2014年12月17日水曜日

原油相場について雑感

もう耳にタコができるぐらい、原油価格の急落が報じられています。
私も70ドル程度で終わりだろう、と思っていましたが、まだまだ下がっているという感じです。

OPECの人も、ちょっと気を利かせればいいのに(例:「減産しようかな」とかつぶやくだけでよい)、頑なな態度を貫いているようです。催促相場の様相ですね。

原油価格が下落すると?
原油相場が下落すると、結局は石油製品の需要が高まります(例:アメリカではSUV車の販売が伸びているらしい。もっとも10年前のSUVより燃費効率はアップしているようだが)。

また、久しく議論されていた、代替エネルギー、再生エネルギーと言われているもの(例:風力、バイオマス、サトウキビを燃やすやつなど、あるいは太陽光。米国では発電会社と供給会社が別だったりする)の相対的な発電コストが高まって、結局は石油・天然ガスあるいは石炭に逆戻りということも考えられます(CO2排出量の問題があるが、石炭火力も性能が向上している)。

新エネルギーは原油相場が堅調でなければ、ワークしません。
 
そして、面白い話ですが、埋蔵量が減るかもしれません。一般的に埋蔵量というのは、生産会社にとって経済的に採掘できる石油の量という意味合いで定義されていますので、石油価格が下がると、埋蔵量が減ってしまう可能性があります。

これは、原油価格が上昇しているときには、「埋蔵量成長率」といって、埋蔵量が増加していたことの裏返しです。

たとえば、原油価格が上昇すれば、在来型の油田では、地下奥底にある油層で、従来だと採掘するのにコスト割れで、放置されていた油が、油価の上昇で、採掘しても採算に乗る、ということが言われています。これが埋蔵量成長率と言われるものの一種です。

それが証拠に、1970年代に「あと石油は30年で枯渇する」と言われていたのですが、2005年ごろには「あと40年で石油は枯渇する」という風になっていましたね。

更に、原油価格が下落すれば、当然石油会社は生産を止めたり、新規油田開発をストップしたりします。将来の埋蔵量候補が減っていきます(注:彼らはそこに石油があると知っていながら、掘らないということも考えられる)。

そして、現在の油田の埋蔵量はやはり日々の採掘業務の中で減っていきます。これは当然です。これが年率3%~4%と言われています。

結局どこかで需給が安定して、価格が安定していくと思います。ドル高の影響もあるので、それが何ドルになるのかの予想が難しいですが。

天然ガスは?
天然ガスについて言えば、北米では相場が4ドル前後で比較的安定しています。将来的にLNGの輸出(2017年ごろだったと思うが)の時の価格はわかりませんが、その時に米国LNG>原油相場連動LNGだと具合が悪いですね(とは言っても、かなりの量は引き取り義務があると思いますけど)。

投資は?
Kinder Morgan(KMI)はこの前、2015年に限って言えば、WTI70ドルでも配当は$2.00をキープできるといっているそうです。一応、売上高の6割近くが天然ガスからの収入です。

Enbridge(ENB) はこの前、配当を33%も一気に引き上げました。Enbridgeの運ぶ原油(オイルサンド由来のビチュメン)は重油質なので、軽油質のシェールオイルとは直接競合しません(そのくせ、オバマ政権はトランスカナダのパイプラインにしつこく反対している。先の中間選挙で共和党有利となって、この辺が変わる可能性が示唆されている)。

2015年はとりあえず安心してよいような気が、現時点ではしています。
原油価格は、5月以降はまた反転して、落ち着くところに落ち着きそうな気がします。7080ドルぐらいかなあ。Chevronの業績が心配ですねえ(増配率が落ちるという意味です)。

中東諸国は?
サウジアラビアも国家予算が1バレル90ドルの前提で組まれているそうで、あまりに原油安だと「財政赤字」に転落してしまい、それが長期化するとヤバいという事情があるようです。

しかし、価格を維持するために減産に踏み切った場合、従業員のリストラ等が必要になって、国内景気に悪影響を及ぼします。そういった失業者ややり場のない怒りをもった若者が、アルカイーダのような原理組織に「転職」してしまうと、非常に厄介なので、減産も嫌なのでしょう(NY爆破テロの実行犯の大半がサウジアラビア人だった)。

クレバーな中国?
そういった中東産油国の弱みに中国辺りが付け込んで漁夫の利を得そうな、そんな感じもしますね。歴史的に策士を山ほど輩出してきた国なので、そういった先入観があります。
対ロシア関係でも、さらに優位な立場になるかもしれません。日本と同じように天然エネルギーを輸入に大きく依存せざるを得ない国なのに。。。


日本は、リスク分散の観点もあるので、経済的に採算に乗るのなら、将来アメリカからシェールオイルを買ったらよいと思います(アメリカもどうせ輸出するだろう)。

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5 件のコメント:

  1. こんばんわ。
    少し前にDividend Growthなブログのどなたかが、石油企業はオイルメジャーだけじゃなくてパイプライン事業とか調査掘削事業をしている企業に分散投資するのもいい、という趣旨の記事をあげていたと思います。
    関連企業は下落しているのでどこともお買い得と思いつつ、まだ原油も底じゃないと思うと躊躇してしまいます。投資はいつも難しいです。

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  2. こんにちは。コメントありがとうございます。
    原油相場は底だと思いますが、業績に影響が出てくるのは、今後の数四半期なので、予断は許さないと思います。

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  3. おはようございます。
    いつもわかりやすい記事ありがとうございます。原油価格が落ちている中、わたしの米国の証券のサイトではエネルギー関連の株を買う人が多くて驚いています。
    アメリカ人はいつも強気ですよね。これからも応援しています。

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    1. tomoさん、コメントありがとうございます。
      「エネルギー関連株」といっても、いろいろありますので、その企業の収益構造が安定的なのか、景気循環的なのかをよく見極めて、銘柄選択されるといいと思います。たぶん、みなさんそれを理解している前提で売買していると思います。

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  4. 勉強になります。今日、見た中ではXOM、CVXに買いが入っていました。やはり安定的な銘柄として買われているのですね。ETFのなかでUGAZというのにが多くの買いがはいっていましたが、始めてみる銘柄です。あまり情報がありません。何でこんなのが買われるんでしょうか。

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