あのSONYがEV(電気自動車)事業への参入を表明しています。
ソニーモビリティという子会社を設立したようです。
結論は、多角化すぎてかなりしんどいのではないですか? ということです。さすがにクルマですから。もっとも個人的にアンチコングロマリット経営論者なのでバイアスがあるかもしれません。TESLAの成功があるとはいえ、あちらは天才カリスマ経営者に率いられたEV専業会社です。
ただし、Apple、Googleや鴻海も参入を表明していて、ソニーにもできるでしょ、ということかもしれません。何しろ先進国も新興国も「環境」ブームでEVには追い風です。
またソニーも業績が回復してきて、攻めの姿勢が強くなっています。かつてはPC事業や電池事業の売却など守勢でした。
ソニーの過去10年の業績と株価推移です。業績に関し、売上高はこの間多少の凸凹がありますが、CAGRで3.7%の成長と堅調、営業利益は12年3月期の赤字は別として、13年3期から見ても22年3月期は約6倍と飛躍しています。
さすがに現CEOが財務畑(CFO)だったことがありますね。
ソニーのセグメント利益の分布です。ゲーム(Play Station他)、音楽(ソニーミュージックエンタテイメント)、映画(ソニーピクチャーズ)、エレクトロニクス(AV、ビデオカメラ、スマホ他)、半導体系(イメージセンサー)、金融(ソニーフィナンシャル)となっていて、今はゲームが稼ぎ頭のようです。
「EVデキル派」から見たら、AV機器から音楽・ゲームもできるし、①モノづくりノウハウあり、②EVに重要な半導体あり(といっても自動運転に必要なセンサー系(例:カメラを動かすとか)なんだが)、③これまでもロボットもあるし、自動車を販売するのに必須のローン(金融)、保険(自動車保険)などそろっているが強みだ、ということのようです。
生産はアウトソーシングでも、自前でもモノづくりはわかっている、と。
私見ですが、とはいっても、自動車をテレビやスマホのように考えるべきなのか疑問です。これはEVになって、部品点数(特にエンジン回り)が激減するし、自動運転で制御技術もアップするので、従来のノウハウ系のモノづくりではなくデジタルになる(テレビやパソコンの生産のようになる)から大丈夫とは言っても、安全性とか、過酷な天候に耐えられるのかとか、そもそもディーラー網をどう整備するのか(現在の日本ではメーカー系列になっている)など参入障壁は高そうです。
私はAV製品の多くがソニー製という、どちらかと言えばソニーファンなのですが、例えばホンダは今後6年で約1兆円を電動化開発として計上するようです(ざっくり年間1700億円)。
ソニー全体の研究開発費は例年売上高の6%弱程度のようです(年間5,000~6,000億円)。仮にホンダ並でもつぎ込めば、この6000億円にさらに1700億円近く注がねばなりません(すでに自動車製造のプラットフォームがあるホンダと同額でいいのかという点も疑問)
コングロマリット経営の常として、ゲーム、映画、AV機器から半導体さらにはEVと専門性が違う事業がズラッと並べば、経営陣は迅速な意思決定ができるとは思えません(迅速な決定ができたとすれば、それは「めくら判」を押すようなものかもしれない)。
マイクロソフトはゲーム会社買収に7兆円以上を注ぎました。
一方、ソニーも同時期にゲーム会社を買収しましたが4000億円程度?でした。
マイクロソフトに逆転されるのでは?(もちろんM&A額が大きければいいというものでもないが、会社がその事業にコミットする度合いを測る物差しとしては使えそう)
金融事業も1600億円程度の営業利益を安定的に計上していますが、この程度の利益は金融業としてはいかにも中途半端です(オリックスの半分程度)。
イメージセンサはシェア1位(といってもサムソンが本気で投資してくれば、どうなるのか、と思う)ですが、音楽、エレクトロニクスなどやや中途半端な気がします。
現在の事業の優位性をキープし深化すべきだと思いますが、EVに事業領域を広げるというのは?な気がします。
一方で、「これがソニーだ!」というプロダクトを世に送り続けることがソニーのDNAでもある、というのも理解はできます。このDNAはソニー設立趣意書からくる発想だと思います。
(設立趣意書をHPから抜粋)
会社設立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
一、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
一、戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即事応用
一、諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
一、無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
一、戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
一、新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
一、国民科学知識の実際的啓蒙活動
以前、ソニーの技術者の方と話をする機会があって、「技術者として作りたいものばかり作ったら、当たったらホームラン、外れたら大赤字だった。これではいけないとは思ったが、やっぱり作りたい、と思うものでないと仕事に熱が入らない。」という趣旨のことをおっしゃっていました。大方の技術者の方の本音かもしれませんね。
どういう形でEVの生産・販売を行っていくのかわかりませんが、文系・金融畑の私から見れば、やっぱり「いつか来た道」にならないのか、と思ってしまいます。経営体力がAppleやGoogleとは段違いですからね。
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