2013年4月28日日曜日

創業経営者の功罪


上場企業の、いわゆる創業者(オーナー経営者)は、それはもう神格化といえば大げさ(西の方のエレクトロニクス関連企業はそんな感じになっている)かもしれませんが、その会社の全てを表している、といっても過言ではありません(未上場企業でも同じことは言えますが)。

一代で企業帝国を築いたその能力、リーダーシップ、ガッツなどどれをとっても尊敬に値すると素直に思います。

私も一時期、創業社長がいた上場企業に在籍していたことがありますが、社長=会社のようになっていました。ご本人はそうならないように色々気遣っていましたが(注:家業から社業にするために経営企画スタッフとして雇われていました)、結局はオレ=会社みたいな感じになってしまうんです。それが従業員も含めて楽だから(経営で最も重要な判断業務を一人にお任せしますし、幹部社員同士の議論も発生し得ない)。

もちろん、優れた参謀がいて、色々忠告・お諌めが出来るケースもありますが、三国志を見ても、曹操、劉備、孫権の3人とも権力のトップに立って安定してしまうと、部下の諌めを聞きませんでしたね(曹操は荀彧の進言を無視して王位に就き、劉備は趙雲らの反対を押し切って結局孫権に戦を挑んで大敗し、孫権も末期の世継ぎで乱心して陸遜が死んでしまった。そしてその後、この3家は勢いが衰えていきますね)。三国志の英傑ですら、こうですから、「水魚の交わり」のような番頭格のいる会社は非常に恵まれていると思います(しかし、「水」だった諸葛亮も結局劉備を止められなかった…)。

西洋社会においても「裸の王様」の童話がありますね。

権力の座に長く居座ると、「ワンマン病」になってしまうケースが多い。

創業社長のいる会社のよい点は、スピーディーな意思決定が出来て、時代の流れをうまく捕まえることが出来るため、先行者利益を得やすい点でしょうか?

そりゃ、「オレがやる」、と言えば、それを反対する人は皆無でしょう。上の3人の様にたとえ反対されても押し切ってしまうでしょう(成長期だと、まだ自信が完全に身についていないので、耳を傾けるのですけど、成熟期になると過信するのでしょうかね)。

他にもあると思いますが、これが一番大きいような気がします。

しかし、良い面があれば悪い面もあります。一代で上場まで持って行くためには、創業者の事業アイディア、時代の背景などが味方していることに違いはないと思います。したがって、創業からほぼ一貫して、基本的には「攻めの経営」で良かったはずです。中にはユニクロの様に、たとえ踊り場だと思われても、あえて攻めまくってその壁を乗り越えた例もあります。

したがって、仮に守勢に回るケースや潮流が変わり始めた場合に弱みを露呈する可能性が大きい。そういう時は、それまでやってきたことを一度自己否定して基盤を再構築しなければならないので、なかなか取り組みにくいことになります(サラリーマン企業でも簡単ではないですが)。ダイエー、西武などを見て思いました。

さらに2代目からがもっとも大変になります。攻めの経営のままで2代目(又は後継者)を迎えればよいのですが、高度経済成長から90年代ぐらいまでは一応何とか切り盛り出来ても、2000年代となると、国内市場の成熟化、グローバル化、円高など困難が出現し、「守り」に入らざるを得ない業界が多いように思います。そういったときこそ、創業時代のスピリッツが求められますが、そのスピリッツ(要するにワンマンでバシバシ意思決定して手を打って行く)は創業者だからこそできることで、ご本人以外は合議でやっていかざるを得ないというケースが多いのではないでしょうか?(中には某巨大小売業の様に2代目でも、絶大なる権力をお持ちの会社もありますけど)

しかし、いざ合議といっても、それまで「Yes」と言っていればよかった幹部社員に、考えろ・決めろ、といっても、元々そういったマインド設計になっていないと、ギアチェンジが難しくなります。

大経営者の後で「決められない経営」に陥ってしまったパナソニックやソニーを見ていると、そんな感じがします。早くから経営の一線から身を引いていたホンダとは違いますね。トヨタは創業家出身ですが、ああなってしまうと、ワンマンって感じでもなく、盛りたてるって感じ。自動車メーカーは多角化しづらいので、総合電機よりコアコンピタンスがブレないのでしょうね。

京都のメーカーには神様のように思われている創業者が何人かいますが、大阪の3大電機メーカー(パナ、シャープ、三洋)の失墜を反面教師化されるのか注目に値しますね。

サントリーなんかは比較的うまくいっているように見える。

権限委譲をスムースに行うのは創業社長の務めで、多くの心ある創業社長はそれに腐心されていると思います。しかし、「なんで俺に出来てお前に出来ないんだ」という感じになるケースも多く(そりゃ創業者だから出来るんでしょ、って部下は思いますが)、うまくいかないケースが散見されます(ユニクロなんてそうじゃない?柳井さんって、「俺の分身」の様な人か子息じゃないと結局任せられないんでしょう。バフェットもそれに近い)。

私のいた某企業(今は後継者を見つけて引退されています)も、「こんなリーダーが望ましい」という持論を散々聞かされましたが、当時の上司と「結局、俺のような社長をもう一人見つけろってことじゃない?」と話し合っていました。

出来る人ほど「任せる」がうまくできない(ロックフェラーは任せるのがうまかった)。

多くの創業者は、「もう一人の自分」が見つからず、結局子息に後継ぎをさせるのかもしれません(こういう弱みに付け込んで、財務省や日銀がオーナー系の地銀に公的資金の注入と引き換えに天下りポストを確保したりするケースもある)。

したがって、うまくいっている間はそれで良いけど、環境変化や組織の成熟度(ガバナンス、コンプライアンスとかを含め)が気になります。

そういった企業への投資がなかなか気乗りしないのはそういった理由からです。何となく「こんな感じの会社じゃないの?」と連想してしまって、気乗りしません。これまで散々オーナー企業をいろんな角度で見ている経験もあるかもしれません。成功すればするほど、それはワンマンだから…。

 
「騎手ではなく、馬に賭ける」(パットドーシー)、「船長ではなく、船の性能を見て投資する」(バフェット)を出来るだけ守るように心掛けています。素晴らしいビジネスモデルがあれば、創業者でも投資しうる。

創業者と言えば、アップルが今後、どういった経路をたどるのか、今後もアップルらしい商品が出てくれば、素晴らしいケースになりうる(しかし、今それが揺らぎ始めていますね)。

日本だと、小売業のしまむらの様な会社だと個人的にはいいですね(しかし、ウォルグリーンとかウォルマートの様な会社と比較すると配当利回りや配当性向が低くて、少し考えてしまう)。

創業者が経営する企業への投資は、その影響力をうまく見極めて投資する必要性がありますが、それが容易でないので、個人的にはあまり気乗りしないケースが多いです。

現在のポートフォリオではKinder Morgan 1社となっています(Fordは会長として君臨している。経営は基本的にCEOにお任せ)。


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2013年4月20日土曜日

どんな投資本を読むのか お勧め書籍 その3 投資家に大切なたった3つの疑問 行動ファイナンスで市場と心理を科学する方法(ウィザードブックシリーズ)


いやあ、アベノミクス円安でフィリップモリスとIBMは決算が不調で、この1週間はちょっとスローでした。この2社の日本での利益がかなりのものであったことを改めて思い知らされました。
投資家が大切にしたいたった3つの疑問
投資家が大切にしたいたった3つの疑問
著者:ケネス・L.フィッシャー
価格:3,990円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

これをお勧めしているブロガーはかなり少数ではないかと思います(旧ブログで自分で一度お薦めしたことがあります。「投資家が大切にしたいたった3つの疑問」by ケン・フィッシャー 2011/9/25」 )
この本を推奨する序文を書いているのは、あの、ジム・クレイマーです。

著者は、成長株投資で有名なフィリップ・フィッシャーの末っ子、ケン・フィッシャーという人です。日本ではそれほど名前は知られていませんが、彼はForbes誌のアメリカ資産家ランキングTop40030年近くずっと名前を連ねる筋金入りのビリオネアです(ちなみに2012年は271位で18億ドルの純資産を保有するとのこと!!!)。
 
About Ken Fisher and Other Authors


「そりゃ、お父さんがお金持だったからでしょ?」 と思っている人は、甘い! ケンの分析によれば、1982年から2005年の23年間に同誌のTop400位に居座り続けるためには、資産を年率11.5%で増やし続けなければならない、と分析されている。

1982年の400位だった人の資産総額は7500万ドルで、2005年の400位の人は9億ドルとなっているそうです。23年間Top400位であり続けるには年率11.5%の自分の純資産を増加させなければならず、アメリカでトップクラスの大富豪であり続けるためには、自分の全財産をS&P500よりアウトパフォームさせなければだめだったことになります。アメリカでずっと大富豪であり続けることは、非常に難しいのです(ウォルマートの創業者、サム・ウォルトンの子息は別格かな?同社株を保有し続けるだけでトップビリオネアの地位をキープできそう)。

かれは自分の運用会社Fisher Asset Management を経営していますが、タネ銭はお父さん譲りだったかはちょっとわかりません。100名以上のスタッフを抱え、運用資産額 Asset Under Management 360億ドル(3.5兆円)ともいわれています。  

 
 そして、その投資哲学はウォ―レン・バフェットにも大きな影響を与えたお父さんとは、まったく違っています。彼の考え方は、(相場の)歴史は繰り返す、という点が前提になっている可能性があります。過去に起こった経済事象と相場との相関性を徹底的に分析し、それに行動経済学的な考えを取り入れ、皆が気付かない相場の裏を先回りして資本投下を行い、市場平均に打ち勝つ、というのがスタイルであると思います。

アメリカの金持ちが読む雑誌「Forbes」で「Portfolio Strategy」というコラムをもう25年以上継続して掲載しています。同じ雑誌で同じコラムを長年続けることは並大抵ではありません。多分同雑誌の看板記事になっていると思います。Webでも掲載されており、私のブログにリンクしています。毎月欠かさず読んでいます。

したがって、彼から学ぶべきことは、相場の大局観だと私は思います。著書では「他人が知らないことで自分が知っていることは何か?」を自分で考えることが、市場に打ち勝つために必要で、それを知るためには、徹底的なリサーチが必要と説いています。

サラリーマン投資家にこれをすることは容易ではないので、彼の著書で考え方を学び、彼のコラムを読むことで、今、彼が何を考えているのかを知り、自分の投資に生かす、ということがボトムラインではないかと思います。

ただし、彼自身100%言い当てることは不可能であると言っており、70%~80%程度の見通しで当たっていればOKぐらいの気持ちでいる点で、外す時もあります。それでも長期のリターンには目を見張るものがあり、ピーター・リンチやビル・ミラーといった面々とはまた違ったエッセンスを得られます。

ストック・ピッカーの達人である父フィリップ・フィッシャー、ウォーレン・バフェット、ピーター・リンチあるいはビル・ミラー氏とは違い、彼自身の主張で一見びっくりするのは、

銘柄選には大した影響力はない
PERが割高だからと言って、株価が上がらないわけではない・・・・・

という2点です。著書にはしっかりエビデンスと共に、上記を証明しています。バリュー投資家には一瞬びっくりしてしまうようなことが書いてあります。
(注:上記Portfolio Strategyで彼は概ね毎月5銘柄の推奨銘柄を挙げています。推奨銘柄は1996年~2005年の10年間の間、SP500の平均年率リターンが6.8%に対し、11.7%と大きくアウトパフォームしているので、銘柄選択が下手ではない点を言っておく。むしろ銘柄選択はうまい方。時々日本株も推奨していますよ!)
 
効率的市場仮説の支持者は「確実に儲けられる投資ロジックがあれば、即市場に知れ渡るので、結局そのような投資方法は存在しないことになる」と言います。ケンは入念な分析の結果、「ほとんどの人が知らないけど、XXX」なものを次々と見つけ出し、大衆と反対の方に賭けて勝利を収めています。そしてその発見事項はケンがインタビューや著書で公にしているにもかかわらず、10年程度は使えるのだ、と言っています(したがって、市場は効率的ではないと言います)。
 
代表的な例は、彼の初期のベストセラー「ケン・フィッシャーのPSR株分析」における売上高と株価の関係です。今でこそPSRという投資指標は広まりましたが、当時は誰もその関係を知らなかったようです。ケンは株価と売上高の相関性を調べ上げ、この指標を使って運用を行って大成功を収めたそうです。本を出版してもしばらくは相場に勝てたそうです。したがって、効率的市場仮説は当てはまらない。
 
さらに先進国のマクロ経済で大流行の「財政赤字」です。「財政赤字は悪」というのが、先進各国では考えられています。マーケットでもアメリカの財政赤字がヒドイ、となればダウ平均は軟調になります。そして、債券は堅調になり、債券ファンドのボスともいえるビル・グロス辺りが、もっともらしいことを言って、皆を委縮させます。

しかし、ケンは財政赤字とは国家経済へのレバレッジ投資であり、経済に良い影響を与えるため、買いであり、逆に財政黒字はレバレッジの縮小を意味するので、売りである、と見抜いています。

マクロ経済的には、不景気な時の財政政策はマネーの波及効果を生みますので、経済効果があるというのが定石になっているようです。しかし、どこの国のマスコミも、「赤字で大変だ」と騒ぎたてるので、市場心理が冷え込むのです(経済指標や企業業績も下降線をたどる。しかし、だからこそ財政で下支えするという因果関係があるのですね)。
 
もし仮に、効率的市場仮説が作用する場合、「アメリカの財政赤字、史上最悪を更新」という記事が出れば、ダウ平均は上昇するはずでしょう。日経平均でも同じでしょうね。

したがって、2009年ごろからは盛んに買いを述べていました。今はまだ強気相場の5合目ぐらいだ、と大統領選直前ごろは言っていました。
 そして、今、2009年の財政政策が金融政策と少しずつ実を結び始めようとしていますね。

と、まあ、こんな内容が事例を使って色々と述べられている本です。日本ではあまり有名ではない人なので、前置きが長くなりました。

彼のこの本を読んでから、Forbes誌のPortfolio Strategy を毎月欠かさず読むようになりました。私が読み始めてから、2年ちょっと、実際彼の大局観は当たっています。

もっともアメリカ株のS&P500の年間リターンは、19262005年までの80年間、57年(約72%)でアップしており、23年(約28%)はマイナスリターンでした。しかし、マイナスリターンのうち、▲10%以下の年は13年(16%)、▲10%超の年は10年(12.5%)しかありません。さらに▲20%超の年は5年しかなく、できるだけ相場にいた方が儲けやすいことを示唆しています。ちなみに20%超のプラスリターンの年は31年(39%)もあります。

2008年のようなすさまじい下げ(確か▲37%)は過去に2度(うち一度は世界大恐慌、もう一度はたぶんオイルショックだと思う)しかありません。

かなり分厚い本で、ケンもやや斜に構えたような書き方をしていて、少し骨のある本ですけど、事実に基づいた分析ですので、説得力があります。銘柄選び以外で、自分で考え抜いて投資したい人には、そのための材料が転がっていますのでお勧め。

また、Forbes誌のPortfolio Strategyも一読の価値があると思います(このブログの右下にリンクがあります)。

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2013年4月16日火曜日

中国は世界の経済大国なのか? GDPは名目で見るの実質で見るのか?





中国のGDP成長率がエコノミスト予想を下回った、ということで、市場のリスクオフ材料になっているようです。

どなたの本か忘れてしまいましたが(岩田日銀副総裁か、高橋洋一教授だと思う)、中国は実質ベースでみたGDPは日本より低い、とおっしゃっていました。

世界経済ネタ帳さんで、測定してみることにしました(以下データは全て「世界経済ネタ帳」より)。

中国のGDPの推移(名目ベース)
2012年は52,184十億元とのこと(1元15円とざっくり仮定すると782兆円となりますかね)。
日本はざっくり480兆円であることと、1元も円安になったこともあって、思いっきり追い抜かれましたね。





中国のGDP実質ベースの推移
わかりやすくするために、名目と実質を同じグラフで比較してみました。
91年ごろまでは名目<実質だったんですね。今の日本のようです。なんでだろ?元レートを高く設定しすぎたのかもしれません。為替レートが文化大革命後の弱体化した中国経済を反映していなかったのかな(単なる推測です)?当時はデフレだったのかな?

91年と言えば、80年代後半に、ソ連のペレストロイカの影響を受け、中国も「開放路線」を歩み出したさ中、反動的な天安門事件が終わったころでした。そして、危機感を募らせた鄧小平氏による、「黒ネコでも白ネコでも、ネズミを捕るネコは良い猫だ」という南方講話が始まって、中国では外資誘致ブームがスタートする直前だったと思う。外資を誘致することで地方政府が中央政府に手柄をPRしたような時期(この前後の時期に中国に進出した企業は今頃大きな恩恵を受けている。ケンタッキーフライドチキンも含めて)。
そして上海市長が最高責任者に上り詰めるのですね。
一方、アメリカも湾岸戦争で財政が疲弊し、80年代の景気拡大路線が循環期に差し掛かり(また日本の電子部品、半導体攻勢に痛めつけられ)、景気が下火で、パパ・ブッシュ大統領は日本や中国に米企業のCEOをひきつれて、トップセールスを行っていましたね。パパ・ブッシュは日本で晩さん会を行った際、けいれんを起こして倒れてしまった。

当時、外資を誘致したい中国側と、とにかく新しい市場(初めは製造拠点だったと思うが)を見つける必要性があったアメリカの利害関係がこの時は一致していたのですね。日本は、Japan as NO.1と言っていたような…。

しかし、このころを起点に中国経済は大躍進を遂げたことは間違いありません。97年アジア通貨危機後は大幅に元安へ誘導したとも聞きます。

ちょっと前置きを長くとりましたが、これが中国の実質と名目のGDPの推移です。驚愕の事実が・・・。







さて、2012年の「実質GDP」は16,657十億元です(ざっくり250兆円で日本の1/2???)。

経済学を学んだわけではないので(法学部卒です。しかし、法律もまじめに学ばなかった…。当時は何をしてたんだろう?)、名目と実質のどちらがより大事なのか正直わかりません。

ただし、中国が世界第二の経済大国である、というのは世界中で既定路線のように語られていますので、経済規模を表すのに名目でもいいのかもしれません(しかし、名目の1/3しか実質が無い、というのも日本に住んでいると、どういう状態なのかよくわかりません)。

私が社会人になったころはいつも実質ベースで語られていた記憶があり、実質が正しいのだ、という先入観があります。
今、アベノミクスで名目成長率を増やす必然性がやっと実行に移されたように思います(国の社会保険構想は名目成長率を前提にシミュレートされている。一般財政最大の支出項目ですね)。

けど、インフレで成長した分は、水ぶくれ的な発想もわからないこともない。
実質と名目のバランスが取れていることが、大事だと言えそうかな?

一人当たりGDPで比較しろ、って言われても、中国の富裕層の絶対数と日本のそれが接近しているのと、日本に伝わってくる中国人像ってバブっているケースが多いから、どうしても隣の芝生が青く見えてしまう(日本と密接にかかわりのある知り合いの中国人も、向こうの基準では高所得者な人が多そう)。

さて、最後に世界主要国のGDPを比較してみました。この結果、中国が世界第2位の経済大国だという事実にどのように思われるでしょうか(ちょっと誘導尋問かな?)。
ブラジルは過去にハイパーインフレを経験したことがあるので、こんな結果になったんだろう(しかし、ロシアでも90年代に国債大暴落とかあったよなあ)。

名目と実質の差がこのように大きいと、しかも、名目-実質の絶対額の差(533兆円)で、日本一国のGDP額と同じぐらいの差(ドイツと英国の実質GDPを合わせても足りないんですよ!!!があるのですから、私にはどのように評価すべきかさっぱりわかりません。

但し、中国の名誉?のために言っておくと、1991年から2012年までの実質GDPの年平均成長率は、それでも10.3%と高成長だった。一方、名目GDP成長率は16.3%だった。高成長だったことは、この数値が正しければ、正しい、ということだろう。

名実約6%の差ですが、改めて複利の原則って怖いですね。



コンマのところが兆円になります。
 
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2013年4月14日日曜日

会社は誰のものか? I.B.M.は何と言っているのか?


現在、ポートフォリオ第二位のI.B.MAnnual Reportを読んでいます。

Annual Reportには、必ずと言っていいほどCEOから株主にあいさつ代わりの手紙があります。

Letter to the Shareholders というものです(バークシャー・ハザウェイ社のそれは、「バフェットからの手紙」と邦訳され、投資家必見の書のひとつとなっていますね)。ただしI.B.MではA Letter from the Chairmanと言っていますが同じことです。

I.B.MChairman & CEO(正確にはChairwomenかな)は、同社100年の歴史で初めて誕生した女性CEOVirginia Romettyです。彼女の書き出しのこの文が、読む我々をスカッとした気分にさせてくれます。

I am pleased to report that in 2012, IBM achieved record operating earnings per share, record cash flow and record profit margins, with revenues that were flat at constant currency.

Operating earnings per share were up by 13 percent, putting us well on track to our 2015 Road Map objective of at least $20 of operating earnings per share. Importantly, we continued to deliver value to you, our owners.

抄訳

2012年、IBMは過去最高の1株当たり営業利益、フリー・キャッシュフロー、利益率を為替中立ベースでほぼ前年比と同じ収入で達成できたことを報告出来て、うれしく思います。

一株当たり営業利益は、13%アップし、2015年までに、最低でも一株当たり営業利益を$20にするという中期計画(Road Mapと称しています)に沿ったペースで進んでいます。

重要なことは、我々は価値を提供し続けています、あなたにです、そう、私たちのオーナーの。



 
  Virginia Rometty
 株主向けの報告書なので、当たり前の表現かもしれませんが、ストレートに明快に、株主がオーナーであると言い切っています。それは彼らの経営指標にも表れていると思います。

Road Map(中期計画)で、彼らが株主にコミットメントしている唯一の経営指標は、Operating earnings per shareというものです。上記では一株当たり営業利益と訳しましたが、正確には、特別損益、M&Aにおける暖簾、商標権の償却やストックオプション等の費用処理分を除いた利益を指しています。

一株当たりの利益を最大化するのが目標ですから、自社株買いは当然財務戦略の大きな柱になっています。

一株当たりの利益を最大化するのが第一目標ですから、売上高が伸びなくても、収益構造を改善することが目標になります。

株主は、年々一株当たりの価値と配当金が上がるので、結構なものです。自社株買いの勢いがすごいので、市中に出回る株数が減っていきますからね。

 
ご参考、
ポートフォリオ概況 第二位 InternationalBusiness Machine Corp. I.B.M.

この記事では、02年から11年までの10年間の財務を掲載しています。
売上高は年率3%程度の成長しかしていません(02811億ドル→111,069億ドル)。
しかし、フリー・キャッシュフロー(営業CF-投資CF)は8,313百万ドル→15,738百万ドルと約2倍に、Earnings Per Share(一株当たり当期利益ですけど)は同期間、2.0613.06へと6.3倍に増えています。
結果、発行済み株式総数(Shares Mil)は1,7311,214(百万株)と▲30%も減少しています。

経営がどこを向いて経営しているのか、きわめてわかりやすい例として取り上げました。
この間、日立や東芝はI.B.MLow Marginと言って売却した資産を買っていますね(日立はその後さらに売却しましたが)。
今後もI.B.MにはSolidな業績を期待しています。この辺の企業はアメリカ株式会社1丁目1番地1のような中核企業なので、現時点では非の付け所がありません。

411日現在
株価 211.38ドル
PER 11.53倍(来期予想、Yahoo! Finance USAより)
Yield 1.60
確実にEPS2ケタ成長させてくれるこの銘柄のPER12倍にも満たない(実績ベースで14.71)。高いか、安いか? ライバルでもあるOraclの決算がよくなかったことも影響しているのでしょう。
ハイテク関連は今は端境期と考えられています。
私はそれでも2011年に買って以来、ドルベースの累計で約28%のリターンがあります。EPSの成長に現時点ではおおむね沿っています。
今後とも安心して、ホールドできる10年保有銘柄です。
 
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2013年4月9日火曜日

アベノミクスと向き合う 住宅ローンの借り換え 持ち家と賃借

今借りているローンは、買った時のマンションデベロッパー提携ローンで、変動金利に優遇幅▲1.200%がついている。したがって、1.225%となる。

インフレターゲット2%政策により、インフレ率を2年で2%に持って行くと言っている。いいかえると、インフレ率が2%にならない限り、日銀は利上げをしないはずである(よほどのことが無い限り)。
一方、国債金利は、「クロダには逆らうな」ということで、史上最低金利を更新しているし、しばらく継続しそうだ。そして、今回こそ長期金利は底這いから上昇に向かうはずである。

もし、この前提が正ならば、この際、変動金利を固定化してしまおうか、検討してみることにしました。

楽天銀行の4月の20年固定金利は1.49%である(但し、団体信用生命保険は外掛けで+0.35%程度見ておく必要性がある。実質1.85%ぐらいに考えている)。
事務手数料と登記手数用が出費となる。

現在、変動金利を選択したのは、金利なんてどうせ上がっても今から、2~3%程度だろう、とタカをくくっていたことがありました(変動金利の基準金利って短期プライムレートで、同金利は日銀の政策金利に、ほぼ連動して銀行が決定しているという事実はあまり知られていないようだ。これまでは国債の金利が上がるから、固定金利にしておきなさい、というアドバイスが目立っている)。

イタリアでも長期金利(もっともECBが短期金利を決定しますが)は6%ぐらいになりましたが、ECBは短期金利を低くしておきましたね。

しかし、0.5~0.6%のextraで、先行き20年近い住宅費が固定化出来るのであれば、それに越したことが無い、と考えるようになりました。これまではこのギャップが大きすぎたので、乗り気ではなかった。

黒田総裁は、今回の金融政策は将来、中央銀行が金利の上げ下げで金融政策が実行できる伝統的政策に戻すために必要だ、と言っていました。当面の国債金利は底這いで、今度こそは底打ちではないか、と考えるのが妥当だろう。したがって、長期金利は今がボトム。バーナンキさんがEXITを語り始めるまでは…。

話変わって
本来は、個人の生活設計上の目的で、住居を持ち家とするか賃借とするかを決めるべきだと思いますが、エコノミクスで考えた場合、本当にインフレ率2%が定着するならば、断然持ち家のエコノミクスが改善するのではないだろうか?

住宅の価値がインフレ率だけ上昇するのか、インフレ率-経年減価率程度で推移するのか、わかりません。
理論上、仮にマンションの様な耐火構造で耐用年数40年とすると、建物部分は定額法だと年率2.5%で減価することになる。一応、土地の区分所有部分があるので、マンション一室の経年減価は2%未満になるのではないか?したがって、2%のインフレ率だとマンションの価値は購入時の価格を保持できそうな計算になる。欧米だと、住宅の価値がインフレ率程度上昇している様だ。

自宅の価値が下落しない、というのは、ローンの返済分だけ、資産が増加することを意味しますので、断然所有したほうが、何かとよい計算になると思う。これがアメリカで今起こりつつある現象ですね。住宅価格が底打ち反転しています。皆気分が大きくなって、車を買い換えていますね。

売却した時に、返済したはずのローンがそっくりかえってきます。一方、賃借は返ってこない。

賃借の人は、家族の成長と共に住居を変えることが前提だと思いますので、住居費が変動しますが、その計算は、間取りが一定なら、将来の家賃も今と同じ、という前提で成り立っている。
近隣の3LDKはいくら、2DKはいくらとか。

しかし、2%インフレ率を前提にすると、家賃の上昇が生活設計の前提になってくる。所得も上昇すれば、負担としてはニュートラルではあるが、ローンを抱えた持ち家派と比較すると、家賃>ローン返済額 になるはずである(多くの人は、ローンの負担額を購入時のすみかの家賃程度に設定し、固定を組んでいそうだし)。

老後の住居も問題になってくる。家賃の調達原資を何に求めるのか、やや微妙だが、仮に年金とした場合、年金は物価上昇率の半分の支給上昇率(マクロ経済スライド制)となっているのではなかったか。したがって1%の持ち出しになる。

浮いた住居費で資産運用を行って、老後に取り崩す、というプランもあるかもしれないが、それは持ち家派でも、家賃―ローン返済額のところで、運用は可能ではないか?

前提の置き方で、賃借派が有利になることも、依然ありえるかもしれないが、住居費が将来にわたって固定化出来ること、ローンの返済が住居費の前払いになること(ローン完済後も人生は続きますね)、ローンの支払いが資産形成にもつながることを考えると、少なくとも持ち家がこれまでの様に損する話ではないと思う。

それはこのブログの読者なら、誰でも知っているはずだ(ピーター・リンチさんは、資産運用は株を買う前に、まず家を買え、これが必殺運用法!という趣旨を述べていますよね)。

住居費以外でも社会保険料や消費税の負担増は、既に決まったものとした生活設計は必須だろう。つまり、固定費が上昇する前提で生活設計する必要性がある。一般的なサラリーマンで数十万円の可処分所得の減が大手証券会社の調査で試算されている(新聞でも出てましたね)。

あくまで最終的には、各人のおかれた状況や好みの問題だと思いますけど(そもそも少子化で、世帯数の増加が見込みにくい昨今、簡単に家賃が持続的に上がり続けるとは想像がつかないという思いも一方ではありますけどね)。

こんなことを考えているが、しばらくは長期金利動向とアベノミクスの浸透具合を確認しながらコトを進めることになるだろう。しかし、ここでもアメリカの雇用統計と失業率等は重要なポイントになってきそうだと思っている。アメリカの経済が躓けば、ドルと株を買い(念のために申し上げると、基本的に、結果的に私はいわゆるグローバル企業の株を買っているようです)、順調ならローンの借り換えを真剣に検討する、という具合かなあ?

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