2014年6月7日土曜日

ケン・フィッシャー「MARKET’S NEVR FORGET, But people do」 を読んで




ケン・フィッシャーという人は、こんな人です。前記事を読んでください。↓


この本(Market Never Forget…)は1年半ほど前に買って、「積読」状態だった本を引っ張り出して読んだ本です。
「たった3つの疑問」を読んで、もう一冊ほど読みたいと思って買いました。
New York Timesのオンラインショップでベストセラーになった、と評判も高かった。しかし、日本語訳は発売されていないと思う。

結論から言えば、「たった3つの疑問」の続編のような本です。前書では、2006年までのデータで書かれていましたが、本著はリーマンショック以降(2010年程度まで)のデータが加味されています。それでも彼の主張は一貫しています。

この本、言いたいことは、

将来何が起きるかは、過去から予言できるものではない。しかし、(株式相場では)過去に起きた事実は、大変参考になる。過去の出来事は今起きている、政治・経済事象に照らし合わせ、そのうえで意思決定すると、よりよい投資の意思決定ができる確率が高まる。

それがわかれば、投資の世界で優位に立てるはずだ。投資とは可能性に賭けるゲームではなく、確率に賭けるゲームなのだ。過去の相場を知ることは、確率を高めることができる
といった感じでしょうか?

出版時期が2011年なので、景気回復局面で、弱気専門家がよく予想するようなことも、過去の歴史に照らし合わせると、そのような予想はほとんど起こっていない。これをデータや当時の新聞や雑誌の記事などから列挙して、証明しています。

但し、彼も自分が100%正しいとは限らないが、投資とは6割程度正しければよい成績を残せるはずと言っています。この本に書いてあることは、過去の事実から考えると7割程度は、当たる確率があるような事象です。


さて、具体的にどんなことが書かれているかと言えば(あくまで私の解釈です)、
  • New Normalは新しくなく、Old Normalだ(不況の後で、同じことが毎回言われている)
  • 「平均」に惑わされるな(あくまで平均で、相場は単年度では激しく変動)
  • 株式相場とは(昔から)ボラタイルなものなのだ(しかし、長期的なリターンは最も高い)
  • 長期にわたる弱気相場なんてない(ベアマーケットラリーなんて存在しない)
  • 負債と赤字の思考(政府債務は経済によい)
  • ずっとアウトパフォームするセクターやカテゴリーはない(分散が大事)
  • 政治と株式相場(大統領選挙と株式相場)
  • 昔から経済はグローバルだったんだ(世界大恐慌時代もグローバルな株式相場だった)
こんな感じでしょうか。全部は書ききれませんが、内容は以下、こんな感じです。


New Normalという概念を覚えていらっしゃるでしょうか? ひどい不景気に見舞われたアメリカは今後、これまでのような力強い経済成長は望むべくもなく、低成長でしか成長しないんだ(なぜなら人口動態が云々・・・他)。 と言ったことが、2009年から2010年にかけて言われていましたね。

さて、今そんなこと言っている人はいるでしょうか?

実は、New Normalという概念、1939年の大恐慌後、1959年、1978年、1987年(ブラックマンデーのあと)、2003年と度重なって、アメリカでは言われていたようです。したがって、この本では、皮肉って、Plain-Old Normalと言っています。株価がどのように推移したのか、皆さんお分かりですね。

また、最近はコンピュータの自動取引やデリバティブ、信用取引が盛んで、相場のボラティリティが高くなった、とよく言われます。

しかし、株式相場とは、インターネットやコンピュータが発達する前から、相場変動が激しいボラタイルなもので、今に始まったわけではないということもデータでしっかり分析されています。特に1929年~1945年の方が今よりボラタイルだったようです。

また、2009年、2010年などは、株式相場が上昇しても、「これは弱気相場の中のベアマーケットラリーにすぎない」と言ったことがまことしやかに言われました(2番底が来るぞ、とか)。
しかし、誰が言っているのかに耳を傾けると、債券相場で頑張っている人(例:ビル・グロス)が言ったり、万年弱気派の学者だったり(例:京都の髪を紫に染めた派手な女性学者とかルービニ教授とか)、日銀や財務省出身者で、インフレになったり過去の経済政策が否定されると困る人たち・御用学者・・・等。

しかし、弱気相場はせいぜい2年程度しか続かないのに対し、強気相場は5年以上続くため、それを念頭に入れれば、「調整局面」(株価が急激に10%程度下落して、すぐに再上昇するパターン)はあっても、景気が2番底になったことは第二次大戦後、1回しかなく、株価は一旦反転したら、強気相場に賭ける方が勝率は高い。

1991年にも「2番底」が来るぞ、と言われたようですが、それから5年後、世紀の強気相場(バブルでしたが)がスタートしたことは記憶に新しい。
政治と株式相場では、大統領選挙や大統領就任後の株式リターンのパターン(就任3年目は株価が上がりやすいとか)よく言われるやつですね)と、


共和党候補と民主党候補のどちらが選挙戦を制したか、と株式相場のパターンなどが書かれています(面白いことに、共和党候補が勝つと、その年の相場は良いが、翌年よくない。一方、民主党候補が勝つと、選挙の年はあまりよくないが、翌年は非常に良いリターンの年が多い。したがって、共和党候補が勝ったからと言って、経済フレンドリーな人と決めつけずに、次の年は慎重になった方がいい、とかそんな内容)。

など等です。

この本の効果は?

知っていると、目の前のうるさい「プロの声」を自分の頭の中でうまく処理できるようになるでしょう。そして、機関投資家が買いに入りにくい弱気局面で、より自信を持って、投資に臨めるようになる可能性が高くなります。

 上記のような事象は、過去の米国相場で何回も繰り返し発生しています(それをデータで証明しています)。しかし、人間はその局面になると、過去にあった出来事を思い出せず、同じ過ちを繰り返しているのです。このことをケンは、「Market Never Forget, but people do」と言っているのです。

人間はどうしても足元の出来事の延長線上に未来を見てしまうものなのです(無理もないが)。

この本でも、ケンは盛んにジョン・テンプルトン卿の話を取り上げています。今回は、「The four most expensive words in English language are, “This time is different” とテンプルトン卿は言ったそうです。

しかし、It's never different this time.とケンは言っています。

This time is differentは強気相場のてっぺんでもしばし聞かれます。インターネットバブル崩壊前によく言われましたね。



ケンの英語は、口語的な表現が多いせいか、なかなか難解でした(いつも分かりづらいですけど)。私は本の要旨部分程度しか理解できていないと思いますので、細かく突っ込まれると、わからない部分もあるかと思います。ご容赦を。しかし、皮肉いっぱいの彼の表現は好きです。

彼は、相場で過去に起こったことを基に、「こうなるだろう」 と盛んに、本でもインタビューでも、雑誌記事でも言いますが、彼に言わせると。「みんな信じないんだ」という事になっています。

効率的市場仮説によると、だれもが勝てる投資法やストーリーがあれば、瞬時に市場に織り込まれてしまうので、結局そのような投資法やストーリーは存在しない、という事になっていますが、ケンに言わせると、あっても市場が信用しない(自信過剰もあって、自分の考えに固執する)ようです。
ちなみに、彼はここ20年近く、対市場平均では3年程度しか負けていなかったと思います



私はマクロ相場の羅針盤として、彼についていきたいと思います。


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4 件のコメント:

  1. とくめいせんたい2014年6月18日 11:35

    いつもお世話になっております。PMがここ数年業績がよかったのはリーマンショック後の不景気によるもので、もしこれからアメリカが空前のバブルになると仮定すると、米金利の急騰や新興国通貨安で、債務超過かつ新興国売上が多いPMは利払い費用の増加と為替損失によって業績不振に陥る可能性が高いと思いますが、いかがお考えですか?

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    1. とくめいせんたいさん
      アニュアルレポートをご覧いただければ、PMの借入金の金利は固定が大半ですので、利払い費用の増加は考えにくいです。ドル、ユーロ、スイスフラン建てと為替も分散されています。

      PMが債務超過である、とお考えかもしれませんが、債務超過の原因は業績不振だからではなく、自社株買いが要因です。私や他の普通の投資家は、PMの株主資本が過少であることをそんなに気にしていないと思います。

      PMの価値は自己資本にあるのではなく、CFの安定性にあります。CFの安定性を担保するのは、たばこという嗜好商品とその価格決定力にあるからです。
      アニュアルレポートをご覧いただければわかると思いますが、「債務超過」の企業がこんな低い金利で借り入れができるとは思えません。すなわち、CFの安定性の方が評価されているからだと思います。

      したがって、CFの安定性を脅かすビジネス上の理由があれば「業績不振」に陥るリスクが高くなると考えられます。現時点ではそのような兆候はあまり見受けられないと個人的には思います。
      為替に対する投資家の懸念は今の株価にある程度織り込まれています。

      トヨタも本田もあれだけ円高になっても、今ちゃんと企業として存在していますね。PMは、財務的にトヨタ・ホンダ以上の安定性があるはずです。

      私はアメリカが空前のバブルになるとは当面考えておりませんし、アメリカの景気がよくなればPMの業績が(それほどひどく)悪化するとも考えておりませんので(アメリカ経済に引っ張られて、新興国も恩恵を受けると考えています)、ご懸念の件に対する想定はあまりしておりません。

      現在の株価の水準には正直、満足しておりませんが、まあ我慢しています。

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    2. とくめいせんたい2014年6月18日 22:11

      詳しい分析大変ありがとうございました。
      さすがアニュアルレポートで細かく研究なさってるので、低金利とか固定などの情報もしっかり把握しておりますね。
      おっしゃる通りそのような状況では、あまり心配はいらないかもしれないと思いました。

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    3. 投資は自己責任でやって下さい。

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