上場企業を買収する際は、買収したい人は、市場の不特定多数の株主に対して、「いくらの株価で買います。こういう理由です。売ってください」(超ざっくりですが)、と提案して、株主はそれに同意すれば、その買収案に応募します。
買収者はあらかじめ一定数以上(通常は過半数超)の株主が応募すれば、応募した人の株を全部買います。
その結果、買収が成立することになります。
この提案をTake Over Bit、株価公開買い付け、と言っています。略してTOB
しかし、株主はその提案が本当に株主にとって利益なのか(つまり十分良い値段なのか)を知る手掛かりがありません(TOB提案される前より一定のプレミアムのついた株価で提案されるので、そのプレミアム割合が一応メド)。
そこで、買収される側の経営陣が株主に「これはいい提案です。株主の皆様、ぜひ応募してください」と賛成すれば、株主も安心して?応募するでしょう。
この意味は、買収される会社の経営陣が、「買収する会社の方が当社の企業価値(株価)をもっと引き上げてくれるから」、という趣旨のことを示唆しています。
これは「同意あるTOB」で、一般的な形での企業買収です。
一方、被買収側の経営陣が反対する場合、「いやいや、我々の方が提案よりもずっと企業価値を引き上げられます」という意味です。しかし、そのためには、どのように企業価値を引き上げるのかを株主に納得してもらわなければなりません。
株主としては、買収提案者に売ったほうがいいのか、このまま現経営陣に任せた方がいいのか、という判断軸です。
現在、多くの上場企業(特にプライム市場)の株主は機関投資家です。彼らは経済合理性でものを考えます。数値やその根拠を示さなければ、納得しないでしょう。
しかし、牧野側からの反論は
「最大の懸念は独立性が失われ、顧客離れが生じることだ。現在も商談で保留となっている案件がある。(ニデックのような)何かを量産する会社の傘下になると、量産品をつくる顧客は自社の技術ノウハウが外部に流出するリスクを抱える」
牧野フライス社長「ニデック傘下入り、顧客離れの懸念」(日本経済新聞電子版4月16日)
など、やや理解に困る回答が多い。
「独立性が失われ、、、」。感想としては、「その程度の客か?」という感じがした。
牧野がもし、唯一無二の技術を保有していれば、買収を理由に離れないと思う。
また、牧野の長所を殺すような経営はしないだろう。
セブンアンドアイとカナダのクシュタールの攻防を見て、なかなか同意しないのでTOBに踏み切ったのだろうと思います。これが「同意なきTOB」。
本来、企業の所有者は株主なので、株主の同意を得ればいい(TOBで株を買い集めることが出来ればいい)のですが、一応、経営陣の賛同を得る形をとると、株主も応募しやすくなる、という感じです。
(買収後の経営で、会社側が反対していたら、統合などめんどくさいですし)
問題は、牧野がポイズンピルを発動した点です(TOB後、ニデックの保有割合が増加した後に、一般株主に割安の新株予約権を発行し、ニデックの割合を薄める)。
この発動が合法となるのは、確か、濫用的買収とみなされなければ、裁判で負けると思う(かつて、スティールパートナーズがブルドックソースにTOBを仕掛けたとき、裁判でブルドック側が勝利するという奇想天外なことがあった。
業界の有力企業で、株主価値向上に「隙」がある企業は今後も狙われやすいと言えるでしょう。わざわざ敵対的に買収を仕掛けるくらい、価値のある会社だが、その価値を生かせていない、ということになる。
要するに、経営陣は自社の製品やサービスだけでなく、自社の株の営業も頑張りましょう、ということでしょうか?
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