス人幹部を抜擢するという人事が話題となっています。

 


産経ニュース12.1より

これを聞いて私は武田薬品を少し見直すこととしました。月曜日の株価がどう跳ねるのかを見なければなりませんが・・・。


配当投資家にとって、武田薬品工業とエーザイはどちらも銘柄選択から外せない企業ではないでしょうか? 一時期配当利回りが5%台になっていた時期もあったと思います。

私も武田薬品工業はこの4年ほどずっと、新規銘柄の候補先に入れていました。しかし、増配余地が限定的なことと、失望させられるニュースが続いて、購入を見合わせていました(すべてのニュースをくまなく見ていたわけでもありませんが、おもなものは見ていたと思う)


ご存知かもしれませんが、世界中の製薬会社で2010~2013年は「Patent Cliff」(直訳すれば特許権の崖、つまり先発薬の特許切れに伴い、製薬会社の収益源が激減することを意味する)に直面しており、武田製薬も「タケプロン」や「アクトトス」といった、世界で単一商品にて1,000億円以上を売り上げる「ブロックバスター」が特許切れになるという経営の転換期にありました(2品合わせて最盛期には5000億円以上売り上げていたんじゃないか)。

(難病によく効く薬ということで、世界の医療に貢献する商品が「ブロックバスター」という殺戮的な表現を用いられるところが、個人的には興味深かったりする)

アメリカのファイザーイー・ライリリーそして、グラクソスミスクラインメルクといったメガファーマも同様の悩みを抱えていました。日本のエーザイも同様ですね。


アメリカでは特許が切れると、特許切れ1年前と比較して、売上高が約▲75%に落ち込み、その1年後には製薬会社が同製品の製造から撤退するといわれています。

「ブロックバスター」級の製品の売上高原価率は、なんと、5~7%(原価率ですよ。念のため)と言われているので、ドル箱商品がなくなるインパクトがあるのです。

(注:ただし日本では医薬品の単価は厚労省の「公的価格」で決められる護送船団式制度があるので、こんなことにはならず、長期収載品として、ダラダラと稼いでくれます。このことが日本でジェネリック薬品が普及しない原因の一つとも言われています)

 イー・ライリリーはアメリカのホワイトカラーで研究開発以外の社員の1/3をリストラするというニュースがあったリ、ファイザーは以前ご紹介したかもしれませんが、アニマルヘルス事業をゾーティスとして分社したり、健康補助食品事業をネスレに1兆円以上で売却するなど選択と集中に取り組んでいたり、メルクはシェリングプラウと合併して、その後重複部門を徹底的にリストラして、規模のメリットを享受して経営体質がものすごく筋肉質になってきました。


武田薬品よりも規模も利益率も上位にいる「メガファーマ」ですら、血を流すリストラを断行している・・・・。


したがって、彼らよりも規模の劣る武田薬品工業でも構造改革は急務だったんですね。

武田薬品をとりまく外部環境を簡単にご紹介しました。

そういった一貫でしょうか、たとえば、2010年にはこんな記事がありました。


長谷川閑史・武田薬品工業社長が「根拠なき楽観」を斬る

日経ビジネスオンライン201075

(記事をすべて読むためには会員登録が必要になると思います)

2010年当時から、日本人ではだめだから外国人を登用する、と言っています。

 

ただ、当時私は、「日本人ぐらいマネージメントしてくれよ。社長自ら自分の会社にダメだしするなんて」 という感覚でこの記事を読んだことを覚えています。

 
その後、2011年には武田はパテント切れで悪化する業績を補うために、大型買収に打って出ます。そうです、ナイコメッド社の買収です。

 
私は日経ビジネスオンラインの記事を覚えていたので、「武田一社をまとめられないのに、そんなでっかい買収して大丈夫なのか?」と思って、やはり投資をためらってしまいました。


その後、20133月期の決算発表(135月)で、多くの証券アナリストを失望させ、当然私も何度目の失望かわからないけど、やっぱり失望してしまいました。

手元にSMBC日興証券のアナリストレポートがありますが、その見出しを少し抜き出してみます。

201363日付)

  • 業績予想を減額修正、目標株価は5000円に引き下げ。
  • 14/3期利益計画、中期計画に失望、想定以上のコスト増大にサプライズ
  • 中期利益予想も減額修正


「想定以上のコスト増大」とは、人件費や研究開発費が計画以上に上振れしてしまったので、会社の中期計画値だった営業利益2250億円を850億円も下回る、というお粗末さだったのです。

売上高が予想に満たなかったのは、まあ許せるとしても、管理すべきコストが管理できていなかった、というのはひどい内容だと思いました。


その後日経新聞電子版でも(これも読むためには会員登録が必要)こんな記事がありました



経営もグローバル化が必要である、と素直に長谷川社長は認めています。

そして今回の人事発表です。


有言実行だったわけですね。


武田薬品といえば、創業家武田家が代々社長を務めていましたが、2003年に社長の座を譲った武田國男氏もかなり破天荒な経営で武田を立て直した人でした。後継が創業家にこだわっていては会社が競争に勝てない、といってサラリーマンの長谷川氏にあっさりバトンタッチをしました。

 
したがって、長谷川氏が社長の座を外国人に委譲しても武田全体としては時代の流れに乗っただけで突飛ではないかもしれません。


製薬会社は、技術力・開発力が数値になって現れるので、通常の製造業以上に競争は激しくなっています。その開発力を評価するのは、そりゃもう、ご見識のお高い、「お医者様」ですからねえ。薬だけでしょう、直接の受益者たる患者さん(消費者)ではなく、お医者さんがその是非を評価するのは。したがって、非常に厳しい中で競争しているとも言えます。

さらに、日米欧はいずれも高齢化社会に突入し、いかに効率的な医療を行うのかは共通関心事項です。

そういった中で、医薬にプレミアム価格を払うには、それなりの効用が求められますが、開発ネタも枯渇しつつあるようです。したがって、競争は今後とも激しくなることが予想され、武田薬品工業も、継続的に新薬を提供し続ける財務的な基盤をまず戻すことが急務だと思います。


私見では、ナイコメッド買収は、従来の武田路線からやや外れているので(新薬の開発一辺倒から新興国で安い薬も売るスタイル)、まだシックリ来ないのが現状です。アステラスの様に、新薬一本で突き進むスタイルの方が好きです。

武田はどちらかと言えば、欧州系のノバルティスのようなスタイルを目指しているのでしょうか。


確かに配当利回りは今でも高いのですが、外国人社長を据えて、やる気が見えてきたのはポジティブですが、経営のスタイルがまだ見えてこないので、もうしばらく様子見銘柄です。


日本でも外国人が社長になってもダメだった日本板硝子のような事例もありますので、日産のゴーン級のリーダーシップが発揮できるか、ということでしょう。
 
 
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