主力株にジョンソンエンドジョンソンがある。また、旧アボット・ラボラトリーズの医家向け医薬品事業だったアッビイをスピンオフ以降ホールドしている。
更に、昨年沢井製薬を新規で買った。
ポートフォリオ全体から言えば、これらのヘルスケア関連銘柄は1割弱のウエイトである(今後さらに買い増し、あるいは新規の可能性もある)。
ジョンソンエンドジョンソンの「レミケード」、アッビイの「ヒュミラ」といったバイオ薬は、特許切れに差し掛かっている。実際、「レミケード」の特許は日本でも切れた。
特に「レミケード」は日本の旧田辺製薬が創薬にかかわっている。
また、「ヒュミラ」(ミにアクセントがあるような発音)はアッビイの売上高の6割、利益だとたぶん8割以上をたたき出す。
更に、品目別の医薬品の世界売上高では、2013年に世界トップとなっているはず(1医薬品で1.4兆円以上の売上だがあるんですよ!!!)
したがって、バイオシミラーの動向は結構気になっています。
そもそもバイオシミラーって何?
医療向け医薬品には先発薬と後発薬というくくりがあります。前者は上市された段階で、製薬会社が特許を持っているため、当該特許保有企業が独占的に販売できることになっています。
特許が切れると、欧米では即後発薬と言って(ジェネリック薬・GEと言ったほうが早いかな)、同じ薬(薬の効き目が同じということ)を別の会社が作って、販売することになっています。
GEは先発薬が費やした研究開発コストが抑制でき(すでに有効性と安全性が確立されているから)、低価格で販売できます。
患者にとって、いや、保険会社にとって、同じ効き目で安い薬があるのなら、そっちを使うことは当然のことなので、先発薬は役目を終える、ということになっています。
このGEのバイオ薬版がバイオシミラーと言われるものです(similarという表現がミソ)。
これは従来の低分子薬とは違い、バイオ薬は遺伝子の組み換えや細胞を大量培養などのいわゆるバイオテクノロジーで作られた薬であり、細胞ごとに個体差が生じてしまい、まったく同一のものになりえない、ということから来るようです。
したがって、治験や承認審査も、通常のGEよりも、新薬に近い形で行われています(要するに人体実験のサンプル数を通常のGEより増やすということ)。
低分子薬の場合、GEが発売されると、先発薬はあっという間に売れなくなります。アメリカのアナリストによると、GEが発売された月の翌月から3か月で、対前年同時期で比較すると、平均で先発薬の売上高は75%減少し、1年後には数%まで落ちるようです。
日本では、特許が切れた後も、「長期収載品」と呼ばれ、単価はダラダラと下がっていくものの、これまで通り処方されているのが現状でした(しかし、政府のGE促進政策が徐々に効いてきて、長期収載品の売上高が落ち始めています)。
ではバイオ薬のGE版であるバイオシミラーはどうなるのでしょうか?
そもそもバイオ薬は高い!1回処方されると、数万円から数十万円、中には数百万円のものもあります。
しかし、高くてもそれだけ効く薬でなおかつ、患者にとっては欠かせない薬である場合が結構多い。したがってこれまでは、患者さんも高額の負担をしている、という流れ。
ちなみに「レミケード」も1回30万円ぐらいするらしい。
それがGEになるとおおよそ6割(4割安)になるので、18万円になるということ。
但し、これは保険適用「前」なので、保険適用後は日本のサラリーマンだと普通は3割負担になりますから、30万円→9万円、18万円→5.4万円という事になるんじゃないでしょうか(かなり大雑把な計算です)。
「レミケード」「ヒュミラ」はリウマチ、乾癬など、自分の免疫機能が正常機能を誤って攻撃することから痛みや皮膚炎などを発症する自己免疫疾患に対し、外部から抗体を注入することで、自己免疫の機能を正常化させる役割があるといわれています。
まあ聞いただけで、わけがわかりませんね。しかし、リウマチや乾癬はそう簡単に完治しないので、治療を継続しなければならない。ということは「レミケード」「ヒュミラ」を長期間服用しなければならない(月に1回~2回投与する必要性があるそうです!! 但し、高額療養費制度というのがあり、毎月所得に応じて、一定以上の医療費が嵩むと、保険で肩代わりしてくれる)。
要するに、かなり重度な疾患でバイオ薬は適用されることが多い。薬剤費は高額になる。長期間の治療を余儀なくされる。
したがって、バイオシミラーは救世主になるかもしれない(特に保険支払人にとってですけど)。
しかし、患者や医者は、「安いのはいいけど、ホントに大丈夫なの、それ?」というのが本音である。
先ほども「similar」と表現した通り、先発薬とまったく同じではなく、同じシミラー内でも品質が同一であるかも疑わしく、そもそも「実績がない」薬です。
今まで「レミケード」で安心していた患者さんにとって(特に高齢者)、「まあ、レミケードに似たような薬ですけど、こっちにしませんか?」と言われても、そう簡単に了解しづらいのではないだろうか?
「実績がない」薬を慎重な患者さんに医者も進めにくいのではないでしょうか?
そんな感じが医療現場であるといわれていて、バイオシミラーは現時点では「様子見」状態であるといわれています。
但し、医療サービスというのは他のサービス業とは違い、受益者たる患者さんが直接費用を負担するのではなく(最高で3割ですから)、医療費支払人は政府ですから、その「政府の意向」が強く反映されており、政府が本気でGEを普及させるといっているので、注目されています。
「レミケード」の使用頻度が高い大病院は取りあえず、バイオシミラーを入荷した模様です。現状、バイオシミラー販売元の日本化薬では、立ち上がりは計画より少し売上高は低い、と言っているようですが、注目度・関心度は高く、引き続き積極的なプロモーションを続けるといっているようです。
日本はこれでもまだまだ甘い方で、フランスは、先発薬にこだわるのであれば、「先発薬―GE薬」の差額には保険は適用いたしません、自分で勝手に払ってください、という姿勢です。
アメリカも医療費を負担するのは、民間の保険会社ですので、「株主様のお金は効率的に使わなければなりません。だからGEが出たら、GE以外の薬に保険は出しません」とドライに扱われているようです(ただし、バイオシミラーは、メガファーマの政治力のおかげで生物学的論争が続いていて、バイオシミラーに否定的な意見が根強い)。
今後日本も同様の風潮が(日仏に比べるとスピードは緩慢ながらも)進むとみるべきでしょう。
つまり、レミケードのバイオシミラーでも大丈夫じゃないの? という実績が積みあがって来れば、浸透する素地はありそうです。もう少し時間がかかるでしょう。
また、バイオシミラーの生産設備も韓国企業が握っており、供給能力もそう簡単に追いつきそうになさそうです。
それでも時代の流れからすれば、時間をかけてバイオシミラーは浸透するとみるのが妥当ではないかと考えられます。どれぐらい浸透するのか、それはまだわかりません。
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