2022年7月23日土曜日

円安と物価について 雑感 円安よりも物価と賃金が上がらない現状を直視すべし

このところの円安推移がすさまじい。ドル円140円も視野に入ってきている。130円付近ですでに行き過ぎ感を抱いていた私としても、ちょっと警戒しています(この2日、ちょと米景気先行き懸念で戻していますが)。

物価高については、もうメディアでは「円安だから」物価高が起きる、この状況は良くないので政府や日銀が何とかしろ、というここ数十年来のワンパターンな論調で煽っています(円高の時はデフレで何とかしろって煽っていましたね)。都度財務省の役人を始め「専門家」が『政府が介入しても仕方ない』と言い続けているのに。

特にメディアの日銀攻撃が激しい。金融緩和をする総裁には厳しく、金融引き締め派の総裁には優しい、という傾向がありますね(白川総裁の時は、擁護していた)。

個人的には、相対的な物価上昇は円安よりも日本の購買力が落ちた(貧しくなった)ことの方が大きいと考えています。

スポンサーリンク



1.なぜ円安なのか? 

1)米国のインフレが収まらず、さらなる金利上昇が見込まれている。通貨は短期的には金利が低い国から高い国に流れるので、金利が低い国の通貨である円はドルに流れやすい。

 

2)ではなぜ日本は利上げしないのか?

日本では、コロナによる経済抑制が長引いていること、賃金が上がりにくい構造となっていること、などから需要不足が継続しているため、今利上げをすると経済の腰折れを招きかねず、マクロ経済的に利上げができる環境にないから

 

2.物価について

(エコノミストOnline、2186日の記事から)

1)物価上昇率の他国との比較

物価上昇率の対前年(同月比)の増減率を比較したグラフですが、多分2016年を100とすれば、日本は微増(103105程度か)、ユーロ圏は110115、米国は120125ぐらいになっていると思います。

もっと長期で見てみましょう。

2)モノの値段の日米比較(ビッグマックで比較)


フィナンシャルフィールド 2021930日「ビッグマック指数に見る日本の経済力」)

上記の表は、単純に日米のビッグマックの価格の推移を示したグラフです。グラフ上での直近2021年では日本のビッグマック価格が400円弱、米国のビッグマックは6ドル弱となっています。1990年の時点では、日本のビッグマックはやはり400円弱で米国のそれは2ドル強だったのです。

特にリーマンショック後の日米の価格差が激しいですね。原材料(小麦粉とか牛肉とか野菜)の値段はおそらく日米であまり変わらないはずです(グローバルな仕入れ体制を敷いていると思います)。

ドル円の為替レートが一定と仮定しても(例えば110円)、2021年現在、日本のビッグマックは約400円、米国のビッグマックは約660円(6ドル×110円)で、すでに日本より260円も高いのです。

さらに、為替が130円とすれば、ビッグマックは780円となり、110円の時と比べて120円も高くなります。

つまり、ビッグマックの価格差は

  780-400380円 このうち、物価の差が260円、円安における差が120円ということになります。

したがって、価格差の内、大きいのは人件費と賃料だと思います。

 

3)日米マクドナルドの賃金比較(クルーレベル)

日本のマクドナルドの平均賃金はIndeedで調べると、地域によりますが、約852円~1205円となっていました(https://jp.indeed.com/cmp/McDonald's/salaries )。852円というのは地方の最低賃金水準だと思いますが、、、。

一方、アメリカでは、最低賃金を13ドルに引き上げるという記事がありました(マクドナルド、米国で時給引き上げ平均13ドル超に-人手不足に対応)。アメリカでは最低賃金を15ドルにするというFight For 15という運動が盛んなようです。カリフォルニアなどの左派州は盛んに主張しています。

これはクルー(店舗従業員)レベルの賃金比較になります。

日本のマクドナルドの(最低)賃金をざっくり1000円、米国が13ドル(本当に13ドルかわからないけど)、ドル円が110円とすれば、1430円で、4割も米国の方が高いことになります。ドル円が130円だと1,690円となり、日米で7割の人件費格差になってしまいます(マックで同じ仕事をしてこの差は解せないですね)。

 

4)先進国の名目賃金の長期推移



(三井住友アセットマネジメント211215日、「主要先進国における賃金と物価の関係」より)

比較期間や対象が違いますが、2000年の各国の賃金をその国の通貨ベースで100とした場合の平均賃金の伸びを指数化したものとのことです。

日本ではアベノミクスがスタートした2013年ごろがボトムで少し改善しつつありますが、2000年と比較して100を下回っています。米国では160ぐらいになります。概ね先進国では1.5倍以上になっています。

20年で1.5倍だと年率平均約2%の賃金上昇率になります(インフレターゲット並ですね)。

年率2%の違いが20年も積もると6割も差が出てきます。これも一種の「複利効果」?でしょうか。したがって、日本も2%のインフレ、賃金が2%超を目指さないと、米国との格差は広がるばかりです

 

賃金の差がモノの値段に当然反映されているはずです。原油を生産しても、小麦をつくっても人件費はかかります。人件費相当分コモディティの価格に反映されていきます(長期で見た場合)。

人件費が上れば不動産コストも上がります。モノを構成する要素が一つ一つ上昇しているので、それを輸入する日本は相対的に高いモノを買う羽目になってしまっています。

 

適度な物価と賃金の上昇を実施しないと益々世界の中で取り残され、日本は貧しくなっていくばかりなので、残念に思います。

(世界の中間管理職の年収比較、というのがあって、日本の部長クラスの年収で、日本は平均1500万円に対し、タイは1600万円で逆転された、という話を聞いたことがある)


にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ
スポンサーリンク








0 件のコメント:

コメントを投稿