2012年4月7日土曜日

「自滅するな日本」(田原総一郎責任編集、アスコム)を読んで

話題のケビン・メア氏と田原総一郎氏との対談形式の本。
ケビン・メア氏に関しては、「決断できない日本」(文春新書)から出版された自書に次いで2冊目の読書となる。

私は「決断できない日本」を読んで、沖縄問題についての本質的なものに目覚めたような気になっていたので、「自滅するな日本」は迷わず買った。

今思えば、なぜプロ野球キャンプが沖縄で集中的に行われるのか(特に名護市)など、何となく納得。

田原総一郎氏が例のごとく切りこむが、メイ氏は途中困ったこともあったようだが、実に理路整然と持論を述べている。日本の政治家もこれくらい喋れたらなあ、とつくづく思った。

彼は親日家だから、彼の意見=アメリカの意見、と間に受けるわけにはいかないものの、考え方は非常にすっきりしている。
すっきりしないのは日本の政府と沖縄の地方政府そのものではないか? 本書では彼らを曖昧な態度で無責任な外務省と批判しています。政治家は日替わり素人大臣なので、官僚答弁のままでしょう。

日本政府や政治家からの、日米関係や米軍基地問題に関して、政府からは「米軍が望んだから」というパッシブなコメントが多く、世論では「日本は米軍の操り人形」と思われる部分が多い。しかし、日本としてどう考えたからそういう決断を下したのか? という本質的な説明はほとんどなされない。アメリカは日本の意思を全く却下しているわけではなさそうだ。

また、コンセンサス重視で、大事な決断を下すことが実は誰にも出来ないようになってしまっている今の日本全体の無責任体質とも言える社会的病巣をズバリ言い当てている。

私は彼の発言に全てを納得しているわけでもないし、自分の立場を都合よく解釈している部分もあるが、それでも「アメリカ人だから」とか、「沖縄を侮辱した発言を人だから」(注:「沖縄はゆすりの名人」発言。本人は一部否定しているし、新聞社側も「オフレコ」と言いながら、すっぱ抜くなどダーティーなやり取りがあってちょっと気の毒)と言ってこの2冊の本を敬遠するのは、自らの視野を狭めるだけで、決して自分にとって有益ではないだろう。

鳩山元首相の「最低でも県外」と聞いたとき、メイ氏は「アホかと思った」と言っていますが、これが活字で出版されること自体、痛快です。また、反対に沖縄問題に真剣に取り組んでいた橋本元首相は実はすごい人だったんだなあと今になって思ったりもする(注:故橋本龍太郎さんの話はほとんど出てきません)。

日本の新聞はどんな真実があったかには興味なく、大騒ぎが好きなだけである
とバッサリ言っているところも素晴らしい。メイ氏の有能さがいろいろ見える。

政治家や官僚は地域住民への過度な被害者妄想を駆り立てて、補助金その他を引き出す、と言う構図は、沖縄、震災、原発再開などすべてに共通するような気がする。マスコミはそういった構図を知っているはずなのに、(読み手の受けがいいということが最大のポイントだとは思うが)騒ぎをより大きく報道することに専念している。

日本のことを裏までよく理解したこういう人が日米外交関係の正規ルートにいなくなってしまったことが、日本にとっては喪失であると思います。



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