上場企業の、いわゆる創業者(オーナー経営者)は、それはもう神格化といえば大げさ(西の方のエレクトロニクス関連企業はそんな感じになっている)かもしれませんが、その会社の全てを表している、といっても過言ではありません(未上場企業でも同じことは言えますが)。
一代で企業帝国を築いたその能力、リーダーシップ、ガッツなどどれをとっても尊敬に値すると素直に思います。
私も一時期、創業社長がいた上場企業に在籍していたことがありますが、社長=会社のようになっていました。ご本人はそうならないように色々気遣っていましたが(注:家業から社業にするために経営企画スタッフとして雇われていました)、結局はオレ=会社みたいな感じになってしまうんです。それが従業員も含めて楽だから(経営で最も重要な判断業務を一人にお任せしますし、幹部社員同士の議論も発生し得ない)。
もちろん、優れた参謀がいて、色々忠告・お諌めが出来るケースもありますが、三国志を見ても、曹操、劉備、孫権の3人とも権力のトップに立って安定してしまうと、部下の諌めを聞きませんでしたね(曹操は荀彧の進言を無視して王位に就き、劉備は趙雲らの反対を押し切って結局孫権に戦を挑んで大敗し、孫権も末期の世継ぎで乱心して陸遜が死んでしまった。そしてその後、この3家は勢いが衰えていきますね)。三国志の英傑ですら、こうですから、「水魚の交わり」のような番頭格のいる会社は非常に恵まれていると思います(しかし、「水」だった諸葛亮も結局劉備を止められなかった…)。
西洋社会においても「裸の王様」の童話がありますね。
権力の座に長く居座ると、「ワンマン病」になってしまうケースが多い。
創業社長のいる会社のよい点は、スピーディーな意思決定が出来て、時代の流れをうまく捕まえることが出来るため、先行者利益を得やすい点でしょうか?
そりゃ、「オレがやる」、と言えば、それを反対する人は皆無でしょう。上の3人の様にたとえ反対されても押し切ってしまうでしょう(成長期だと、まだ自信が完全に身についていないので、耳を傾けるのですけど、成熟期になると過信するのでしょうかね)。
他にもあると思いますが、これが一番大きいような気がします。
しかし、良い面があれば悪い面もあります。一代で上場まで持って行くためには、創業者の事業アイディア、時代の背景などが味方していることに違いはないと思います。したがって、創業からほぼ一貫して、基本的には「攻めの経営」で良かったはずです。中にはユニクロの様に、たとえ踊り場だと思われても、あえて攻めまくってその壁を乗り越えた例もあります。
したがって、仮に守勢に回るケースや潮流が変わり始めた場合に弱みを露呈する可能性が大きい。そういう時は、それまでやってきたことを一度自己否定して基盤を再構築しなければならないので、なかなか取り組みにくいことになります(サラリーマン企業でも簡単ではないですが)。ダイエー、西武などを見て思いました。
さらに2代目からがもっとも大変になります。攻めの経営のままで2代目(又は後継者)を迎えればよいのですが、高度経済成長から90年代ぐらいまでは一応何とか切り盛り出来ても、2000年代となると、国内市場の成熟化、グローバル化、円高など困難が出現し、「守り」に入らざるを得ない業界が多いように思います。そういったときこそ、創業時代のスピリッツが求められますが、そのスピリッツ(要するにワンマンでバシバシ意思決定して手を打って行く)は創業者だからこそできることで、ご本人以外は合議でやっていかざるを得ないというケースが多いのではないでしょうか?(中には某巨大小売業の様に2代目でも、絶大なる権力をお持ちの会社もありますけど)
しかし、いざ合議といっても、それまで「Yes」と言っていればよかった幹部社員に、考えろ・決めろ、といっても、元々そういったマインド設計になっていないと、ギアチェンジが難しくなります。
大経営者の後で「決められない経営」に陥ってしまったパナソニックやソニーを見ていると、そんな感じがします。早くから経営の一線から身を引いていたホンダとは違いますね。トヨタは創業家出身ですが、ああなってしまうと、ワンマンって感じでもなく、盛りたてるって感じ。自動車メーカーは多角化しづらいので、総合電機よりコアコンピタンスがブレないのでしょうね。
京都のメーカーには神様のように思われている創業者が何人かいますが、大阪の3大電機メーカー(パナ、シャープ、三洋)の失墜を反面教師化されるのか注目に値しますね。
サントリーなんかは比較的うまくいっているように見える。
権限委譲をスムースに行うのは創業社長の務めで、多くの心ある創業社長はそれに腐心されていると思います。しかし、「なんで俺に出来てお前に出来ないんだ」という感じになるケースも多く(そりゃ創業者だから出来るんでしょ、って部下は思いますが)、うまくいかないケースが散見されます(ユニクロなんてそうじゃない?柳井さんって、「俺の分身」の様な人か子息じゃないと結局任せられないんでしょう。バフェットもそれに近い)。
私のいた某企業(今は後継者を見つけて引退されています)も、「こんなリーダーが望ましい」という持論を散々聞かされましたが、当時の上司と「結局、俺のような社長をもう一人見つけろってことじゃない?」と話し合っていました。
出来る人ほど「任せる」がうまくできない(ロックフェラーは任せるのがうまかった)。
多くの創業者は、「もう一人の自分」が見つからず、結局子息に後継ぎをさせるのかもしれません(こういう弱みに付け込んで、財務省や日銀がオーナー系の地銀に公的資金の注入と引き換えに天下りポストを確保したりするケースもある)。
したがって、うまくいっている間はそれで良いけど、環境変化や組織の成熟度(ガバナンス、コンプライアンスとかを含め)が気になります。
そういった企業への投資がなかなか気乗りしないのはそういった理由からです。何となく「こんな感じの会社じゃないの?」と連想してしまって、気乗りしません。これまで散々オーナー企業をいろんな角度で見ている経験もあるかもしれません。成功すればするほど、それはワンマンだから…。
「騎手ではなく、馬に賭ける」(パットドーシー)、「船長ではなく、船の性能を見て投資する」(バフェット)を出来るだけ守るように心掛けています。素晴らしいビジネスモデルがあれば、創業者でも投資しうる。
創業者と言えば、アップルが今後、どういった経路をたどるのか、今後もアップルらしい商品が出てくれば、素晴らしいケースになりうる(しかし、今それが揺らぎ始めていますね)。
日本だと、小売業のしまむらの様な会社だと個人的にはいいですね(しかし、ウォルグリーンとかウォルマートの様な会社と比較すると配当利回りや配当性向が低くて、少し考えてしまう)。
創業者が経営する企業への投資は、その影響力をうまく見極めて投資する必要性がありますが、それが容易でないので、個人的にはあまり気乗りしないケースが多いです。
現在のポートフォリオではKinder Morgan 1社となっています(Fordは会長として君臨している。経営は基本的にCEOにお任せ)。
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