アメリカ・カナダで「シェール革命」と呼ばれている石油・天然ガスの増産状況は益々拍車がかかっていきそうです(最近天然ガスは「豊作貧乏」となったことから減産気味の様ですが…)。
かねてから、資源・エネルギーセクターへの投資を考えていたことと、比較的興味をもてる分野としてもう2年ぐらい知識を積み重ねてきました。未だに投資中のこのセクターですが、少し把握したことを書いてみたいと思います。
この道の専門家ではありませんし、個人のブログですので、ありきたりな点や(ひょっとして)事実誤認あるいは抜けている点、推測が間違っている可能性があります。また証券アナリストでもないので、定量的な分析はちょっと粗くなっていますので、あくまでご参考に。また、当然のことながら投資自己責任の原則をお忘れなく。
1. なぜ石油ガスセクターに投資するのか(投資テーマ)
2. シェール革命とは何ぞや(背景・経緯・見通し)
3. 投資対象の選択
(ア) 石油・天然ガスの生産会社(西側企業と新興国の国営上場企業)
(イ) 石油・天然ガスのサービス会社
(ウ) パイプライン会社
(エ) 総合商社
(オ) 石油化学産業
(カ) 電力・ガス会社、その他 など
4. リスクファクター
5. 投資戦略と期待リターン、EXIT戦略等
等について書きたいと思います。ただ長くなりそうなので、今回は「その1」とします。
1Q:なぜ石油・天然ガスセクターに投資するのか?
→A:自分の投資目的を達成させる手段になりえるセクターだから。
当たり前の答えで申し訳ない。
個人的な全体観として、長期的には安定的な成長が期待できる(連続増配)と言う点と政治力(簡単に潰れない)と言う点はProsで、商品価格の相場変動が激しいという点と環境汚染と言う面はある意味Cosかもしれない。
1. 「ジム・クレイマーの株式投資大作戦」(日本経済新聞社出版)という本に、長期投資の場合は石油株を一つ持て、というくだりがあります。相対的に低いバリュエーションと高い配当利回りで、かつ緩やかに長期的に株価は上昇しています。下記は西側では最大の民間石油会社、エクソン・モービル社の株価チャートです。長期的に右肩上がりですね(チャートは対数メモリです)。
1970年から40年間に5回の株式分割で、株価は47倍になっています。現在は過去最高値94ドルにあと10%【85ドル】と10%弱まで迫っています。
1970年1月の株価約1.8ドル(分割調整後)×360円=648円 2011年2月の株価約85ドル×79円=6,715 円ベースでも約10倍になります。
ちなみに昭和シェル石油の1983年1月の月足ベースで株価は237円(分割調整後)で、2011年2月17日終値ベースでは538円と約2.3倍に過ぎません(ヤフーファイナンスの日本版とUS版でそれぞれ調べました)。
さらに時期を昭和シェルに合わせると、1983年1月からエクソンは株価22倍、為替調整後で約7倍(ドル円を234円:国際通貨研究所の1983年12月の月中平均を採用)と円ベースのリターンでも圧倒的にエクソンに分があります。
1970年から2011年までドル円は360円→79円と4.6倍に上がりました。2050年に17円になるのでしょうか???(ちょっと想像付きませんが…)
2. ジェレミー・シーゲルの「株式投資の未来」と言う本で、IBMとエクソン・モービルの過去53年間にわたるトータルリターンの比較があり、エクソンのリターンが良かったという事実が記されており、株式リターンは皆が良いと期待する銘柄を保有するのではなく、良い会社だがあまり期待されていない銘柄(なおかつ配当利回りが高いもの)を保有したほうが高リターンの可能性が高くなると記されています。このセクターは業績が少しボラタイルな側面、装置産業、バカでかい時価総額等の理由で相対的に低いPERでずっと放置されています
ちなみに、私が保有するシェブロン社(ダウ平均採用銘柄)は実績PER7.9倍、予想PERは8.0倍に過ぎません(ヤフーファイナンス)。ダウ平均の実績PERは14.45倍、予想は12.35倍(WSJより)です。配当利回りはシェブロン3.1%、ダウ2.5%となっています。
つまり、ファンドマネージャー、学者ともこのセクターは割安だが、着実なリターンをもたらし、長期投資向きだとトラックレコードを用いて説明しています。
(私はIBMも持っているので、偉そうに言えませんが…。しかしIBMは今やバフェット氏も保有するバリュー株ということで…)
石油は将来枯渇するという「ピークオイル」論がしばし話題になりますが、ちょっと事実を調べると、馬鹿げたことで、石油は私たちの子どもの代でも十分な量があると推測できます。ちなみに70年代に埋蔵量はあと30年、と言われましたが、30年経過した2005年ごろの推計では、確認埋蔵量はあと40年になっていました!!(10年も増えているじゃない!!)
私は「埋蔵成長率」なる言葉を初めて知りました。埋蔵量が年々増加するのです!!(専門的なので省略しますけど)
3. アメリカで「シェール革命」と呼ばれる、一種の技術革新が起こり、さらにオイルサンドやオリノコ重油質層などの「非在来型エネルギー」の開発で石油・天然ガスの埋蔵量が急拡大しています。非在来型エネルギーを考慮した場合、石油埋蔵量の世界1位はサウジアラビアですが、2位はベネズエラ、3位はカナダと言われています。BPは2030年、アメリカは天然ガスと石油のエネルギーが自給自足出来る、と分析しています。北米では石油・天然ガスに対するパラダイムがシフトしつつあります。この点は北米での石油・ガス産業への巨額の投資を呼び込んでいます。日本の総合商社も積極的に投資しています。
BPのおかげで少し開発スピードが落ちましたが、メキシコ湾の深海油田開発もアメリカは力を入れています。
陸と海と、アメリカは脱アラブに動いています。
BPは2030年までにアメリカは石油の自給率が100%になると予測しています。当たるか否かは別として、そういう可能性があると言うことですね
ここでは、アメリカ大陸全体では、自給自足の可能性が高いと解説されています。
省エネによる効率化、シェールオイル、カナダオイルサンド、ブラジルの開発などにより、その可能性が高い点が指摘されています。
また、雇用創出と貿易収支へのインパクトという経済波及についてもコメント。
再生可能エネルギーについてもコメントされていますが省略
4. 一方、かつての原油大国である、イランとイラクは戦争や西側の経済制裁に疲弊しており、80年代以降、まともに石油開発をやっていません(むしろイランは核開発に積極的ですね)。サウジアラビアもほとんど(意図的に)油田開発を行っていません。安価で良質な「在来型石油」の埋蔵可能性の高い国々の土地がほとんど手つかずの状態で残っているので、石油は潜在的にいくらでもある、と言われています(にもかかわらず、なぜこんなに高いのでしょうね?)。
5. 天然ガスは、掘れば出てくるぐらいにあっちこっちに存在します。日本近郊でもハイドロメタンというガス層が深海にあります。そのガスをめぐって中国が尖閣列島でフライングしています(経済性がまだ出ないのでこれからの資源)。
6. 東アジア経済圏の成長で石油・ガスの需要は今後とも増加が見込まれています。
要するに需要も供給もそれなりにあるので、経済成長とともに安定的な成長が期待できるということです。下記はIEAが予想する現時点の中期的な需要供給の予想です。
ここでもOPECには生産能力の拡大期待をせず、それ以外の国が需要を満たすような図なっています。
世界経済が約4.5%年率成長するとした場合、需要は1%未満で増えると予想されています。(IEAの2011年時点の世界の石油の需給予想)
7. 天然ガスは、CO2排出量が石炭の6割程度であり、火力発電には天然ガスが良いと言われています。つまりエコ。ガスの大量発掘で、石炭との競合が予想されるぐらいです。そして、東京電力さんのおかげで、原子力開発は特に環境にうるさい欧州で盛り上がっています。
8. そして何より、資源株はインフレヘッジになり易いです。加工産業がインフレで減益でも、資源セクターは儲かっているケースはありえます。分散投資の一環です。ブランド力のある消費者独占型企業の弱点を補完してくれます。また、日本が貿易赤字になって、インフレ圧力が強くなった時、儲かっているのはこの辺の会社ではないでしょうか???
上記の記述は大手石油会社の業界環境が中心ですが、持っていて損はないセクターで長期投資向きだと思います。インデックスの上位銘柄の常連ですが、配当と言う観点では、個別で保有する方が圧倒的に有利だと思います。エクソン、BP、シェル、シェブロン、トタル、コノコフィリップスなど何でもいいような気がします。
このシリーズは間隔をあけて継続する予定です。
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