2012年1月15日日曜日

日本経済新聞「日本株は魅力を取り戻せるのか」を読んだ共感と違和感

日本経済新聞の日曜版、「日本株は魅力を取り戻せるのか」を読んでの感想です。

川北京大教授と信越化学の金川会長の回答です。
新聞社は日本株の低迷とその打開策について、日本生命で運用を行っていた元機関投資家の川北教授と、日本企業を代表する企業経営者とも言える金川千尋氏にインタビューを展開。

川北教授の回答趣旨
  1. 日本株の魅力が乏しいのは投資家の責任である。
  2. 理由は有望な個別株を長期で運用するのではなく、ベンチマークとなる株価指数に買ったか負けたかで決まるような投資手法にある。
  3. 投資家の運用成績が短期志向で長期的なものを考えるスタンスに欠けている。3年程度のタイムスパンが必要だ。
  4. 機関投資家の評価体系に原因があるのではないか?
  5. インデックスという平均的なベンチマークよりももっと上を狙う投資手法を実践して欲しい。投資家はもっと有望な銘柄を発掘してある程度の時間軸で投資していくべきだ。
金川会長の回答趣旨
  1. 株価対策に有効なのは業績を伸ばして市場に評価してもらうしかない。
  2. そのためには世界市場で利益を伸ばすべきだ。
  3. 公開企業として、市場の批判や意見を聞くのがよく、非公開化には興味が無い。
  4. 市場が短期的な収益を求めるので、「100年の大計」が進められないという経営者もいるが、ごまかしだと思う。長期的な成果は毎月毎月の積み重ねだ。今がちゃんとできない経営者は先もダメだし、私が投資家でも信用しない。
  5. まず利益という実績を示す必要がある。投資家の信頼を得るのはそれから。
  6. 政府に成長を頼ることは無いが、成長の邪魔をしないで欲しい(法人税の引き下げ)。
感想
信越化学の金川会長の回答にはもう、全面的に共感します。特に

市場が短期的な収益を求めるので、「100年の大計」が進められないという経営者もいるが、ごまかしだと思う。長期的な成果は毎月毎月の積み重ねだ。今がちゃんとできない経営者は先もダメだ

まず利益という実績を示す必要がある

には120%賛成いたしました(赤字や下線は私がつけたものです)。

一方、新聞社の問いかけなど主催者側(および新聞の読み手)の先入観もあるのだろうが、投資家が短期志向になった、「もともと短期志向が強い外国人」というくだりの川北教授のコメントには違和感がある。

(どうもマスコミには投資家が短期的な利益を追いかける層が大半であるかのような前提が多いが、どういった根拠があるのかにはいつも触れられないでいる。結局彼らのヘッドラインがますます投資家を短期思考にさせているように私には見える)

私は長期投資の有効性を外国人から教わっている。日本で一番長期投資を呪文のように唱えている澤上さんでさえ、外国で長期投資を学んで日本で実践している。
そして長期投資に向きそうな株に投資するために国境をあまり意識しないようにしている。金川会長も指摘するように、企業が成長するには海外で稼がなければならないと指摘するのと同じように、私のような個人投資家も高いリターンを得るために海外に打って出ているのだ。

さらに、春山昇華さんのブログで毎月末に公開されている株価の定点観測において、おおむね日本株のPERがアメリカ株のPERを上回っている。日本株のほうがアメリカ株(現時点では上海総合指数の中国株よりも)高く評価されている。

お金のこねた
日本株が魅力的ではないという日経新聞のタイトルやその前提は違和感がある。

たとえばマイクロソフト株は過去5年間、株価で見れば同じレンジを言ったりきたりしているだけだ。PERはたったの10倍に過ぎない。

しかし業績のほうは至って堅調だ。ビルゲイツ氏が在籍していた面影は無いものの、このリーマンショック後、タブレットだスマホだと言われている中にあって、売上高で年平均6%、純利益でも10.5%の2桁成長を維持し、毎年2.8%の株数を自社株買いしていることもあり、EPSは13.6%の成長をなお、維持している。
(よってバリュー株インベスターに人気がある)




日本株だけが魅力的ではないという論拠はどこにも無い。名目株価の減少は利益の減少を表しているではないか?

株式投資で銘柄を重視すべきだ、という意見は、まあ賛成できる(しかし、ケン・フィッシャーの調査や経験では銘柄選択よりもセクター選択のほうがより重要だ、という意見もある。バフェットも完璧な銘柄選択が出来たわけでもないし、常にインデックスを上回ったわけでもない)。

しかし、川北氏が挙げた銘柄はコマツやユニ・チャームという機関投資家なら誰でも保有していそうな銘柄で、目新しくも何も無いけど・・・。

日本株に(従来のような)魅力が無い前提はもう少し定量的に考えてみてもいいような気がします。
グロービスMBAコースの「クリティカル・シンキング」ですね。隠れた前提条件とかいう項目があったような気がする。

私の昔のブログ記事で、ざっくりとした簡易な事実を紹介しています。

ニッポン株式会社と株式相場


結局は金川会長のおっしゃる、利益を伸ばすことが株価対策で、政府は余計な邪魔をするな、というのが本論だと思います。
(補助金頼みの業界の明日は・・・)

一方、川北氏のロジックは、1:日本株の低迷は投資家の責任、2:短期的な思考が邪魔をする。そのような思考は外国人の仕業 ということであれば、日本株の低迷は外国人投資家に責任がある、という三段論法が成立しないか?

バブル崩壊後、日本株の外国人持ち株比率は上昇しているので、マクロ的な株主構成変化とまったく論が合わない、と個人的には思う。新聞社の編集が悪いのか、本人が気づいていないのか???

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2 件のコメント:

  1. 管理人さん、こんにちは。今年もよろしく。
    ところで、日経の元記事は、読み難いが、上記の要約は、読みやすい。また、信越化学の金山会長の発言は、「激しく同意」です。

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  2. Snowbeeさん、こちらこそ今年もよろしくお願いします。
    ブログ移転後の初コメントありがとうございます。
    さすがあのジャックウエルチが最高の経営者と称賛したことだけあって、金山会長のおっしゃることは耳に響きますね。

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