武田薬品工業の長谷川社長が、次期社長に英国のグラクソスミスクラインのフランス人幹部を抜擢するという人事が話題となっています。
産経ニュース12.1より
これを聞いて私は武田薬品を少し見直すこととしました。月曜日の株価がどう跳ねるのかを見なければなりませんが・・・。
配当投資家にとって、武田薬品工業とエーザイはどちらも銘柄選択から外せない企業ではないでしょうか? 一時期配当利回りが5%台になっていた時期もあったと思います。
私も武田薬品工業はこの4年ほどずっと、新規銘柄の候補先に入れていました。しかし、増配余地が限定的なことと、失望させられるニュースが続いて、購入を見合わせていました(すべてのニュースをくまなく見ていたわけでもありませんが、おもなものは見ていたと思う)
ご存知かもしれませんが、世界中の製薬会社で2010年~2013年は「Patent Cliff」(直訳すれば特許権の崖、つまり先発薬の特許切れに伴い、製薬会社の収益源が激減することを意味する)に直面しており、武田製薬も「タケプロン」や「アクトトス」といった、世界で単一商品にて1,000億円以上を売り上げる「ブロックバスター」が特許切れになるという経営の転換期にありました(2品合わせて最盛期には5000億円以上売り上げていたんじゃないか)。
(難病によく効く薬ということで、世界の医療に貢献する商品が「ブロックバスター」という殺戮的な表現を用いられるところが、個人的には興味深かったりする)
アメリカのファイザーやイー・ライリリーそして、グラクソスミスクラインやメルクといったメガファーマも同様の悩みを抱えていました。日本のエーザイも同様ですね。
アメリカでは特許が切れると、特許切れ1年前と比較して、売上高が約▲75%に落ち込み、その1年後には製薬会社が同製品の製造から撤退するといわれています。
「ブロックバスター」級の製品の売上高原価率は、なんと、5~7%(原価率ですよ。念のため)と言われているので、ドル箱商品がなくなるインパクトがあるのです。
(注:ただし日本では医薬品の単価は厚労省の「公的価格」で決められる護送船団式制度があるので、こんなことにはならず、長期収載品として、ダラダラと稼いでくれます。このことが日本でジェネリック薬品が普及しない原因の一つとも言われています)
武田薬品よりも規模も利益率も上位にいる「メガファーマ」ですら、血を流すリストラを断行している・・・・。
したがって、彼らよりも規模の劣る武田薬品工業でも構造改革は急務だったんですね。
武田薬品をとりまく外部環境を簡単にご紹介しました。
そういった一貫でしょうか、たとえば、2010年にはこんな記事がありました。
長谷川閑史・武田薬品工業社長が「根拠なき楽観」を斬る
日経ビジネスオンライン2010年7月5日
(記事をすべて読むためには会員登録が必要になると思います)
2010年当時から、日本人ではだめだから外国人を登用する、と言っています。
ただ、当時私は、「日本人ぐらいマネージメントしてくれよ。社長自ら自分の会社にダメだしするなんて」 という感覚でこの記事を読んだことを覚えています。
その後、2011年には武田はパテント切れで悪化する業績を補うために、大型買収に打って出ます。そうです、ナイコメッド社の買収です。
私は日経ビジネスオンラインの記事を覚えていたので、「武田一社をまとめられないのに、そんなでっかい買収して大丈夫なのか?」と思って、やはり投資をためらってしまいました。
その後、2013年3月期の決算発表(13年5月)で、多くの証券アナリストを失望させ、当然私も何度目の失望かわからないけど、やっぱり失望してしまいました。
手元にSMBC日興証券のアナリストレポートがありますが、その見出しを少し抜き出してみます。
(2013年6月3日付)
- 業績予想を減額修正、目標株価は5000円に引き下げ。
- 14/3期利益計画、中期計画に失望、想定以上のコスト増大にサプライズ
- 中期利益予想も減額修正
「想定以上のコスト増大」とは、人件費や研究開発費が計画以上に上振れしてしまったので、会社の中期計画値だった営業利益2250億円を850億円も下回る、というお粗末さだったのです。
売上高が予想に満たなかったのは、まあ許せるとしても、管理すべきコストが管理できていなかった、というのはひどい内容だと思いました。
その後日経新聞電子版でも(これも読むためには会員登録が必要)こんな記事がありました
経営もグローバル化が必要である、と素直に長谷川社長は認めています。
そして今回の人事発表です。
有言実行だったわけですね。
武田薬品といえば、創業家武田家が代々社長を務めていましたが、2003年に社長の座を譲った武田國男氏もかなり破天荒な経営で武田を立て直した人でした。後継が創業家にこだわっていては会社が競争に勝てない、といってサラリーマンの長谷川氏にあっさりバトンタッチをしました。
したがって、長谷川氏が社長の座を外国人に委譲しても武田全体としては時代の流れに乗っただけで突飛ではないかもしれません。
製薬会社は、技術力・開発力が数値になって現れるので、通常の製造業以上に競争は激しくなっています。その開発力を評価するのは、そりゃもう、ご見識のお高い、「お医者様」ですからねえ。薬だけでしょう、直接の受益者たる患者さん(消費者)ではなく、お医者さんがその是非を評価するのは。したがって、非常に厳しい中で競争しているとも言えます。
さらに、日米欧はいずれも高齢化社会に突入し、いかに効率的な医療を行うのかは共通関心事項です。
そういった中で、医薬にプレミアム価格を払うには、それなりの効用が求められますが、開発ネタも枯渇しつつあるようです。したがって、競争は今後とも激しくなることが予想され、武田薬品工業も、継続的に新薬を提供し続ける財務的な基盤をまず戻すことが急務だと思います。
私見では、ナイコメッド買収は、従来の武田路線からやや外れているので(新薬の開発一辺倒から新興国で安い薬も売るスタイル)、まだシックリ来ないのが現状です。アステラスの様に、新薬一本で突き進むスタイルの方が好きです。
武田はどちらかと言えば、欧州系のノバルティスのようなスタイルを目指しているのでしょうか。
確かに配当利回りは今でも高いのですが、外国人社長を据えて、やる気が見えてきたのはポジティブですが、経営のスタイルがまだ見えてこないので、もうしばらく様子見銘柄です。
日本でも外国人が社長になってもダメだった日本板硝子のような事例もありますので、日産のゴーン級のリーダーシップが発揮できるか、ということでしょう。
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ソニーもオリンパスも、ボロボロになっただけでしたねww
返信削除ソニーのストリンガー氏は何もできませんでしたね。
削除http://p.tl/1K_w!
返信削除今回の背景と課題について、上記のBloomberg記事が詳しい。