日本経済新聞のこの記事
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(断っておきますが、記事の批判ではありません。いつもはそうですが…。)
赤字続きで誰も救済できなくなったルネサステクノロジー。そこに目を付けたのが、アメリカの投資ファンドKKR。
KKRといえば、かつて米レイノルズタバコの海外部門を、日本たばこ産業に当時のM&A最高額(約1兆円)で売却し、日本たばこ産業はその後グローバル企業として再出発を果たすきっかけを作りました(今、JTがキャメル、ウインストンを販売しているのは、このM&Aのおかげ)。
投資ファンドのEXITは時折、こういったゲームチェンジを引き起こすことがあります。JTの例は日本にとって(結果として)良かったことですが、それを覚えている人は、今や少ない。
そこに、この記事の様に大手自動車メーカーをはじめとする取引先となんと、またまた経済産業省がちょっかいを出すかもしれないという構図。
記事を読んで、「ダメだこりゃ」 と思ったのは、
外資ファンドが支配すれば、(大胆なリストラなどが発生し)自分たちに半導体の供給が支障をきたす可能性がある
半導体の値上げを要求される
こういった供給不安を、「マイコンを外資に渡せば、国内製造業の競争力が落ちる」という大義名分???で支援するらしい(経産省は誰のために何を支援するのか、ボタンを掛け違えている)。
要するに、日本の製造業(いわゆる完成品メーカー、セットメーカーは下請け企業を「生かさず殺さず」としか見ていない、という暗黙の了解が、公然と世にさらされたということだろう。
「他社にはまねできない製造技術を持つオンリーワン企業」 であり、「今の数倍の価格で売れるはず」のポテンシャルを持つ企業が、相次ぐ赤字で、お荷物企業でいること自体が、異常な状態である。
そして、トヨタやパナソニック(こういった企業が連合を組んで、100%子会社化するのなら話は理解できるが)、あるいは経済産業省は、今の状況以上を望まない、という姿勢である。
ルネサスは、いろいろあったが、既成事実として上場企業である。
一般投資家は、トヨタやパナソニックのコストを背負わされ続けるのだろうか? こういった企業のために税金が投入され、ルネサスは「技術は一流だけど黒字赤字スレスレの企業」という下請け企業として甘んじるのだろうか?
本当に上場企業としてのルネサスを再生させるのなら、インテルとまではいかないが、技術にふさわしい企業として、認知されるべきで、国家としては、正しいものが正しく評価される仕組みを支援すべきでないだろうか?
ウィルバー・ロスというアメリカの投資家がいますが、彼は自動車部品メーカーを世界中で買収して、下請けと元請の関係を逆転させようともくろんでいます。ウィルバー・ロスは、かつて、米国他で破たんしそうになった鉄鋼メーカーを買収して、大きくして、最後に、インド人実業家ミタル氏に売却し、ミタルはその後アルセロールを買収して、アルセロール・ミタルが誕生しました。
アルセロール・ミタルが誕生してから、日本の鉄鋼メーカーは受け身のままです。
いつまでもこんなことをやっていて、またガラパゴス化して世界の潮流に取り残されるようなことがないように、してほしいものです。官さんは余計な口を挟まないでほしい(もう、インサイダー疑惑や不倫事件を忘れたわけではありません)。
最後はルネサスの経営陣の判断になりますが、自分の運命なので自分で決めてほしいと思います(再生したら自分で自分の運命を決められるような仕組みを目指してほしいと思いますが)。仮に今後も国内メーカーの下請けでよい、というなら非公開化してください。
株式投資において長期投資の投資対象企業として、「自分で自分の運命を決めることができる企業」というルールがあります。他人に運命をゆだねている企業が日本には多いような気がします。こういったガラパゴスな要因もPBR等の指標に表れているのだと思います。
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