最近のドル円為替論調に関する私見を述べたいと思います。
その前に私の立ち位置は、総運用資産のざっくり3割が米ドル建て、7割が円資産です(注:太陽光や不動産の資産を含む。ただし、太陽光・不動産資産の85%近くは借入金でバックファイナンスされている)。
したがって、円安はどちらかといえば、マイナスに作用します。しかし、実物資産の時価を普段は気にしていないため、金融資産の中心である米国株の円換算の時価の動向が目に入りやすい立場です。
このところドル円為替が円安傾向(ドル高)に振れています。マスゴミはこぞって「悪い円安」と書き立て、円安を何とかしないといけないし、政府・日銀は何をやっている、という論調になっていきます。
為替は市場で決まるし、世界から見ればわずか5%~7%ぐらいのシェアしかない日本の金融市場の中で、日本政府や日銀がどうこうしてもたかが知れています。
このブログの読者なら、今起こっている現象は米金融政策に基づく米金利先高観によるドル高である、とお分かりかと思います。それが証拠に米ドル指数(複数の主要通貨に対する、アメリカ合衆国ドルの為替レートを指数化したものである。米ドルが他通貨より価値があると、インデックスは上昇する)は上昇しています(私が毎月月末のドル指数を参考指標としてチェックしているもの)
コロナ禍前後のドル指数のチャートです。コロナショック(2020年3月以降)以降、急激に下落(確かFRBがジャンク債でもなんでも買うから、と言って利下げを含めて急激な金融緩和を実施)。
簡単なこれまでの経過
ワクチンが普及し始めた2021年以降は底打ち。ポストコロナの議論が始まり、指数が上昇。
インフレが「一時的」から、「ヤバそう。利上げを急がなきゃ」という議論が出だした2021年の後半以降さらに上昇。
「利上げは0.25%刻みではなく、0.5%かも」と言われた春先以降は一層上昇、となっています。
このドル指数のチャートに、ドル円とユーロドルのチャートを被せてみました。
オレンジとブルーの混ざったチャートがドル指数、ブルーがユーロドル、オレンジがドル円の指数です。
ざっくりですが、コロナ前はドルと円が同じような推移をしていました。しかし、コロナ以降はドル指数が下がると、ユーロドル・ドル円が上昇し、ドル指数が上昇すると他の2通貨は下落するという傾向がはっきりしています。
ただし、ここ1ヵ月?は円が独歩安のような感じになっていますね。
多分、EU圏はそろそろ金融緩和をやめようか(金融緩和政策を徐々に小さくしていく)と言っているのに対し、日銀は「強力な金融緩和を継続」と言っているからでしょう。
したがって、「悪い円安」はユーロドルとドル円の下落率の差額約8%(15.19%-7.13%)程度ということでしょうか(それでも1ドル10円ぐらいのインパクトがありますね)。
強力な金融緩和が必要な理由は、経済状態がまだまだ弱いからということになります。
(第一生命経済研究所 永濱氏の2022年3月のレポートから)
日銀は2%の安定的なインフレ率達成が政策目標とされています。そのためには10兆円の超過需要が必要と推定されています。現時点では約▲21兆円の超過供給状態のようです。
このギャップ(10+21=31兆円)を埋めるためには、国民や企業にカネを使わせる政策が必要です。しかし、けちけち岸田政権は6.2兆円程度の補正予算と発表しています。
これではギャップは埋まりません。したがって、インフレ率2%はなかなか達成しないでしょう。
最寄り品が値上がりしても、高価なものやレジャー等の余興費に回すお金が減るだけで、経済全体のパイは大きくなりませんから。
「悪い円安」は、円安をうまく活用して日本経済を前進させようとしない(というか、マクロ経済政策が理解できない)政治家が原因だと思います。
デフレからの脱却、これを実現させるためにはどうすべきか、がわかっていない(わかっていてもやらない?)政治家がトップに立つようでは話になりません(しかし支持率が高いのは、我々国民がデフレや貧しくなる日本を望んでいるとしか思えないので、非常に寂しい思いです)。
日本はダメだ、というのはずっと前からわかっていたことですが、さりとて住むなら日本、稼ぎは米株に任せよう、と思っていましたが、自己嫌悪にもなってしまいますね。
ワーストシナリオは黒田さんの任期(来年春)が切れる半年前ぐらいから次期日銀総裁人事が話題に出ると思います。その時に金融引締め派の総裁が有力候補になることです。
多分、アメリカの金利上昇はもうピークを迎えつつある時期で、ドル高の「寿命」も長くないと推定します。そこに金融引き締め的な日銀総裁が誕生するかも? という話題だけで一気に円高に振れてしまいます。
円高に振れると、インフレ率も確実に下落圧力がかかるので、デフレ継続となります。しかし円高になっても、原油やコモディティが(ある程度は下がると思うけど)以前ほど安くならないので、相対的に貧しくなる日本は継続されるという図式です。
そういった意味で、28日の黒田総裁の会見は「最後のバズーカ砲」だったのかな、と思いました。
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