2014年5月23日金曜日

「株で富を築く バフェットの法則」(最新版)を読んで

株で富を築くバフェットの法則最新版
株で富を築くバフェットの法則最新版
著者:ロバート・G.ハグストローム
価格:1,944円(税込、送料込)
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これはロバート・G・ハグストロームの本で、翻訳初版は1995年に出版されており、新版が2005年、そしてこれが第三版となるようだ。私はこれまでこの本は読んだことはなかった。

バフェットに関する本はまあまあ読んでいる方だと思っているので、今更参考になるようなことがあるのだろうか、という思いで買ったが、一つだけ今までの本ではあまりかたられていなかった切り口があった。そこが一番参考になりました。

 それは、彼の経営者の見方の一つなのですが、

組織の習性に屈しない(縛られない)経営者か

という点です。

これまでのバフェット本では、この辺は単に、「株主本位の経営者か否か」とか、「資本配分がしっかりでできているか、意思決定が合理的か」とか、「株主に率直かつ誠実な人物か」といったような表現が多かったように思います。読んでいても、特に感心することもあまりなかった。

しかし、この本では、多くの企業の経営での資本配分に関する意思決定に関し、合理的に考えればシンプルだが、実際の資本配分がひどいのは「組織の習性」と呼ぶ見えない力が働くからだ、とバフェットが看破したと記載されています。

「組織の習性」が働くと、①組織が従来の路線を変えようとしない、②余剰資金を使うためのプロジェクトや買収計画を作り出す、③リーダーが惚れ込んだ事業は、馬鹿げたものであっても、部下が利益率や戦略を細かく分析してサポートする、④(買収や役員報酬など)同業他社の行動を何でも無批判に模倣する、などが起こるが、みんながやっているからそれが正しいとは限らない、と言っています。

従来とは異なる意思決定や方向転換をするのは容易ではないが、経営者は短期的な利益をあきらめても、長期的に良い方向へ転換することを株主に納得させなければならない。

組織の習性に抵抗できないのは、企業のオーナーよりも、経営者が根本的な変化を受け入れられない時に多くみられる。経営者が大きな変換の必要性を理解しても計画の遂行は難しくてできないことが多い

などなど…。

バフェットが未だに日本企業に簡単に投資しない理由がよくわかったような気がします。日本では株主が企業のオーナーだと、頭でわかっていても行動が伴いませんからね。経営者はむしろ組織の代表という暗黙の了解があるような気がします。

経営不振に陥っている日本を代表する東西のAVメーカーなんてのは、まさしくこのパターン。

それと永田町と霞が関も結局これと同じだろう。太平洋戦争に突っ込んだ旧日本帝国海軍も同じような思考回路だったんだろう。

もっともバフェットが言いたかったのは、経営不振の企業よりも(彼は基本的に経営不振企業に興味がない)、経営がよくとも、他社のまねをして、高いプレミアムで買収を行うような経営者だったり、ノンコアビジネスにしがみつくような経営者のことを指していると思います。

バフェットは経営者を見て投資する、とよく言われますが、一方で、経営者はいずれバカな奴に交代するから、ビジネスモデルがしっかりした企業を買え、ビジネスモデル(経済の濠が深い企業)がしっかりしていると、多少経営者がバカでもそれなりにやっていける、とも言っています。どっちが本当なのだろう?

コカコーラはゴイエスタやキーオのあとはちょっとイマイチの経営者だった時期もあったなあ。彼らの前の1970年代のコカコーラも多角化で失敗したが、それでもそれなりの利益率でしっかりした会社だったよなあ。
良い経営者がよいビジネスを経営している時に買う(かつ割安)のが一番なんでしょうね。



一方、ウエルズ・ファーゴのように、大株主になってしまえば、「彼らの経営は素晴らしい」とけん制して、企業が投資銀行業務やトレーディングに過度な業務拡大を未然に防ぐサウンド効果もあったりするのかな、と思ったりします(バフェットは、経営陣の仕事を誉めながらも、暗に商業銀行業務に専念しろ、と言っているのではないか。結局それが正解だったのですが…。)。

この本では、バフェットがどのような経緯で、バーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道を買収したのかが知りたかったなあ。あの買収は見事だった。一方、私も同じだが、IBMは苦難が続いていますね。

ダイヤモンド社の本で、1800円だったら、時間がゆするのなら読んでみてもよいか、という感じだろう。私はお風呂の中で読むための本、という位置づけで買った。

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10 件のコメント:

  1. gonchan0810さん、こんにちは。

    >良い経営者がよいビジネスを経営している時に買う(かつ割安)のが一番なんでしょうね。

    「組織の習性」が良い会社で、
    出来の悪い経営者が、
    的外れなビジネスに注力している時に、
    買うのがベストなんじゃないでしょうかね。
    買い手がバフェットみたいな大株主ならば経営者を代えれば良いし、
    個人株主なら本来の習性に戻るのを待てば良いし。

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    1. 冬葉ツトムさん
      コメントありがとうございます。
      良い組織の習性で、悪い経営者のカイシャ・・・。
      おっしゃっているのは、ドコモでしょうか(笑)。最近巨額の自社株買いを発表しましたけど。

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  2. はじめまして。
    gonchan0810さんは楽天証券で米国株投資をされてるようですが、手数料の安いIB証券やマネックス証券ではなく、楽天証券を利用されるのは、やはり楽天証券の良さがあるのでしょうか?
    以前からNY市場で買いたい銘柄があったものの、踏ん切りがつかず1年以上経ってしまいましたが、このブログを読み、証券会社に米国株口座を開こうと思い質問させて頂きました。

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    1. 私の場合は、もう6年近く楽天を使っていること、それほどトレードを頻繁に行わないスタイルであること、セミナーで堀古さんや竹中さんの講演が聞けること、楽天銀行に口座を開設すると、手数料の一部が楽天スーパーポイントに換算されること、などが理由ですけど、めんどくさい、というのが本当のところでしょうか。
      そのうち手数料とか特定口座とかサービスがキャッチアップしてくれることを期待しています。マネックスも力を入れているので対抗的に。

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    2. ありがとうございます。
      ニューヨーク市場が調整したら始めてみようと思います。

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  3. WBと申します。

    何時も「投資日記」を楽しんで読ませて頂いております。米株投資の貴重な参考にさせて頂いております。(勿論自己責任)

    さて、この本は私の好きな本(1995年判)です。
    私の場合はベッドで読むのがスタイルです。殆ど暗記の状態です。
    「2段階還元モデル」はエクセルで作成し、他の投資でも参考にしています。
    最新版をAMAZONでチェックしましたが、項目的には1995年判と余り変わりはないようです。(最新版はまだ読んでおりません。)

    バフェットの講演を色々聴いておりますと、Q&Aで、1995年判の非永久保存銘柄に挙げていた「フレディ-マック」については、失敗投資の例に挙げているようです。
    最新版ではどのように位置つけているのでしょうか、興味が有ります。

    処で、肝心のバ-クシャ-ですが、私の記録を見ますと、2009年の8月と9月に買っています。評価益は+87.63%となっています。但し、配当が有りませんのでその分、割引が必要です。

    バフェットとマンガ-の年齢を「リスク」と見ていますので、投資金額は米株投資の15%程度までと限度を設定しています。

    序で、恐縮ですが、若し、差し支え無ければ、有料の投資情報をお使いでしたら、御教示ください。例えば、VALUELINEとか。

    今後とも宜しくお願い致します。

    今後とも、投資日記を参考にさせて下さい。宜しくお願い致します。

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    1. WBさん、コメントありがとうございます。
      フレディマックについては触れられていません。バフェットがどのように投資意思決定したのか、9社(ワシントンポスト、ガイコ、キャピタルシティーズ/ABC、コカコーラ、ゼネラル・ダイナミックス、WFC、アメックス、IBM、ハインツ)が分析されているだけです。

      有料投資情報はしばし、ブログで紹介しているMorningStarです(もちろんアメリカ版)。
      「千年投資の公理」
      http://dividendsnowball.blogspot.jp/2013/03/2_9.html
      (こちらの記事で紹介)
      を読んで、同社の分析方針にeconomic Moatの分析があるので、これは参考にしています。
      Value Lineに似た、過去10年の簡易財務や株価、株価指標の推移が掲載された表もあるので、これも新規銘柄を検討するときに参考にしています。
      また、財務数値がエクセルにダウンロードできるので、比較分析とかにも役立つのでは、と思います。
      ただし、会費がいつの間にか値上がりしていたので(それでも230ドル/年ぐらいだった)、やや不気味ですが。

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  4. wbと申します。

    御多忙中恐縮ですが、米株投資に際し、ドルの調達方法について、考え方を御教示頂けましたら有難いと思います。

    私の場合は、取り扱いはSBIがメイン、MOENEXがサブです。
    SBIの場合、FXで現引けをすると、1ドル当たり1銭のコストですが、申告時に面倒なので、住信SBI 銀行で、9銭のコスト(指値ベ-ス)で調達しています。
    但し、希望銘柄がSBIでは取り扱いが無い場合(バ-クシャ-等)ではMONEXを使いました。

    何か、良い方法(指値が出来て、簡単、コストが安い)が有れば、御教示頂ければ有難いと存じます。

    余り僅かな手数料は気にしないというのも考え方ではあると思いますが。

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    1. 申し訳ありません。愚直に楽天で0.25銭の手数料を支払っています。
      トレード回数が少ないので、証券会社を積極的に変更するインセンティブが働きません。ただし、マネックスの様にアメリカ株も特定口座にしてくれるといいなあ、と思っている程度です。

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  5. wbと申します。
    御多忙中のところ、丁寧な御返答を頂き、有難う御座いました。
    「千年投資の公理」については、ブログで御紹介頂いた時点で、早速読んでいます。
    バフェット氏も講演でMOATのことは度々言及されています。

    今後とも宜しくお願い致します。

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