いろんなブロガーさんが書かれているので、二番煎じになると思って、あんまり気乗りしなかったのだが、一遍ぐらいはやってみようと思います。
通り一遍な概要を紹介するだけですと、他のブログとの差別化になりませんので、出来るだけ実体験を交えながらご紹介することで、「なぜこの本が役に立ったのか」ということがメッセージとして伝わるのではないか、と思ったりします。
第一段は「株式投資の未来」について書いてみたいと思います。
(株式投資の未来 ジェレミー・シーゲル著、日経BP社)
この本の素晴らしいところは、株式投資を超長期にわたって徹底的にデータ分析した点と思います。そのデータに基づいて、アドバイスしている点です。
株式投資のリターンをトータルリターンで測定する、というのはアメリカでは常識になっています。トータルリターンに何が最も寄与するのか、というのはシーゲル以外の学者でもいろんな角度で分析しており、配当が非常に大きな役割を示すことが証明されています。すなわち、配当を重視することが長期投資の基本である、ということを教えてくれた本です。たぶん5回は読んでいる。
以下概要です。
Q:長期的にバイアンドホールドを前提とした場合、どのような銘柄を持てばいいのか
- 最高の運用成績を示したのは、生活必需品と医薬品セクターで強力なブランドを築き上げた企業である(ちなみに1957年~2003年の46年間でトータルリターンの第一位はフィリップモリス、第二位はアボットラボラトリーズであり、今、2社とも私の主要ポートフォリオになっている。特にフィリップモリスはPF第一位)。
- 卓越したリターンをもたらす企業は、実際の増益率と市場が期待している増益率の差できまる。つまり、市場期待以上の成績を残す企業。配当がこの差を増幅する(コメント:あまり期待されていない企業が期待以上の成績を残すことを意味する)。
- 運用成績の良い企業は、PERは市場平均よりやや上、配当利回りは平均並み、ただし長期的な増益率が市場平均を上回っている企業(コメント;業績が安定して成長できる企業を意味していると思う)。
- いい企業には高い価格を払う価値はあるが、いくら払ってもよい、ということは決してない(ITバブルの時期の様に、成長株に過大なプレミアムを決して払ってはならない)。
- 長期における資産のトータルリターンで株式に勝るアセットクラスは他にない。いつの時代も一貫して年率平均6%~7%の成長を維持している。10年で2倍のペース(コメント;債券や金などと比較して言っています)。
- 株主価値の源泉
- 配当は不可欠なものである。
- 含み益ではなく実現利益だから。
- 配当金を再投資し続けることは、下落相場のプロテクター上昇相場のアクセルである。
ちなみに私の今のPFにおいて、やはりフィリップモリス/アルトリアグループのリターンは安定的に良いです。株価上昇率はおおむね市場平均を上回り、配当利回りは常に市場平均以上です。他の銘柄のパフォーマンスが安定しない中、これらの企業およびJTも含めると、確実に株価も配当も上昇するので、ニューマネーを投下しないとPF全体におけるウエイトが上昇していく傾向にあります。
著者のシーゲル教授は、今なおブルームバーグやCNBCといった投資番組のインタビューをよく受けますが、彼の現在の投資家へのメッセージはほとんどこの本に書かれていることです。
今年1月29日のBloombergにご出演
ダウ平均は2013年、70%の確率で15,000ドルを付ける、という内容。タイトルはもっと刺激的に17,000ドルがターゲットという派手なもの(たぶん、ブルームバーグが「よいしょ」したのだろう。教授自身は15,000ドルのコメントが中心)
- ロジックの概要は株式相場のPERの拡大によるものである、という感じ。PERがなぜ拡大するのかと言えば
- 株式相違場は歴史的なPERの平均値より未だ下にある。
- 巨額の資金が債券に眠っている。それらは全くリターンを生まない。しかし、アメリカはマイルドながらもインフレが継続しており、さらにインフレ率は上昇する可能性が高い。
- 一方、連続増配株(Dividend Paying Stock)は3%~4%の配当利回りにあり、なおかつトラックレコードはすこぶる良い。
- 住宅価格底入れによる資産価格の持ち直し。
- これらの流れから、実物資産である株式に資金が流入する環境が整いつつある。
- 200年の株式市場のデータ分析より、株式相場は10年サイクルでアップアンドダウンのサイクルを繰り返す。2000年のITバブル崩壊から2009年の大底までは悪い10年(Lost Decade)、これからはよい10年になるという分析が出ている。
あとはアマゾンの株高はなぜ正当化されるのですか、とか、バーナンキの金融政策をどう見ますか、といった内容ですが、割愛いたします。
アマゾン株については、IT[バブルの時代にシーゲル教授が高すぎる、といった他の銘柄で唯一(株価と高いPERが)生き残った?銘柄で、ノーコメントだといってかわしていました。
インテル、シスコ、マイクロソフトといったテクノロジー開発次第の成長ではなく、ショッピングという日常生活に密着しているからではないかと言ったきり。
私自身、「株式投資の未来」に沿った投資を実践しているつもりですが、本の中で、株価の成長が期待外れに終わった代名詞となっているIBMとシスコを保有していますので、鵜呑みにしているわけではありません(もっとも両社とも、PERの期待値 < 持続可能な増益率 であると思って買っているわけですが…)。
この本は私も好きで、現在の生活必需品セクターへの重点投資のきっかけになりました。
返信削除その2以降が楽しみです。
コメントありがとうございます。
削除私は多読よりも、一定の本を徹底的に読むタイプなのでレパートリーはさほど多くないかもしれません。
http://p.tl/qkzT!
返信削除バートン・ブリッグズ氏の「富、戦争、叡智」を読んでいますが、種々面白い!
例えば、太平洋戦争時に、ミッドウエイ海戦の敗北が噂で流れたので、野村本家と野村證券が、1942年に、持株を売却し、空売りもした。さらに、敗戦後の値上がりを予想して、不動産も購入した。これが、終戦直後の野村グループの再出発の原資となった。英文記事のURLを冒頭に示す。