10年ちょっと前、「村上ファンド」で日本中が大騒ぎしました。その村上世彰氏本人が書いた本、しかも、今、この時期に、というとで、本屋で目にしたその瞬間、スマホから電子書籍を買いました(その場ですぐに本屋で買わないところがイイね!)。
村上氏がどんな人物かを、今更説明する必要はないかもしれないが、このブログの読者の方は30代の方も多く、最近投資を始めた方も多いようなので、少し触れておく。
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村上氏とは
村上氏は、灘高校、東大、通産省(現経済産業省)というスーパーエリート。通産省を退職後、いわゆる「村上ファンド」を設立し、投資活動を始める。
投資先のコーポレートガバナンスをただすため、株主提案、委任状争奪戦(プロキシーファイト)、株式公開買い付け(TOB)などを非友好的(敵対的)に仕掛けていく。当時日本人でそんなことを仕掛ける人は皆無で、話題になる。
時代はITバブル崩壊後の2000年ごろから2006年まで。株価も底値から回復基調の時期だっただけに、大きなリターンを得た。
当初は資金が30億円程度の小さなファンドだったが、次第に外国人投資家の資金を得て、最終的には4000億円ほどになったそうだ。
仕掛けた企業も、昭栄、東京スタイル、西武鉄道、日本放送/フジテレビ、阪神鉄道と大きくなっていく。
特に、フジテレビ案件や阪神鉄道案件ではTVにも頻出し、「阪神タイガースを上場させる」と言ったら、当時阪神のシニアディレクターだった星野仙一氏から大反発を買ってしまった。
日本放送/フジテレビ案件で、ホリエモンことライブドアの堀江貴文氏との会話ののちに株を買った、ということになり、地検特捜部の捜査により、逮捕される。
村上氏の発言は正論だったのだが、土地バブル崩壊、ITバブル崩壊後の傷の癒えない株式市場に「会社は株主のもの」「コーポレートガバナンス」など正論を掲げても、それまで保身とぬるま湯に浸っていた日本の経営陣から見れば、「危険人物」だったと思われる。
今では、村上氏の逮捕は「国策」だったのではないか? と言われている。
そんな村上氏の著書だったので、迷わず読んだ次第。
内容は、
なぜ投資家になったのか、
彼の考える「あるべき上場企業の姿」はこうである
投資家、経営者、コーポレートガバナンスはかくあるべき
という彼の根底にある投資理念、投資哲学がまず書いてある。
次に、東京スタイル(プロキシーファイト)、日本放送/フジテレビ、阪神鉄道、IT企業への投資(USEN、楽天、サイバーエージェントなど)など、一連の村上ファンド活動を振り返るセクション
そして、今の日本の問題点はこうだ、という投資家としての彼の意見。
問題点の指摘の後に、「こうするべし」という日本への提案
(問題点の指摘と提案は結構定量的に分析されていて、鋭い)
その後は、逮捕されてから、今まで何をやっていたのかという「個人 村上世彰」氏のこと。
(いろんなところに個人マネーで投資して、成功したり失敗したりした話。これが面白い)
最後に、なぜこの本を今書くのか、という彼なりの説明(ここはちょっと感動した)。
2000年以降の日本の株式市場を振り返る意味でも、大いに読みごたえがある内容だと思います。
彼のいう「コーポレートガバナンス」はざっくり言えば、経営者は、成長資金で使い切れない必要のない利益は株主に還元するなり、給与を上げるなりして、ステークホルダーに報いろ。という点に尽きる。
資金はため込んでもダメで、使って循環させてこそ意味があり、経済全体のためにもなる、と主張していて、これは経済学者がよく言っていることと同じだと思うが、彼は個別の投資案件による体験や知見といったボトムアップでの見解で説得力が違う。
村上氏は本来どんな人なの? 賛否が分かれる
これはむつかしい。マスコミ一般では、大バッシングを受けていて、「役所を辞めて、金もうけがこんなに面白いとは思わなかった」という趣旨の発言が頻繁に出た。「株屋」という印象を強めてしまった。
阪神鉄道の件では報道ステーション(今から考えると、よくTV朝日なんかに出演したなあ)などのTVの討論会では、海千山千の老獪なGCA佐山氏(当時)の質問に対し結構エキセントリックになって持論を展開する経験不足の若造を露呈してしまっていたりした。
(要するに金が目的だから、株価が高ければ売るんだろう?と突っ込まれていた)
要するに、きれいごとをいくら言っても結局は株屋で金の亡者。ほらみろ、悪いことしていたじゃない? というのがそういったTV番組を受け身でしか見ない人の村上氏への印象だろう。
経営者は「あんな奴に金を持たせると、危険だから何とかしろ」と危険分子扱い。出る杭は引っこ抜け、というもの。
コーポレートガバナンス理論が未成熟だったため、幕引きを狙った国にホリエモンと2人が「見せしめ」になったように思われます。
一方、私がある弁護士から聞いた話では、例のエキセントリックな話し方で、ハイボールを投げてくるから(高い要求水準をけしかける)、彼の反対側に雇われるのは少しいやだ、とも言っていた。
村上氏自身の著から 「理念家」で口下手? 個人投資家村上氏は自由な人
村上氏自身の投資哲学、理念は会社法通り、経営者は株主に委任されたもので、効率的に利益を上げて会社を成長させるために存在し、その過程で余剰資金は株主に還元しろ、という感じ。
東京スタイルでは、大幅な配当を要求した村上氏に対し、東京スタイルの大株主でもあったイトーヨーカ堂の伊藤会長が仲立ちして、「少し増配してやるからこれで矛を引っ込めろ」と諭されたが、委託者の利益を追求すべきファンドマネージャーとして妥協できずにプロキシーファイトまで走った、という「理念家」であると。
何が正しいのか、なかなかわからないが、逮捕後以降の個人マネーで投資をする村上氏の姿を見ていると、理念に馬鹿正直で少しコミュニケーション力が足りなかっただけではないか、と思える。
彼には非常に幅広い人脈があり、なんといっても、4人のお子さんのうち、長女、長男は投資家の道を歩んでいる。長女は黒田電気に株主提案を挑んだことで有名になった(その後の強制捜査ほかのことは、長女さんには非常に気の毒で、残念な結果になっている)。
とても「企業乗っ取り屋で金の亡者」には見えなかった(彼自身の言葉だから、という点は割り引かれるべきだが)。
あれだけ、世間から批判されても、世彰氏と同じ投資家を目指す2人の子供(親は後を継げと言ったことはないそうだ)がいる、というのは羨ましいとも思った。
全然比較にならないが、私の長女が偶然、私が中高やっていたバレーボール部に入ったときはなぜか素直にうれしかった。二人でバレーボール談義ができるのはうれしい、
後半の個人で不動産や飲食業に投資する村上世彰氏のような投資活動ができるといいなあ、と素直に思ってしまいました。究極のアーリーリタイア、セミリタイア投資家です。
シンガポールに住んでいるんだったら、引っ込まないで、和製ジム・ロジャースにでもなってくれるといいなあ。
投資家ならぜひ読んでほしい本です。
村上氏は、灘高校、東大、通産省(現経済産業省)というスーパーエリート。通産省を退職後、いわゆる「村上ファンド」を設立し、投資活動を始める。
投資先のコーポレートガバナンスをただすため、株主提案、委任状争奪戦(プロキシーファイト)、株式公開買い付け(TOB)などを非友好的(敵対的)に仕掛けていく。当時日本人でそんなことを仕掛ける人は皆無で、話題になる。
時代はITバブル崩壊後の2000年ごろから2006年まで。株価も底値から回復基調の時期だっただけに、大きなリターンを得た。
当初は資金が30億円程度の小さなファンドだったが、次第に外国人投資家の資金を得て、最終的には4000億円ほどになったそうだ。
仕掛けた企業も、昭栄、東京スタイル、西武鉄道、日本放送/フジテレビ、阪神鉄道と大きくなっていく。
特に、フジテレビ案件や阪神鉄道案件ではTVにも頻出し、「阪神タイガースを上場させる」と言ったら、当時阪神のシニアディレクターだった星野仙一氏から大反発を買ってしまった。
日本放送/フジテレビ案件で、ホリエモンことライブドアの堀江貴文氏との会話ののちに株を買った、ということになり、地検特捜部の捜査により、逮捕される。
村上氏の発言は正論だったのだが、土地バブル崩壊、ITバブル崩壊後の傷の癒えない株式市場に「会社は株主のもの」「コーポレートガバナンス」など正論を掲げても、それまで保身とぬるま湯に浸っていた日本の経営陣から見れば、「危険人物」だったと思われる。
今では、村上氏の逮捕は「国策」だったのではないか? と言われている。
そんな村上氏の著書だったので、迷わず読んだ次第。
内容は、
なぜ投資家になったのか、
彼の考える「あるべき上場企業の姿」はこうである
投資家、経営者、コーポレートガバナンスはかくあるべき
という彼の根底にある投資理念、投資哲学がまず書いてある。
次に、東京スタイル(プロキシーファイト)、日本放送/フジテレビ、阪神鉄道、IT企業への投資(USEN、楽天、サイバーエージェントなど)など、一連の村上ファンド活動を振り返るセクション
そして、今の日本の問題点はこうだ、という投資家としての彼の意見。
問題点の指摘の後に、「こうするべし」という日本への提案
(問題点の指摘と提案は結構定量的に分析されていて、鋭い)
その後は、逮捕されてから、今まで何をやっていたのかという「個人 村上世彰」氏のこと。
(いろんなところに個人マネーで投資して、成功したり失敗したりした話。これが面白い)
最後に、なぜこの本を今書くのか、という彼なりの説明(ここはちょっと感動した)。
2000年以降の日本の株式市場を振り返る意味でも、大いに読みごたえがある内容だと思います。
彼のいう「コーポレートガバナンス」はざっくり言えば、経営者は、成長資金で使い切れない必要のない利益は株主に還元するなり、給与を上げるなりして、ステークホルダーに報いろ。という点に尽きる。
資金はため込んでもダメで、使って循環させてこそ意味があり、経済全体のためにもなる、と主張していて、これは経済学者がよく言っていることと同じだと思うが、彼は個別の投資案件による体験や知見といったボトムアップでの見解で説得力が違う。
村上氏は本来どんな人なの? 賛否が分かれる
これはむつかしい。マスコミ一般では、大バッシングを受けていて、「役所を辞めて、金もうけがこんなに面白いとは思わなかった」という趣旨の発言が頻繁に出た。「株屋」という印象を強めてしまった。
阪神鉄道の件では報道ステーション(今から考えると、よくTV朝日なんかに出演したなあ)などのTVの討論会では、海千山千の老獪なGCA佐山氏(当時)の質問に対し結構エキセントリックになって持論を展開する経験不足の若造を露呈してしまっていたりした。
(要するに金が目的だから、株価が高ければ売るんだろう?と突っ込まれていた)
要するに、きれいごとをいくら言っても結局は株屋で金の亡者。ほらみろ、悪いことしていたじゃない? というのがそういったTV番組を受け身でしか見ない人の村上氏への印象だろう。
経営者は「あんな奴に金を持たせると、危険だから何とかしろ」と危険分子扱い。出る杭は引っこ抜け、というもの。
コーポレートガバナンス理論が未成熟だったため、幕引きを狙った国にホリエモンと2人が「見せしめ」になったように思われます。
一方、私がある弁護士から聞いた話では、例のエキセントリックな話し方で、ハイボールを投げてくるから(高い要求水準をけしかける)、彼の反対側に雇われるのは少しいやだ、とも言っていた。
村上氏自身の著から 「理念家」で口下手? 個人投資家村上氏は自由な人
村上氏自身の投資哲学、理念は会社法通り、経営者は株主に委任されたもので、効率的に利益を上げて会社を成長させるために存在し、その過程で余剰資金は株主に還元しろ、という感じ。
東京スタイルでは、大幅な配当を要求した村上氏に対し、東京スタイルの大株主でもあったイトーヨーカ堂の伊藤会長が仲立ちして、「少し増配してやるからこれで矛を引っ込めろ」と諭されたが、委託者の利益を追求すべきファンドマネージャーとして妥協できずにプロキシーファイトまで走った、という「理念家」であると。
何が正しいのか、なかなかわからないが、逮捕後以降の個人マネーで投資をする村上氏の姿を見ていると、理念に馬鹿正直で少しコミュニケーション力が足りなかっただけではないか、と思える。
彼には非常に幅広い人脈があり、なんといっても、4人のお子さんのうち、長女、長男は投資家の道を歩んでいる。長女は黒田電気に株主提案を挑んだことで有名になった(その後の強制捜査ほかのことは、長女さんには非常に気の毒で、残念な結果になっている)。
とても「企業乗っ取り屋で金の亡者」には見えなかった(彼自身の言葉だから、という点は割り引かれるべきだが)。
あれだけ、世間から批判されても、世彰氏と同じ投資家を目指す2人の子供(親は後を継げと言ったことはないそうだ)がいる、というのは羨ましいとも思った。
全然比較にならないが、私の長女が偶然、私が中高やっていたバレーボール部に入ったときはなぜか素直にうれしかった。二人でバレーボール談義ができるのはうれしい、
後半の個人で不動産や飲食業に投資する村上世彰氏のような投資活動ができるといいなあ、と素直に思ってしまいました。究極のアーリーリタイア、セミリタイア投資家です。
シンガポールに住んでいるんだったら、引っ込まないで、和製ジム・ロジャースにでもなってくれるといいなあ。
投資家ならぜひ読んでほしい本です。
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>>和製ジム・ロジャースにでもなってくれるといいなあ。
返信削除風説の流布とか相場操縦で捜査される図しか思い浮かばないのが残念なところ。
東南アジアには日本よりもかなり大きく賭けているそうですね。
株よりも不動産の話の方が楽しそうに話されていました。
Satchanさん、コメントありがとうございます。
削除最初は「コーポレートガバナンス改革の旗手」ともてはやされて、最後は相場操縦で儲けたやつ、と、マスコミで持ち上げてから叩きつけられる典型的な例になってしまいましたね。
マスコミとは敵に回すと本当に怖い。