2013年12月7日土曜日

アメリカ株が好調です、いや、アメリカ株をネタにした商売も好調のようです


アメリカ株を代表する指数であるダウ平均やS&P500は史上最高値を更新しています。

NASDAQ4000を回復するなど(これ急ピッチですね)、好調です。

こういった状況を受けて、最近やいろんなニュース・記事などではアメリカ株が見直されているかのような雰囲気が出ております。

 
そしていまさらながらに、アメリカ株で新規投信を設定したり、アメリカ株を推奨する証券会社があったりして、私から見れば、「カモネギ」ですね。

(もっとも、日本人が少し米国株を買ったからと言って、相場全体を押し上げるほどの力はないと思いますが)

私もこんな急ピッチで株価が回復するなんて思っていませんでした。

 

要因を私なりに考えると・・・

米経済は悪化しましたが、米企業は堅調だった。実はこれが投資チャンスだったと思います。

(日本では自動車業界や金融など一部の不況業界だけに焦点が当たっていたように思います)

米国経済と米企業の業績は年々連関性が低くなっているような気がします。

S&P500を構成する企業の売上高のうち、米国外の占める割合は年々大きくなっています。先進国では世界一ともいわれる法人税率にもかかわらず、納税先は(為替の影響もありますが)2011年ごろは米国外の方が多かったのです。

アップル、マイクロソフト、ジョンソンエンドジョンソン等の企業では、バランスシートに占める現預金の8割内外は海外現地法人に存置されたまま、積みあがっています(米国に資金還流すると、米国で課税される、つまり2重課税されるため)。


 

(出所:「S&P500 Global Sales」より)


つまり、米企業の大手企業はグローバル企業が多いのです(私は、この数値は金融業を除くと、売り上げも納税額も確実に50%を超えると思います)。

たとえば、マクドナルド、コカコーラでは70%以上、インテル80%以上(アメリカでPCなんて作りませんからね)米国外での売上高なのです。オイルメジャーのエクソンモービル70%以上が米国外売上高です(世界中で石油&ガスを掘っていますからね)。クアルコム(携帯電話のチップの開発製造。QUALLCOMです)に至っては90%を超えています(これも携帯電話なんて米国で製造しませんから)。フィリップモリスは当然ながら100%米国外売上高です。

(ちなみに日本だと「ダメ車」の烙印を押されているGM50%以上が米国外売上高なんですよ!!

また、株式市場では、(良くも悪くも、他国と比較すると)投資家が主役である点が制度的にも運用的にもはっきりとしていますので、わかりやすいと思います(企業は公器だ、なんてきれいごとを言うバカはいない。真の大株主であるカルパースを始めとする年金基金はリターンを上げるのに必死ですから)。

敵対的買収(非友好的買収)、CEOの更迭、コングロマリットディスカウント企業へのスピンオフ(分社化)の圧力、配当&自社株買い圧力などは茶飯事です。

CEO達は、株主にとって良い、と取締役会が判断すれば、かなりの割合でその提案に従います。

CEO達は人件費を変動費の様に扱っています。すぐにリストラします。

もっともCEO自身も出来が悪ければ、即リストラされてしまいます(Yahoo!の前々CEO(マリッサ・メイヤーさんの前々任)は携帯電話一本で、「あんたクビ」と更迭を告げられたらしいです。P&Gもマクドナルド氏は3年程度で事実上、クビだった)。

各企業は業界で1位か2位あるいはニッチなポジショニングを持っているなど事業では競争優位性を確立している企業が多い。

さらに、ゼネラルエレクトリックの航空機エンジン部門では、エンジンを納入した後のメンテナンスなどサービス収入もしっかり確保しています。シスコも同様です。

クアルコムは、チップの特許使用料収入が営業利益の半分近くを占めていたりします。

つまり、ボラティリティの大きい製造業でも、経営を安定化させる工夫がみられる企業が多いです。「ものづくり」へのこだわりよりも、キャッシュフローにこだわっている様に感じますね(もちろんボーナスにも)。

したがって、全般的には不況でもキャッシュフローは確保されていて、自社株買いや配当は好不況にかかわらず実施される傾向にあります。それが最終的には株価を下支えします。


まとめると、比較論になりますが、米国企業の経営者は普段から投資家の厳しい目に耐えるために、経営を安定化させる努力を怠っていないと言えると思います。そうでなければ、企業もCEO自身も生き残れないような土壌になっています。

 


一方、日経平均には、世界のトヨタや今や米国でも有名になったソフトバンクから未だに東京電力オリンパスといったXXな企業やシャープNECといった千鳥足経営の企業、あるいは、旧財閥グループの縄張りの維持のためか単なる意地かわかりませんが、かろうじて生き残った複数の某自動車メーカー(中にはかつてコンプライアンス問題で大揺れした会社もある)など「日本を代表する企業」で構成されるらしいですが・・・。

ソニーもサードポイントからちょっとエンタメ事業の件でケチをつけられただけで、大騒ぎ。
(日本の証券会社系のコメンテーターがソニーを擁護しているのを聞いてワロタ。エンタメは長期で見ればソニーとシナジーがあるだって。今まで30年ほとんどなかったじゃないか。説得力ゼロだね)

投資家目線から見て、理不尽な企業や話しはある意味、良くも悪くも「日本を代表」していると言えなくもない・・・。そういった事象が目立つ。

 

さて、アメリカ株が好調で、これから私も投資してみよう、と考えているのなら、

アメリカ経済の見通しを考えてインデックスに投資することは、大きくは間違ってはいないと思いますが、上述の理由により、世界経済に投資するような感覚があってもいいかも知れません。

(繰り返しますが、アメリカ経済の好不調とアメリカ株の相場に連関性が強いことは認めなければならないが、アメリカ経済が悪化して株価が安くなった一方、アメリカ企業は比較的堅調だったことが投資チャンスだったんです。これは日本でも一定の企業には当てはまると思う)


単に、金融緩和とドル高でアメリカに資金が集まって、アメリカ経済が回復している、だからアメリカ株が高くって、だから自分も投資しよう、と考えているのであれば、気をつけてください。

原則的なことですが、自分の投資目的と、アメリカ株の期待できる投資リターンをしっかり吟味して、よく調べてから投資されることが良いと思います。

もっともアメリカ株から期待できる投資リターン、というのは例えば成長株と成熟株でもかなり違いますので、奥が深いのですが・・・。

今の時期がスタートとしてよいか悪いか、という点については、投資期間と期待リターンの問題の様な気がします。20~30年のスパンであれば、今からでも遅くはないと思います。半年で結果を出したいのならお勧めしません。

但し、正直、手数料や信託報酬率の高い投資信託を買っても、「理論上の期待リターン」-「販売手数料・信託報酬率」となると、日本株と変わらないような気がします。

アメリカでは、如何にこういった手数料を低くして、投資資金を集めるかが、各投信会社の経営のキモになっていますので(それだけ投信会社が巨大化して規模のメリットを発揮している)、時代に逆行していると思います。

ヴァンガード社(非公開ですが)、フランクリン・リソーシーズ社、レッグメイソン社、ブラックロック社等の独立系投資会社が、よいアイディアでコストが安いパッシブな投資商品を競っています。それで十分だと思います。

実は投信を買うより、投信会社の株を買う方が、よっぽどリターンが良いとも言われています…。

投信会社は債券ファンドも保有していますので、ファンド商品を個別に買うより、ブラックロックやフランクリン・リソーシーズの株を買う方がバランスは取れていたりしますね。

もっとも、自分が普段利用していて、製品やサービスのよさが既に分かっている身近なアメリカ企業(探せば思った以上に結構ありますよ)を自分で調べて投資されることが最も確実だと私は思います。


濡れ手に粟、はありません。数年前、新興国ブームで新興国に投資して、塩漬け資金をアメリカ株に振り分けようなんて考えていると、また同じ轍を踏むかもしれませんよ~


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