日経新聞の電子版 2020年10月5日の記事
住宅ローン完済年齢上昇 平均73歳 年金生活不安定に 審査、老後リスク吟味必要
記事の内容はご多分に漏れず、将来のローン破産予備軍が増えているのではないか?という警笛を鳴らす類のものです。
出所:日経新聞電子版より |
融資を受ける年齢も37歳~38歳だったのが、今は40代だそうです。
60歳を超えて住宅ローンの残高が1000万円を超えていると「老後破産予備軍」だそうです(笑)。
日経新聞の記事の前提は、「ローンは最小限に所得の無理のない範囲でつつましく借りること」「借りたローンは最後まで完済する」をといった価値観が「隠れた前提条件」になっているように思いました。
ちなみに私は2007年に住宅ローンを40歳で組みました。当初の完済時年齢は75歳でしたよ(最長35年で組みました)。
ローンは3900万円でした。今は半分以上返済しています(繰り上げとか使って)。
人生で最も高価な買い物である自宅なので、それなりのリテラシーはあった方がいいでしょうね。
仮に2000万円を金利2%で35年借りた場合(2000年当初の店頭レートがこれぐらいじゃないか)、35年の元利総返済額は2783万円となるようです。
一方、3000万円を金利0.5%、35年で借りた場合(昔と違ってネットが発達してこれぐらいで調達は可能ではないか)だと、3380万円程度となる。
もちろん全期間上記の金利で調達できるとは限らないが、それはいずれのケースでも同じ。
融資残高の違いは、金利の低下で半分程度は解消できる(だろう)。
融資残高が多くなった理由は、不動産価格の上昇によるものでしょう(都市部)。私の住んでいる街では新築マンションは私が契約したころ(2006年春ごろ)と比べて、坪単価ベースで1.7倍近くも上がっています!
金利が下がったから住宅価格が上がったのか、需要が強いから上がったのか、どうも前者のような気がしてなりません(東日本大震災では、軟弱地盤と相当叩かれましたね)。
完済時年齢も5年延びた、とか言っていますけど、政府も日経新聞さんも「70歳まで働け」運動を推奨しています。1998年までは60歳定年、2000年で65歳まで雇用確保措置の努力義務、2013年以降は65歳までは雇用希望がある者は企業側に雇用義務あり、となっているようです。
(2000年当時でも、定年後にローンが残る設定だったはずでは?つまり定年や実質的な労働年齢の高齢化とローンの平均完済年齢の伸びは相関性があるんじゃない?)
2000年当時と違って、
①住宅価格の下落に歯止めが(今のところ)かかっている、
②リバースモーゲージ(ローンのなくなった自宅を担保に銀行から生活資金を借りて、その代わり死んだら自宅は銀行に譲渡するようなイメージ。したがって一定の老後資金の調達が可能)などが可能、
③ネットの発達で住宅ローン利用者のリテラシーが向上(臨機応変な繰り上げ返済、借り換え、金利管理など)、
④税制面でも親からの無税贈与資金枠の拡大、
⑤共働き夫婦の増加による世帯収入の増加(連帯債務などとしている場合は除く)などのプラス面も考える必要があるでしょう。
ローン借入期間を長期で設定するのは、「期限の利益」という概念が借り手側にあります。
つまり、最終返済期限まではローンの貸し手(銀行等)は、自分の都合だけで「35年で契約したけど、やっぱり20年で全部返してください」とは言えない契約になっています(当たり前すぎて議論されていないが)。
一方、借り手は35年間の間、月々返済以外に、早めに返済したり多めに返済したり、返済の自由があります。
長期間の設定でライフステージに合わせた柔軟な家計が組めます。退職金で一定程度返済が可能ですね。
ローン、イコール、「返さなくっちゃ」と一辺倒に考えるのではなく、自分のライフスタイルに合わせ、戦略的に借りた資金の活用を考えるようなリテラシーを持ちましょう。
(えっ? ローンを早期繰り上げ返済せずに株式投資で稼ぐ?? 投資判断は自己責任でお願いします)。
いずれにせよ、住宅ローンというより自宅の取得は、時期・目的・将来設計・所得予想など戦略的で計画的な取り組みを行えば、決してネガティブなものではなく、ライフスタイルをより充実したイベントだと思います。
この手の記事は、「定年過ぎてもローン払うんか?」という意見と、「70歳過ぎても働けるじゃないか」という意見、あるいは「人生100年を見据えた計画的な家計を」という意見が別々の記事でその各論だけが語られます。
仮に人生100年、70歳まで働くのであれば、完済時年齢73歳でも問題ない気がしますね。70歳前後ではおそらくローン残高は相当減っていますから、仮に働かなくなった場合、自宅を売却して賃貸に住めば、自宅売却代金で余生を住宅費ゼロで済むじゃないですか? 持ち家と賃貸をミックスした生活設計もありますね。
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