2013年6月16日日曜日

「稼ぐ経済学」を読んで

稼ぐ経済学
稼ぐ経済学
著者:竹中正治
価格:1,575円(税込、送料込)
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この春に何冊か読んだ投資関連本の一つ。著者は現在、龍谷大学教授の竹中正治氏。

竹中氏の著書はこれまで以下の3冊を読んだ。これが4冊目。

  1. 今こそ知りたい資産運用のセオリー
  2. なぜ人は市場に踊らされるのか
  3. 外国為替はこう動く

本人が記載する通り?本書は上記12の続編に位置する。しかし、それプラス竹中氏が週刊エコノミスト他雑誌のコラムで記載したことの総集編といった感じだろう。

この本をマスターすると、どんな効果があるか?

(たぶん)あなたもプチ・ヘッジファンド・マネージャーになれるだろう!!!(注:筆者の意図とは違うと思います)。


学者には経済や資本市場に対して、あーだ・こーだ言っていて、投資をやったことが無い人は沢山いる(そういう奴ほどマスコミ受けするから始末が悪い)。しかし、竹中氏は、

  1. 経済学者として、数々の景気の局面をしっかりした分析に基づき、当てている(エコノミスト
  2. 東京銀行の為替ディーラーと言えば、プロ野球でいえば、巨人でレギュラーだったと言っているに等しい)。外国為替の元プロ
  3. ディーラー出身のエコノミストとして、ドル円相場に関する理論は一貫していて、しかも大局的に当たっている。FXもお手の物(ご本人はディーラー業と長期の為替見通しは関係ないと言っているが、素人が見れば、なんとなく説得力がある)。
  4. 米国債投資経験があり、債券投資の読みは当たっている
  5. 株式投資経験があり、成果が出ている
  6. 不動産投資経験があり、成果が出ている。


つまり、複数のアセットクラスに、経済の大局的な流れを把握しながら、正しく投資して、それなりの成果を出している。なおかつ、円安局面で、ドルを売って円を買う、というヘッジ取引でも実績がある。

つまり、ヘッジファンドプロフェッサー と言っていいような感じの人です(但し、不動産以外の正確な投資リターンは非公開である)。

もっとも、アメリカの破たんしたLTCBM(ノーベル賞をもらった学者のヘッジファンドで98年に破たん)の様に、誰にもわからない複雑な理論ってことはなく、ある程度のサラリーマンなら理解可能な範囲内のロジックなのでご安心を。

こういった実績から、各所で評価されて、出た著作であろう。しかし、このタイトルはぴったりですね。手に取った瞬間思わず、「おおっ、まさにぴったり」、と唸った。

さて、ヘッジファンドプロフェッサーの教えは、資産の正しい評価を行い、当該資産の割安局面で買って、割高局面で売ることでリターンを得なさい、というもの。

いつ、割高で、いつ割安なのか、という点については、行動経済学的になりますが、そこは元プロのディーラーであり、市場の行動原理とその盲点を詳細に教えてくれています。

そして、ここが最大の付加価値だと思いますが、日本人の資産運用に今や不可欠となったドル円レートの理論的な考え方は他の投資本では、まずお目にかかれない(為替だけを専門的に語る人はいるが、ドル円レートの変動を利用して資産運用を安定化させようというアドバイスには出合ったことがない)。

最も筆者は、長期スパンでの投資しか教えてくれないので、短期の鞘抜き志向の方は直接的には役立たないでしょう。但し、ドル円レートの考え方は知っておいて損することはないと思います。

尚、ちょっと不満があるとすれば、ご本人の経験なのだろうが、株式投資はインデックス派なのに、不動産投資は個別物件にこだわっておられ(注:REITへの投資経験もあるが、不動産は原則、都心・駅近・中古ファミリーマンションへの限定)、株式投資の個別銘柄派の私には賛成できない面も残った。

不動産はこだわりのある立地・条件の物件を悲観局面で買って、楽観局面で売るという前提なのに、株式投資はインデックスを長期の年平均IRRで評価している。不動産投資についてはなかなか透明性のあるリターンの統計がないのは事実だ。

ちなみに掲載されている不動産投資モデルにおいて、売却するときの不動産価格の経済耐用年数分の減損を織り込んだリターンでは、外国株の株式投資のインデックスとあまり変わらない結果となっている(不動産投資がうまくいけばIRR9%台でダメな場合は6%台となっている)。


株式投資は個別銘柄で投資しても、市場平均にはどうせ勝てない、というのは(悔しいながらも)わかりますが、個人の資産運用は個人の目的に沿っていればいいはずであり、気にする必要性はないと思う(もちろん、市場平均に勝ちたい誘惑は常にあるし、勝ったほうがいいに決まっている)。

また、株式は市場のボラティリティが激しく、資産価値が不安定である、というのは理解できるが、まさにその凹んだ時に投資しなさい、という教えではないだろうか?

不動産投資のリターンはLeveraged Buy Outの原理と同じであり、賃借人のキャッシュで借金を返済し、はっきり言えば、賃借人の家賃の累積で返済した借金の総額がValue Up(投下資本に対するリターンの源泉)となる仕組みである(もちろん企業も借金で自社株買いをすることがあるので、似ている点があることは否定しない。不動産の賃貸派と所有派で、賃貸派にこだわっている人は不動産投資家に実はフリーランチを与えているともいえそう。所有派は帰属家賃で自分の借金を返済しているのに対し、賃貸派は他人の借金の返済のために賃貸を活用している)。

したがって、自分の期待できる賃借人を付けられるのか、が勝負になる。

株式投資は、賃借人にあたる部分が企業のCEOのようなものかもしれない(事業の競争優位性というのは不動産の立地条件にほぼ等しい)。

賃借人を連れてくる自分の能力とプロの経営者とどちらがうまく自分にバリューをもたらしてくれるかだろう。

しかし、何に投資するかは最終的に個人の選択であり、好みや目的の問題であるから、そんなことは大した問題ではなく、「悲観で買って楽観で売る」、「数年単位の長期で運用を考える」、「アセットの基本的な評価方法」、「長期のドル円レートの論理的な考え方」ということに興味がある人なら、是非一読をお勧めします。

そして、FXや不動産あるいは債券投資を上手に活用できれば、あなたもプチ・ジョージ・ソロスです(もっとも当面債券投資に適した時期は到来しないでしょうが…)。

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