2023年1月30日月曜日

Manchester・United For Sale マンチェスター・ユナイテッドを分析

マンチェスター・ユナイテッド(MU)といえば、サッカーファンなら誰でも知る、英国の人気サッカークラブです。日本の香川真司選手も一時期在籍していたことでも知られています。

その、MUのオーナーがクラブを売却していると盛んに報道されており、英国一の大富豪ジム・ラトクリフ氏が買収に名乗りを上げています。

英国人実業家ラトクリフ氏がマン・U買収に向けて動き…グレイザー家は11月に売却の意思を表明

今回は、そんなMUの財務分析とM&Aによる価格などを考えてみようと思います。


売却経緯

現在のオーナーはアメリカ人投資家であるグレイザー一族。アメフトのタンパベイ・バッカニアーズの共同オーナーも務めているようです。

ロシアのウクライナ侵攻で、プーチンに近いとされていたロシア人富豪のアブラモビッチ氏がオーナーだったチェルシーFCが2022年夏に総額42億5千万ポンド(約6,800億円)でアメリカ人投資家が買収したことにより、売却を考えたと言われています。

 

ではなぜ、売却を決意したかといえば、ズバリ「これ以上の投資妙味がないから」(私見です)と推測します。

いくら投資しても(サッカーチームの場合、投資とは基本は良い選手を集めること)、思ったような強化にならず、赤字が拡大していくからでしょう。

 

サッカーに詳しい人なら、「えっ? あのMUが赤字? 毎年巨額の移籍金を払ってよい選手を買い漁っているじゃない」と思うかもしれません。私もそう思っていましたが、今回分析して、投資家なら、「いい値段が付くなら売る」という意見には賛成です。

 

MUの業績など


MorningStarから財務数値を取って、まとめました。

1百万ポンド=約1.6億円(1ポンド160円)で試算すると、2022年度は

売上高:                                          933億円

SGA(販売費及び一般管理費)            644億円

 うち人件費                                    615億円

 償却費用                                      242億円

営業損益                                          135億円

純損益                                             185億円

調整後BITDA                                    130億円

有利子負債                                      1,025億円

(現預金残高)                                194億円

 となります。プレミアリーグの順位は例えば、2018年度なら、2017-2018のリーグ戦の最終順位となります。

純損益▲185億円で有利子負債1,025億円、これはきついですね。負債の多くは現在のオーナーが買収した際のLBOローンといわれています(LBOの専門的なことは省略します)。

収入の方は、プレミアリーグの順位で4位以上に入ると、ヨーロッパでチャンピオンズリーグ(CL)という各国リーグ戦の上位チームで構成される、サッカー界で最も競争力のる大会に出場できる権利があり、当然、試合数や放映権収入などが加算されるため、収入増が期待できます。

しかし、そういった大会に出続けるためには、良いチームを作る必要があり、そのために良い監督、良い選手を高い報酬で遇しなければなりません。

野球と違い、サッカーでは、欲しい選手をその選手の所属チームとの契約期間内でも違約金(移籍金)を支払い、ヘッドハントすることが日常化しています。

例えば、日本の久保選手は昨年の夏、スペインのレアルソシエダというチームが当時の久保選手の所属元であるレアルマドリードに移籍金650万ユーロ(約9億円)を支払ったようです。別途久保選手には年俸(約2.6億円といわれる)を支払われます。

 MAに例えると、この650万ユーロは「のれん」のようなもので、久保選手との契約期間で均等償却するようです。

この償却費がAmortizationとして計上されています。MUの場合、2022年度は242億円にも上ります。他チームとの比較ができませんが、平均契約期間4年、登録選手25名とすれば、一人当たり2.4億円に上ります。

最近はこの移籍金相場がどんどん吊り上がり、ひとりの選手を獲得するのに円換算で100億円(円安ということもあるが)を超える移籍金は珍しくなくなってきました。

 

MUの問題は、かなりの投資をしても、効果が上がっていない(つまり投資効果が低い)点だと指摘されています。


上記は、サッカー選手の移籍などのデータを掲載するTransfer Market.jp から、MUのライバルと見なされている、同じマンチェスターに本拠を構えるマンチェスターシティと永遠のライバルと目されるリバプールとの過去3年間における移籍市場での出来を比較しました。

支払い移籍金は選手獲得に要した移籍金の年度の合計、受取移籍金は逆に選手を売却した際に相手チームから受け取る移籍金を示します。

差引が、キャッシュベースの純支出となります。

その純支出を3年間トータルしたのがネットです。それを1ユーロ140円で換算したのが、円換算になります。

MU3年間の純支出は565億円にも上り、ライバル2チームの2倍以上を払っていますが、プレミアリーグの順位は最も芳しくありません。

特に、受取移籍金が他の2チームと比べて、少なく、株式投資に例えると高値掴みして、損切りしているような感じです。

(注:実際の移籍金は、分割払いだったり、出来高払いだったりするので、必ずしも正確な数値なのかは不明)

したがって、MUは成績が悪く、収入も少ないのに償却費負担が重くなる、つまり設備投資に失敗した企業のような状態です。

 

そんなMUNY証券取引所に株式は上場されていて、なんと時価総額が約3.1Bドル(1ドル130円で約5千億円)の値段がついています。

負債総額の約1千億円と現預金はBSで約194億円とされており、純有利子負債800億円で、「企業価値」はざっくりと6千億円とします

ロンドンが本拠のチェルシーの株式価値は約4000億円だったので、MUの株式価値5,000億円は大きく外していないような気がしますが、単純に「企業価値評価」の教科書ではMUの株式価値は測定不能な気がします(そもそも赤字)。

EV/EBITDAで見た場合、6,000億円÷130億円=46倍、とトンでもなく高い(この数値はせいぜい10倍程度までが妥当といわれている。もちろん業種他により上下する)。

仮に10倍が妥当だとすれば、130億円×101300億円が企業価値、負債の800億円~1000億円を差し引きすると、MUの株式価値は数百億円程度です。20倍でも1,6001,800億円です。

移籍金の償却費の242億円はキャッシュで支出するのではないが、毎年1億~2億ユーロの移籍金という「設備投資」を行っていかないとチーム強化も容易ではないと言われます。

さらに、ホームスタジアムや練習場が旧式化しており、トップチームにふさわしくないという批判があります。こうした更新投資も必要ならば、サッカーチームは「金食い虫」となっているのが現状です。

(サッカークラブとして、世界トップブランドを生かしての広告収入込でこの業績ですから)

 

英国人富豪が名乗り出ていますが、別途、サウジアラビアのオイルマネーが買う可能性も指摘されています。

カタールがサッカーのワールドカップを(なんやかんや言いながら)、成功させたことで、対抗意識が芽生えたようで、カネにモノを言わせる、といわれています。その目玉商品としてMUの買収があるのでは、とささやかれています。

 

プロスポーツが投資対象としてもてはやされていますが、サッカーの場合、収入の成長以上に選手の待遇が成長しており、売却時期に来ているともいわれています。

同じアメリカ人投資家が保有するリバプールにも売却のうわさがあります。

もし株式価値5000億円かそれ以上で売れれば、グレイザー一族はHappyじゃないかと投資家目線では思います。

 

MUがいくらで売却されるのか、見守っていきましょう。


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