2020年3月8日日曜日

米国株式市場のダイナミズムを知る






1月30日に開催された「変貌する米国上場市場におけるマーケットの自浄作用」というセミナーからです。

東京証券取引所で夕方(18:30頃)から開催されました。講師は日本証券取引所の方でした。

東証で米国株式市場のセミナー? ってことで、仕事を片付けて聞きに行きました。なるほどって感じでしたね。

どういう銘柄に投資すべきか、考えさせられます。


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なぜか「平成時代の米国市場の変貌」と、アメリカ株の分析に平成という時代の変化を使っています。
もらったセミナー資料を家のPCでPDF化して、それをコピペしていますので、ちょっと見づらく申し訳ない(以下も同じ)
左のグラフから、平成時代(約30年)に米国株の上場企業の時価総額は10.1倍に増加し、一方、日本企業は4.3兆ドルから5.7兆ドルへと32%の増加にとどまっています。

真ん中のグラフは、米国市場における上場企業数は6,627社(ピーク時8,090社)から4,414社へと▲33%、ピーク時(1996年)からは約半減しています。一方、東証では企業数はざっくり倍増(1,597社→3,661社)しています。

右のグラフ。したがって、1社あたりの時価総額は当然に、米国株市場では15倍(5.1億ドル→77億ドル)になっており、日本市場では約4割も減っています(2.7億ドル→1.5億ドル)。

1989年のドル円が約138円、2020年は109円(世界経済ネタ帳より)で、ざっくり22%の円高ですので、東証の日本企業の平均時価総額は、円ベースでも約15%前後下落していることになります。

面白いですね。米国市場は弱肉強食の色合いが強いと言えるのでしょうか。残った企業の時価総額数がすごいですね。一方、日本市場にはいわゆる「ゾンビ企業」がいっぱい残っているのでは? と勘繰りたくなりますね。

バブルもあるので一概に言えませんが、日本企業の一社当たり時価総額が減少、かつ2000年以降ですら横ばい、というのが何ともゾンビ感を醸し出します。

米国市場の時価総額増加要因は何か?

左の円グラフは上場銘柄数に占めるビンテージ(上場後何年経過しているか)を示し、右のグラフは時価総額に占めるビンテージ(上場後の経過年数を時価総額で示す)です。

左のグラフで、平成に入って(上場後30年以内)上場した企業数が全体の88%を占めます。

特に、過去10年で37%!、過去20年で24%となり、20年以内の上場企業数は6割を超えます。

右のグラフでも、平成に入って上場した企業の時価総額合計は全上場企業のそれの67%を占めるそうです。

同じく、過去20年以内に上場した企業の時価総額は38%となります。

右の棒グラフは、平成終わりと平成はじめの時価総額トップ10が今どうなっているか、ということですが、マイクロソフトは平成はじめでは28億ドルの時価総額が平成終わりに1兆8億ドルと385倍になっています。

アップルも175倍です。ジョンソンエンドは25倍、エクソンモービルは5.5倍、コカ・コーラも12.4倍です。

GAFAとバークシャーハザウエイがすごいですね。


上場企業数が減少したのは、IPO件数が減ったことが要因の一つに挙げられています。

細かいデータを割愛しますが、小規模なIPOの減少(facebookのようにある程度大きくなってからIPOを実施する)、VCがIPOではなく企業に売却するようなケース(典型的な例だとYouTubeがGoogleに売却とか、facebookのインスタグラム買収とか)などがあります。

ITバブルで猫も杓子もIPOを実施して、その粗悪さが目立ったので、証券会社・投資家ともIPOのハードルを引き上げたのでしょう。

そしてもう一つの要因として一定数の上場廃止企業数があります。ITバブル崩壊後、リーマンショック後も「IPO数<上場廃止数」が継続しています。結果として上場企業数が減少するのは当然ですね。

ではなぜ上場廃止になるのか?

圧倒的にM&Aや合併が占めています。2016年の内訳では、64%が合併・M&A、上場廃止基準が17%、倒産清算が8%などとなっています。

いやあ、M&Aで上場廃止が毎年上場廃止理由の半分以上を占めている(右グラフ)とはダイナミックですね。

上場廃止基準に抵触したから、ダメ、ってのもその次に多い。

以上まとめると、
アメリカ

  • アメリカ上場企業の時価総額は過去30年に10倍に増加した。一方、上場企業数は3割減少。当然、1社あたり時価総額は増加(15倍)。
  • 過去30年以内に上場したアメリカ企業は上場企業に占める割合は88%にも上る。時価総額でも67%となる。
  • つまり、比較的新しい上場企業の成長がアメリカ株式市場の発展を担っている

  • 上場企業数の減少要因は、IPO数の減少とM&Aの増加による淘汰。
  • IPO数の減少は、選りすぐった企業のIPOが多く、ある程度事業規模が大きくなってからのIPOが目立つ。
  • 上場廃止企業の多くは合併・M&Aによる再編と上場基準の抵触によるもので、弱肉強食と厳格な上場維持基準によるもの。


一方日本では、(私見)

  • 買収防衛策の導入や敵対的買収やアクティビスト投資家に対する偏見により、合併やM&Aは「友好的」な場合に限定される。
  • あいまいな子会社上場基準(あれだけダメ、と言っときながら、ソフトバンクの分社化はあっさり容認とか)や上場基準に抵触しても、いや致命的なコンプライアンス違反があったとしてもネームバリューに負けてしまうなど(東芝が典型)ウエットな運営基準


または、

  • アメリカでは「ゲームチェンジャー」といって業界環境をガラッと変えうる企業へのリスペクトがあるものの、日本では「業界の秩序を乱す」など邪見扱いされることが多く、口だけは推進するものの、実態は「イノベーション」嫌い
  • これにより、魅力的なIPO案件が出てきづらいし、ベンチャー企業の育成システムがまだまだぜい弱。

まとめると日本では、「新参者」への偏見やぜい弱なIPO環境による魅力的な新規IPO企業が出てこない点と既得権益者寄りのM&Aや上場廃止基準ルールの運用という排他的なシステムが株式市場育成の阻害要因になっている可能性が高い、と個人的には思いました。

それを、東証(ウエットで曖昧なのは、あんただろ!!)で分析していてセミナーしている点が、またVery Interestingでした。

アメリカ株のIndexに買うのが最上の策か? 間違っても日本株Indexは買えない。日本株なら個別銘柄しか買えないな。
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