当ブログファンならおなじみのアボットラボ(ABT)です。ABTは先日、セント・ジュード・メディカルを$25B(約2.7兆円)で買収すると発表しました。ABTの時価総額が$5.5Bなので、ちょっとびっくりしましたね。
しかし、ABTは買収と分社化の繰り返しで成長してきた企業ですから、彼らからみれば普通のことかもしれませんね。
スポンサーリンク
財務から
ABTは2013年1月にアッビイと2つに分社化されましたので、2012年まではアッビイ+アボット、2013年からはアボットのみ、ということになり、連続性はありません。また、2016年の夏ごろから買収したセントジュード・メディカルの業績が加わりますので、また連続性がなくなってしまいます。
後述しますが、当社の主力製品のいくつかは、インド・中国などの新興国で素晴らしいシェアをもっています。しかし、昨今の新興国の経済成長の停滞やドル高でドルベースの業績は伸び悩んでいます。
ABTの評価が今一つ盛り上がらない(私の主観かもしれませんが)のは、良くも悪くもそのM&A戦略という点と、コングロマリット・ディスカウントがあるのではないか(主観)という点です。
MorningStar社によると、また、当社経営陣からも、「利益率の改善が可能」という点について繰り返し言及されています。
当社の営業利益率は、GAAP上(会計上)は12%~14%といったところです。当社のように大型で、各事業分野で競争力が高いポートフォリオを持っている割には利益率が低いと思います。
ジョンソンエンドジョンソンやメドトロニックス、前回のベクトン・ディッキンソンなどは20%内外の利益率となっています。相互シナジーに乏しい事業体の組み合わせ(買収でくっつけただけといえば言いすぎか)なので、各事業間の意思疎通などがないのかもしれません。
ABTの事業領域
栄養食品
医療機器(薬剤ステント)
診断機器(糖尿病患者向け自己血糖値検査機器、アイケア・レーシック治療等)
ブランドジェネリック医薬品等
この中で、栄養食品(妊婦さんや乳幼児向け)は中国などの新興国で2ケタ成長中、ブランドジェネリックはインドをはじめとする新興国でやはり2ケタ成長中、薬剤ステントは業界1位のシェアと競争力はありますが、どれも決定打に欠ける、というきらいがあります(ABTといえば、これだ、という製品が思い浮かばない。しいて言えばステントか)。
そこで、心臓血管領域で高い技術力と競争力を持つセントジュード・メディカルを買収した、ということかもしれません。
同分野でABTは薬剤ステント等で高いシェアを持っています。
これも、ベクトン・ディッキンソンやメドトロニックスといった企業同様、対病院向けに交渉力をキープするための買収の一環だといわれています。
巨大化するアメリカの病院(あるいは病院同士の共同購買行動)に対抗して、医療機器メーカーも品ぞろえを拡大し、病院に選ばれやすいベンダーとなることが求められているからです。
なぜなら、オバマケアによる医療保険改革で、病院側はコストの効率化を一層求められているからです(日本ではなかなかこうもいきませんね。病院も医療機器メーカーも、ついでに患者も、「今のままがいい」というスタンスが崩れません)。
話がそれてしまいました。
MorningStar社では、ABTは今後、4から5%の売上高の成長と利益率の改善が見込まれる点と、セントジュード・メディカルの買収で、パンチ力のある核のある事業が心臓血管領域で確立されるので(買収先の企業は心臓麻痺や心房細動を沈静化したりする機器等や薬剤ステントを効率的に活用するためのモニタリング機器なども開発している)、Economic MoatもWideに「格上げ」できるかもしれない、と言っており、好意的です。
(同社は従来からABTには好意的なコメントが多い)
私見
- 私は、2010年ごろからABTを保有していましたが、2014年ごろABTを売却してアッビイ一本で今もホールドしています。理由は、配当利回りが下がったにもかかわらず、あまり増配してくれなかった点にあります。
- 現在は、配当性向も高くなっていて、それなりに配当にも気遣っているようです。
- 当社の得意な地域が中国やインドあるいはブラジルといった点は、今後の医療環境を考えるうえで非常に魅力的です。
- ただし、医療機器メーカーって、なんとなく、とっつきにくいんです。完全な私見ですが。
- ジョンソンエンドジョンソンも今一つだし、メドトロニクスも成長性がもう一つ、その割に高い技術力で競争が激しい。
- 保有していて、おかしくない企業だと思いますが、現時点での優先順位は高くない業界かもしれません。
- 当社を保有するなら新興国地域の医療成長にbetするような感じでどうぞ。
株価の推移
投資判断はご自分で
応援お願いします。
スポンサーリンク
0 件のコメント:
コメントを投稿