先週、日本が30年ぶりに貿易赤字になって、この赤字が持続するかも、という憶測を元に円安に振れました。
そのとたん、例によってマスコミは「日本も双子の赤字」とか、いよいよ「国債暴落」とか、「悪い円安」とか、恐怖を煽り立てました。
まあ、しかし、赤字の内容を精査しないといけないと思いますが、輸入のエネルギー増加は多分その通りだと思いますが、輸出の方はそもそも
- 価格:円高で売上代金が目減り(値上げ追いつかず、多分ドルよりウオン)
- 数量:新興国経済のスローダウンで輸出数量も減速
- 移転:海外にさようなら
- 競争力:海外に価格・技術・デザイン・マーケティングを含めた総合力で劣後(だから値上げできない。花王とか工業用化学品は円高分の値上げをしている)
といった要因が考えられるでしょう。これらが相互に絡み合っているのでなかなか特定しにくいかもしれませんが。
円安になれば、円ベースの手取り収入は増加しますし、原材料が値上がりしても、マージンが同じなら、残った粗利額は大きくなるので、やっぱり黒字要因になります。
したがって
「待望の円安到来か」
ぐらいの景気いい見出しが欲しかったですね。
もっとも、前回のFOMCでアメリカのFRBは当面金利を上げないだろうという観測がさらに強化され、さらにQE3という「切り札」を温存することに成功しています。したがって、日米金利差は向こう2年前後このままですから、85円を超えた円安は期待しないほうがいいように個人的には思います(個人的には円安になると、ものすごく恩恵を受けます。個人的な平均ドル円の変換レートの簿価の総平均は84円ぐらいなのです)。
一方、ユーロ圏は事実上のQEユーロ???に入っており(イタリアの国債を担保にして1%の融資をしてやるとヨーロッパ中央銀行が言ったやつ。5から7%の債券を担保に1%の融資を引き出す「錬金術」のようなばら撒き)、ユーロ安は当面継続しそうです。
ドル高
これは円安の裏返しとお思いでしょうが、さにあらず。対ユーロや新興国通貨に対して、ドル高が進んでいます。現在米国の決算発表が相次いでいます。
私の持ち株会社でも、現状のドル高が継続すると、EPS(一株当たり当期利益で米国の株式評価でもっとも注目される指標)の成長率が1から3%減速すると警告を発する企業が相次いでいます(IBM、ジョンソンエンドジョンソン、プロクターアンドギャンブル、アボットラボラトリーズなど米国外売上高が50%超の多国籍企業)。
日本企業が今まで辛酸をなめた円高不況と同じパターンが米国にやってくるかも?
- 上述の通り、ユーロはジム・ロジャーズに言わせると「Just Printing the Money」の錬金術ゾーンにあるかもしれません(相対的なドル高)。
- 新興国は利上げが一段落しつつある(したがって投資通貨として魅力が減退)。
- 米国の経済成長率が加速化してきましたので、ファンダメンタル的にドルが強い状態。
ただし、切り札QE3を持っているので、どこかでズドーンといくかもしれません(その場合は押し出されるように円高じゃないのかなあ?)。
プロクターアンドギャンブルの決算で、先進国での売上高が芳しくなかった(他社に先駆けて値上げしたこともあるが)。北米も数量が伸びなかった。
アメリカ経済の回復は、もうちょっと様子を見る必要があるかもしれません。買い控えしていた家やクルマは回復傾向にありますが(というか今までの落ち込みが凄すぎた)、あっちの人ですら最寄品の値上げに抵抗している感じがあり、企業もQE2で受けた原材料高をカバーできる価格転嫁には、現時点では苦戦しています(P&GとJNJだけで判断できないが、コルゲートやクラフトフーヅも同様らしい)。
企業収益は上記の安定業績企業はやや踊り場状態です。金融とか工業とかは業績のアップサイドの余地が残っていそうですが、「アメリカ企業」と一括りで評価しないほうがよいでしょう。
とはいっても結局、自分の投資戦略に影響を及ぼしませんが・・・。とりあえず週末の雇用統計を見守りましょう。「ソフトパッチ」になるかもしれませんね。昨年の「ハードパッチ」はやめて欲しいなあ。
(注:リーマンショック直後の2008年第4四半期はすべての落ち込みが激しすぎたため、その後の米国の経済指標が歪んでいるのではないか、という説があります。失業率や雇用統計を例にとっても、季節調整を行った数値を発表しているとのことですが、上記の落ち込みの激しさを考慮に入れない数式になっているので、少し回復しても、第四四半期の数値が実態以上によく見える現象がある、という英文記事を読んだことがあります。みんなが楽観気味なので、昨年の第4四半期の数値は少し慎重に見たほうがいいかもしれません。あくまで私見ですけど)
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