2020年1月19日日曜日

半導体業界から見た米中貿易戦争



米中貿易戦争の本丸ともいうべき、中国IT産業の成長阻止作戦。作戦の最大目的とも言える、米による中国通信機器メーカーHuawei潰し。

今回、業界紙が主催する半導体業界セミナーに出席し、この辺の話を少し聞いてきました。

セミナー自体は、2020年の半導体業界の動向予測という感じで、専門家の方々が多方面のテーマで公演が行われました。

(半導体業界といっても裾野が広いので、テーマが多いんですよ。PC・スマホは当然のこと、最近では自動車業界でも必須事項ですし、産業機械、医療機器、家電等ありとあらゆる製品に半導体が付きます。そして何よりデータセンターが一大巨大産業化しつつありますので)


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そういった広いテーマの一環として、「中国の半導体産業」というテーマがあります。

世界の半導体の半分を消費するのは中国だそうです(あの監視カメラ社会など見ても)。しかし、中国で製造される半導体はその2から3割程度とのことで、中国は「半導体貿易赤字国」である自国の立場を憂慮しており、「半導体の自給自足」を目指しているようです。

そこで「中国製造2030」という長期計画を掲げ、2030年には半導体で世界一位の座につく、というのを国家戦略として取り組んでいます。

アメリカはこの「中国製造2030」を非常に警戒していて、特にハイテク分野で中国に遅れを取ることは、国家安全上の危機であると認識しているようです。

そこで、中国を叩く材料としてHuaweiは好都合だったのです。同社は人民解放軍向けに通信機器を作りながら、民生部門でも通信機器を作っています。

諸説あるもののHuaweiは国営企業という見方が一般的です。
したがって、民営部門で得た技術が軍に応用されて人民解放軍が米国より強くなる、というのが米国の懸念となります。

そこで2019年、アメリカはHuawei社の製品や部品が入っている製品の輸入中止を打ち出しました。アメリカ政府に逆らうと、そりゃ大変なので多くの企業が従ったようです。

しかし、当日の専門家たちの情報では、米国の制裁がかえってHuaweiに危機感を植え付け、かえって同社を強化している、というものでした。

HuaweiのAI向けの最先端半導体の性能が、米国のクアルコムや韓国のサムソンのものとパフォーマンスが変わらない、ということや
そのHuawei、2019年の売上高は2018年より18%も、成長したことなど
Huawei's sales grew in 2019, but it says next year will be 'difficult' (CNN)
があります。

アメリカはこのことを知って、更に対抗策を強める、というのが見方です。とにかく徹底的にHuawei叩きをするだろうと。

また、一社だけでも中国経済に効き目がないので、中国金融市場にも打撃を加える企みのようでした。

中国企業のドル建て債務は増えていて、その債務の期限延長を米政府が規制する、という案が浮上している模様です。

ドル建て債の帝国となった中国、元安で浮かぶ弱点 (ウォールストリートジャーナル)
株とドルで160兆円 中国過剰債務のいつか来た道 (日本経済新聞電子版)

このカードをいつ切るのか、大統領選挙の進行を睨みながらすすめるだろう、という予想でした(自分の選挙のためなら何でもあり)。

ここで、中国企業の財布の紐を閉じられれば、中国経済の混乱は必至でしょう。

しかし、その場合、中国政府が「報復」として米国債を売り浴びせる、という事態も懸念されます。そのことは触れられていませんでしたが、、、。

とにかく米国は中国を徹底的に叩く、というイデオロギー対決も米国の自国経済を犠牲にしてまで(いや世界経済危機を引き起こしかねない)やるのかな? という点がその後疑問に残りましたが、米中覇権争いの行方が21世紀最初の世界覇権争いの中心になったことは間違いなさそうです。

自由経済も「アメリカの手のひらの中で転がっていること」という制約条件付きになりますね。

その他の半導体テーマに関する内容も盛りだくさんで、知識の整理に役立ちました。
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