Clorox(クロロックス;CLX)社は、洗剤・漂白剤、ホームケア商品など生活必需品メーカーです。P&Gの米国内ライバルとよく目されています。日本でいえば、さしずめ花王のライバルに当たるライオン的な会社とでも言いましょうか。財務を見ていきます。
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38年連続増配、5年間の増配率の平均が7.7%、同10年で10.4%といい感じです。
P&Gの最近の増配率の低さ(今年はついに1%)と比較すると、優秀な部類だと思います。
業績は売上高が2%、利益が1%程度の年率換算した成長率で、アメリカ経済の「ニューノーマル」を考えると、仕方ないですね。
2011年の営業利益率、営業利益が少なめに出ているのはリストラの関連と思われます。過去の趨勢から、当社の営業利益率は16%~18%のレンジが傾向値となっています。この辺は花王やユニ・チャームよりずっといいですね。
売上高の規模は、約55億ドル;6,000億円程度ですから、花王の半分以下、ユニ・チャームと同じぐらいです。
ちなみにユニ・チャームの営業利益率は10.8%です。花王は13%です。
規模的に10倍以上大きいP&Gの営業利益率は18%~19%なので当社の効率性が目立ちます。
借入金もいい感じ(Net Debt / EBITDA倍率が2倍以内;程よく借入を使って、うまく稼いでいる)。
FCFマージンが10%を超えるので、Cash Cow的なビジネス構造です。売上高の1割を経営陣は、更新投資ではなく戦略的な設備投資・M&Aあるいは株主還元(アメリカ人はあまりやらないが借入金返済)など自由度の高い資金に振り向けることができることを意味しています。
(営業CFから、一般的には競争力維持のための設備投資を引いた額をFCFという概念で投資家は理解している)
配当性向は60%程度とアップアップですね。
さて、Shareholder Equity(株主資本)の部ですが、ざっくり言えば「ひょろひょろ」で、マイナスに陥っている時期すらあります。
日本的に株主資本がマイナスといえば、債務超過を指します。
しかし、CLXは日本的な意味での債務超過とは個人的には思いません。
Common Stock 普通株式(資本金に相当)
Additional paid in Capital 払い込み剰余金(資本剰余金に相当)
Retained earnings 利益剰余金に相当
Treasury Stock 自己株式に相当
Accumulated Other… その他包括利益累積額(評価額差益損など)に相当
要するに利益や資本の蓄積・払い込み以上に自己株買いをした結果であり、本業の損失が払込資本を食い込んでいる日本企業に見られる債務超過とは因果関係が違います。
私は連続増配株投資に際し、あまりこれを気にしていません。 むしろFCFマージンなどキャッシュフローの安定性や成長性に着目しています。キャッシュがなければ配当できませんから。
企業が破たんするか否かは、過去の資本の蓄積の有無ではなく、今お金があるかないかで決まります。極端な例では、自己資本比率が90%あったとしても、次の支払手形が2回連続で落とせなければ破たんです(不渡りとなって、銀行取引停止処分になる)。
では、なぜ資本を食い込んでまで自社株買いをするのか?
一つは日本では会社法で資本充実の原則なるものがあり、配当可能利益が定められているため、基本的に利益剰余金を割り込んでまで配当することに躊躇する経営陣が多い。
二つ目は、アメリカの経営者はサラリーでもらう現金より、ストックオプションなど株式相当の報酬額のほうが大きい役員報酬設計になっています。
(例えばCEOの年収が10億円といっても、現金報酬は1~2億円程度で残りの大部分がスッとっくオプションの価値だったりする)
したがって、自社株を買っておかないと、ストックオプションの玉がなくなる、少しでも買って株価を維持しないと、自分の取り分が小さくなる、などの誘因が働きます。もちろん投資家からのプレッシャーもあります。
こんな理由だからでしょうか(すべて推測ですけど)。
したがって私は配当貴族銘柄の財務分析で、借入金の水準感に関しては、Net Debt / EBITDA倍率を重視(維持できそうか否か)しているわけです。
投資判断はご自分で
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