2013年4月20日土曜日

どんな投資本を読むのか お勧め書籍 その3 投資家に大切なたった3つの疑問 行動ファイナンスで市場と心理を科学する方法(ウィザードブックシリーズ)


いやあ、アベノミクス円安でフィリップモリスとIBMは決算が不調で、この1週間はちょっとスローでした。この2社の日本での利益がかなりのものであったことを改めて思い知らされました。
投資家が大切にしたいたった3つの疑問
投資家が大切にしたいたった3つの疑問
著者:ケネス・L.フィッシャー
価格:3,990円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

これをお勧めしているブロガーはかなり少数ではないかと思います(旧ブログで自分で一度お薦めしたことがあります。「投資家が大切にしたいたった3つの疑問」by ケン・フィッシャー 2011/9/25」 )
この本を推奨する序文を書いているのは、あの、ジム・クレイマーです。

著者は、成長株投資で有名なフィリップ・フィッシャーの末っ子、ケン・フィッシャーという人です。日本ではそれほど名前は知られていませんが、彼はForbes誌のアメリカ資産家ランキングTop40030年近くずっと名前を連ねる筋金入りのビリオネアです(ちなみに2012年は271位で18億ドルの純資産を保有するとのこと!!!)。
 
About Ken Fisher and Other Authors


「そりゃ、お父さんがお金持だったからでしょ?」 と思っている人は、甘い! ケンの分析によれば、1982年から2005年の23年間に同誌のTop400位に居座り続けるためには、資産を年率11.5%で増やし続けなければならない、と分析されている。

1982年の400位だった人の資産総額は7500万ドルで、2005年の400位の人は9億ドルとなっているそうです。23年間Top400位であり続けるには年率11.5%の自分の純資産を増加させなければならず、アメリカでトップクラスの大富豪であり続けるためには、自分の全財産をS&P500よりアウトパフォームさせなければだめだったことになります。アメリカでずっと大富豪であり続けることは、非常に難しいのです(ウォルマートの創業者、サム・ウォルトンの子息は別格かな?同社株を保有し続けるだけでトップビリオネアの地位をキープできそう)。

かれは自分の運用会社Fisher Asset Management を経営していますが、タネ銭はお父さん譲りだったかはちょっとわかりません。100名以上のスタッフを抱え、運用資産額 Asset Under Management 360億ドル(3.5兆円)ともいわれています。  

 
 そして、その投資哲学はウォ―レン・バフェットにも大きな影響を与えたお父さんとは、まったく違っています。彼の考え方は、(相場の)歴史は繰り返す、という点が前提になっている可能性があります。過去に起こった経済事象と相場との相関性を徹底的に分析し、それに行動経済学的な考えを取り入れ、皆が気付かない相場の裏を先回りして資本投下を行い、市場平均に打ち勝つ、というのがスタイルであると思います。

アメリカの金持ちが読む雑誌「Forbes」で「Portfolio Strategy」というコラムをもう25年以上継続して掲載しています。同じ雑誌で同じコラムを長年続けることは並大抵ではありません。多分同雑誌の看板記事になっていると思います。Webでも掲載されており、私のブログにリンクしています。毎月欠かさず読んでいます。

したがって、彼から学ぶべきことは、相場の大局観だと私は思います。著書では「他人が知らないことで自分が知っていることは何か?」を自分で考えることが、市場に打ち勝つために必要で、それを知るためには、徹底的なリサーチが必要と説いています。

サラリーマン投資家にこれをすることは容易ではないので、彼の著書で考え方を学び、彼のコラムを読むことで、今、彼が何を考えているのかを知り、自分の投資に生かす、ということがボトムラインではないかと思います。

ただし、彼自身100%言い当てることは不可能であると言っており、70%~80%程度の見通しで当たっていればOKぐらいの気持ちでいる点で、外す時もあります。それでも長期のリターンには目を見張るものがあり、ピーター・リンチやビル・ミラーといった面々とはまた違ったエッセンスを得られます。

ストック・ピッカーの達人である父フィリップ・フィッシャー、ウォーレン・バフェット、ピーター・リンチあるいはビル・ミラー氏とは違い、彼自身の主張で一見びっくりするのは、

銘柄選には大した影響力はない
PERが割高だからと言って、株価が上がらないわけではない・・・・・

という2点です。著書にはしっかりエビデンスと共に、上記を証明しています。バリュー投資家には一瞬びっくりしてしまうようなことが書いてあります。
(注:上記Portfolio Strategyで彼は概ね毎月5銘柄の推奨銘柄を挙げています。推奨銘柄は1996年~2005年の10年間の間、SP500の平均年率リターンが6.8%に対し、11.7%と大きくアウトパフォームしているので、銘柄選択が下手ではない点を言っておく。むしろ銘柄選択はうまい方。時々日本株も推奨していますよ!)
 
効率的市場仮説の支持者は「確実に儲けられる投資ロジックがあれば、即市場に知れ渡るので、結局そのような投資方法は存在しないことになる」と言います。ケンは入念な分析の結果、「ほとんどの人が知らないけど、XXX」なものを次々と見つけ出し、大衆と反対の方に賭けて勝利を収めています。そしてその発見事項はケンがインタビューや著書で公にしているにもかかわらず、10年程度は使えるのだ、と言っています(したがって、市場は効率的ではないと言います)。
 
代表的な例は、彼の初期のベストセラー「ケン・フィッシャーのPSR株分析」における売上高と株価の関係です。今でこそPSRという投資指標は広まりましたが、当時は誰もその関係を知らなかったようです。ケンは株価と売上高の相関性を調べ上げ、この指標を使って運用を行って大成功を収めたそうです。本を出版してもしばらくは相場に勝てたそうです。したがって、効率的市場仮説は当てはまらない。
 
さらに先進国のマクロ経済で大流行の「財政赤字」です。「財政赤字は悪」というのが、先進各国では考えられています。マーケットでもアメリカの財政赤字がヒドイ、となればダウ平均は軟調になります。そして、債券は堅調になり、債券ファンドのボスともいえるビル・グロス辺りが、もっともらしいことを言って、皆を委縮させます。

しかし、ケンは財政赤字とは国家経済へのレバレッジ投資であり、経済に良い影響を与えるため、買いであり、逆に財政黒字はレバレッジの縮小を意味するので、売りである、と見抜いています。

マクロ経済的には、不景気な時の財政政策はマネーの波及効果を生みますので、経済効果があるというのが定石になっているようです。しかし、どこの国のマスコミも、「赤字で大変だ」と騒ぎたてるので、市場心理が冷え込むのです(経済指標や企業業績も下降線をたどる。しかし、だからこそ財政で下支えするという因果関係があるのですね)。
 
もし仮に、効率的市場仮説が作用する場合、「アメリカの財政赤字、史上最悪を更新」という記事が出れば、ダウ平均は上昇するはずでしょう。日経平均でも同じでしょうね。

したがって、2009年ごろからは盛んに買いを述べていました。今はまだ強気相場の5合目ぐらいだ、と大統領選直前ごろは言っていました。
 そして、今、2009年の財政政策が金融政策と少しずつ実を結び始めようとしていますね。

と、まあ、こんな内容が事例を使って色々と述べられている本です。日本ではあまり有名ではない人なので、前置きが長くなりました。

彼のこの本を読んでから、Forbes誌のPortfolio Strategy を毎月欠かさず読むようになりました。私が読み始めてから、2年ちょっと、実際彼の大局観は当たっています。

もっともアメリカ株のS&P500の年間リターンは、19262005年までの80年間、57年(約72%)でアップしており、23年(約28%)はマイナスリターンでした。しかし、マイナスリターンのうち、▲10%以下の年は13年(16%)、▲10%超の年は10年(12.5%)しかありません。さらに▲20%超の年は5年しかなく、できるだけ相場にいた方が儲けやすいことを示唆しています。ちなみに20%超のプラスリターンの年は31年(39%)もあります。

2008年のようなすさまじい下げ(確か▲37%)は過去に2度(うち一度は世界大恐慌、もう一度はたぶんオイルショックだと思う)しかありません。

かなり分厚い本で、ケンもやや斜に構えたような書き方をしていて、少し骨のある本ですけど、事実に基づいた分析ですので、説得力があります。銘柄選び以外で、自分で考え抜いて投資したい人には、そのための材料が転がっていますのでお勧め。

また、Forbes誌のPortfolio Strategyも一読の価値があると思います(このブログの右下にリンクがあります)。

応援よろしくお願いします!

0 件のコメント:

コメントを投稿