2013年7月14日日曜日

どんな投資本を読むのか お勧め書籍 その4 富者の集中投資、貧者の分散投資

富者の集中投資貧者の分散投資
富者の集中投資貧者の分散投資
著者:フレデリック・R.コブリック
価格:2,940円(税込、送料込)
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これはしばし、ブログでお見かけします。
もっとも、私は分散投資派です。
 
著者のフレデリック・コブリック氏はハーバードのMBAを卒業後、ウエリントンマネジメントという名門投資信託会社(バンガード創立前のジャック・ボーグルや逆張り投資家のジョン・ネフも在籍)に在籍後、もう1社投信会社を経て、独立。今は何をやっているのか、残念ながらちょっとわかりません。1971年にウエリントンにアナリストとして入社し、2004年ごろまでファンドマネージャーとして活躍されていたようです。したがって、オイルショックも強気相場もITバブルもみな経験されています。

著書で書かれている実績は目を見張るものがある。ウォーレン・バフェットが買わなくて(あるいは利食いを早まって)後悔した銘柄を買って、大きな実績を上げている点は特筆ものだと思います(ウオルマート、マクドナルド、ディズニー、インテルなど。バフェットはインテルを後悔していないが、設立時に出資依頼があったのに断っている)。
 
また、ピーター・リンチはテンバガー(10倍株)がポートフォリオに1つあれば市場平均を上回る、と言っていたが、コブリックは10倍なんてチョロく、50倍、100倍まで上がった株を多数保有していた(転職や独立をしているので、何十年もホールドすることはなかったかもしれないが)。
 
NIKE、サンマイクロシステムズ、デル、シスコ、マクドナルド、フェデックス、アマゾンドットコム、ガースナーがCEOになったIBM、ギャップ、ホームデポ、アムジュン等。こういった銘柄がもっとも成長していた時期に(成長する前から)保有していたというのだから、素晴らしい、のただ一言。
 
業種は何でも来いで、特にITバブルで上手く稼げたようだ(もっともITセクターには80年代から注目していたので彼は、IT企業への目利きも確かなものがあった)。

IPO時にシスコの株を買って、ITバブルの前に売り抜けたという、多分こういった人は世の中に2人はいないだろう(但し、筆者もシスコ売却代金を他の小型IT株に分散投資した後にITバブルが崩壊して、結局かなり資金を失ったようだ)。
 
しかしながら、日本では?(アメリカでも?)その名声はウォ―レン・バフェット、ピーター・リンチ、ビル・ミラー、ジム・クレイマー、ジョン・ネフ、ジョン・テンプルトンといった面々よりも低いのがやや謎である(アメリカでは彼のマネージするファンドが何度も優秀賞を獲得しているが)。

もし、コブリックが、テンプルトンやネフの様に同じファンドでずっと運営を継続していたなら、その生涯リターンは彼らとよい勝負になるのではないか、と想像してしまいます。

(逆張り系と成長系では同じ土俵になりませんが・・・)
 
 
この本は、会社の経営を全体的に把握して、投資ストーリー重視の銘柄選択アプローチと売買に必要な心構えというか、ルールについて、自らの投資体験談を上述の「偉大な企業」を基にケーススタディとしてまとめています。銘柄を選択するための本です。成長株投資を志向する人に、化ける会社の見分け方を教えてくれます。繰り返しますが、IPO時にシスコを買って、ITバブル崩壊前まで保有していたんですよ!!! アムジュン、ホームデポ、デルもIPO時に買ったそうです。

 
彼の言う「偉大な企業」にはBASMのルールがあって、その選択基準をクリアした銘柄を保有し続けるそうです。以下は私の見方も混じっていますが、こんなことを言っています。
 
1;BBusiness Model(ビジネスモデル;どうやって効率的に利益を稼ぐ事業なのか)

2;A: Assumption(市場分析。特に経営者が市場をどう見ているか)

3;S:Strategy(その市場で効率的に稼ぐための方法)

4;M:Management(良いアイディア、テクノロジー、戦略を実行できる力。またそれらを再現していくことで、持続的な成長が実現できる能力。つまり、自分で自分の運命を決めることができる企業に育成できる経営者か?)
 
そして、知識、忍耐、規律を持って、シンプルなベンチマークで銘柄をモニタリングして、決して感情やマーケットタイミングにとらわれずに売買を行うべし、とアドバイスしています。
 
知識というのは、その企業で何が起こっていて、なぜそのようなことが起こったのか、それは彼らのBASMに照らして妥当な判断や結果だったのか、ということを常識に照らし合わせて考える、といった感じ。如何にその企業のことを理解できているかが問われる。

これは、成功した投資家(例:ジム・ロジャーズ、ウォ―レン・バフェット、ピーター・リンチ等)が皆、「投資対象をよく理解すること」と言っているのと表面的には同じだが、コブリックの知識はもっと奥が深い。

1970年代前半にマクドナルドを取材した際に「琥珀の間」という部屋に通されて、なぜこんな部屋を作ったのか、と問いただすと、琥珀色の空間の中で物事を考えると、想像的で斬新な考え方が出やすいと心理学者が言ったから、という回答が返ってきたそうです。それで、この会社は偉大な戦略を実行するための努力を惜しまない本物の会社だ、と思ったそうです。

当時のマクドナルドの戦略は今やチェーン店では当たり前になった、マニュアルに基づく業務運営品質を徹底的に管理して、大量出店で安いハンバーガーを届ける、というビジネスモデル・経営戦略でした(今もマクドナルドの基本戦略は同じですね)。それをどのように展開していくのかを琥珀の間で考えていたんでしょうねえ。

 
また、シスコやマイクロソフトでは、「顧客は最高の技術を望んでいるのではなく、最高でなくてもいいから、使い勝手のいい製品(適切なテクノロジー)を望んでいるはずだ」という顧客のニーズを突き止め、テクノロジー以上に顧客との信頼関係に重心を置いた経営戦略を高く評価していました(日本企業が聞くと、いまでも耳が痛い話ではないでしょうか?)。

こういった企業の戦略やビジネスモデルの根幹を理解したうえで、株を保有し続けているので、多少株価が下がったところでも、売らずに、出来ることなら買い増しを行って、利益を増やすことが出来たそうです。

また、こういった「顧客重視」の考え方で成功していた種子会社やコネクター会社の成功を80年代から知っていたので、成功する企業の共通事項(つまりBASM)をみつける成功体験をたくさん積んでいたことがITブーム時にうまく投資出来た基礎となっているようです。つまり、経験を積んで(成功や失敗を積み重ね)、学んだことを次に生かす、という長期投資のもう一つの側面を強調している様に思いました。
 
忍耐とは、いったんこれと決めた会社には数年(3から5年)は見守って、経営者が投資家と約束したことが出来るか見極めよ、というのが趣旨(もちろん、投資早々に経営者がダメとわかれば売ってもよい)。

NIKEに投資した際、あのマイケル・ジョーダンをCMで起用して、「エア・ジョーダン」シリーズを発表して大々的なマーケティングを行ったため、一次的に費用がかさみ、利益が落ちたことがあったそうです。しかし、NIKEはナンバーワン・スポーツシューズメーカーになる野望があるし、実行力もあると判断して保有し続けたら、ご存じのとおりの今のNIKEになりました。この時も株価は利益が落ちたので、一次的に40%ぐらい下がったそうです。逆に下がった時に買い増ししたようです。今なら、納得感がありますが(ジョーダンがどんな選手か知っていますからね)、当時の基準からすれば、どうだったのか、やはりリスクがあったのではないでしょうか?
 
規律とは、売買の時にあらかじめ原則を作っておき、その原則に抵触したら売買をとりあえず考えるというもの。原則である以上例外もあるのですが、例外を如何に採用するかは、経験次第なので、すぐに真似するのは難しそうです。
 
利益が落ちた時、成長率が低くなった時、経営者が言ったことを実行できなかったり、更迭された時が「売りの規律」で、原則株を売却する。
 
IPO時にどの会社が偉大な企業になるのかは、区別が難しいので、とりあえず少し買って、上記のポイントを基準に観測して、特に常識に照らし合わせて、これはダメだな、と思えば売る、という感じだそうです(基本は経営者が、自らの業績や経営方針をわかりやすい言葉で伝えることが出来ない、要するに投資家をけむに巻くようなことや、約束が果たせなかったら売る)。
 
したがって、知識・忍耐・規律がしっかりしていれば、決して一時の感情に流されずに売買が出来るはずである、と言っています。熱狂で買ったり、ヤケクソで売ったりするとお金を失う。
 
マーケットタイミングとは、相場はいつもボラティリティが激しく、いつ株価が上がるのか、下がるのかを事前に知ることは不可能なので、相場を読んで株を売買してはいけない、と言っています。ちょっと耳が痛いですね。
 
こういった投資が出来ればいいなあ、と憧れるファンドマネージャーの一人です。
 
 
この本は何度読んでも、「ああそうだったのか」と思わされる本です。この本に書いてあることが自然に出来るようになるまで、さらに時間を空けて何度でも読み返していく予定です。私にとっては、そういった本です。つまり株式投資の教科書の一つ。

これをマスターするには、それなりの経験が必要になると思います。しかし、知っているのと知らないのとでも差がつくと思います。つまり、できそうなことは、できる範囲から真似ることかと。
 
彼は、投資家に大きなリターンをもたらす「偉大な企業」は、「初めての商品発売・初めてのテクノロジー」とか「最高のテクノロジー」を持つ企業ではなく、ビジネスモデル・経営戦略を適切な前提で、優秀な経営陣が実行し、その成功を再現でき、結局は自分の会社の運命を自分で決めることができる企業である、と何度も本書で述べています。

 
マクドナルドはハンバーガーを発明したわけではありません。スターバックスもコーヒーショップを初めて開いたわけではないのは、みなさんご存じでしょう。

NIKEはジョギングシューズ・スポーツシューズを発明していません(NIKEの創業者である、フィル・ナイト氏は、NIKEのビジネスを始める前はアシックスのアメリカ代理店を経営していたのだ!!! したがって、2社の差は商品とか技術ではないという日米企業の典型例なように思いました)。

 (日本にも、しまむら、とか、良品計画などいい企業はありますが、株価が高い・配当利回りが低い、など投資基準になかなか合致しない。よい会社はすぐにFull Valueされる)

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