このブログの恒例となっている楽天証券セミナー感想記です。今年は以下の人の講演をヒアリングしてきました。数回にわたって紹介します。
(すでにほかの人がブログで紹介するかもしれませんね)。
出所:公式サイト |
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- 竹中平蔵氏
- 窪田真之氏
- 佐々木融氏
- 堀古英司氏
の4名です。今回はJPMの為替ストラテジスト佐々木氏が初登場だと思います。毎回スピーカーの中身が濃くなっているような気がしますね。いいことです。
今日はトップバッターの竹中平蔵氏です。竹中氏はこの講演会の常連となってしまいました。私も彼の話を聞くのが楽しみの一人です。
彼も経済に関心のある証券会社の顧客の前でしゃべるのは、サッカーに例えると「ホームグラウンド」のような親しみを感じるようです。
正月に「朝まで生テレビ」に徹夜でしゃべったのは「アウェー」感覚だったに違いありません。
テーマはマクロ経済の2015年振り返り、2016年とアベノミクス第二章に向けた課題といった感じでしょうか?
まず世界経済
15年も16年も大きくは変わらない。15年の今頃は、中国経済減速懸念、中東の地政学リスク、アメリカの利上げの影響などが懸念されながらも、緩やかな経済成長がおおむね見込まれる、というもの。
16年に関しては、中国に関しては今年、6か年計画の初年度であり、6.5%のGDP成長がむつかしいとなれば、何か政策を発動するのではないか、という感じ。
中東の地政学リスクは、たぶん15年と変わって(当時は欧米対中東のリスクだったような感じだが)、16年はサウジ対イランというイスラム圏内の争いが顕在化して根が深い。
アメリカの利上げは、円安派からみれば日米金利差に乗じて円安要因と言い、円高派からみれば新興国経済の減速が加速化するので、逃避通貨としての円高が起こる、という風に意見が分かれる。
→ これらを総合しながらも、2016年の先進国経済は緩やかな回復を続け、日本経済もおおむね堅調だと思う。
アベノミクス第二ステージの課題。
これまでのアベノミクスは、評価に値する(まずまず)。これからは以下の課題に挑戦してほしい。
財政再建の抜本改革。
このために、社会保障制度見直し。
例:年金の仕組み。経団連の会長に年金を給付する必要はない。年金開始時期をもっとあと寄せにすべし。
(私見:彼はここ数年これを何度も繰り返している。不要な人に給付する金額や、高齢化した分の支給開始を遅らせるなどで、社会保障費全体の削減を図るべし)
岩盤規制を打ち破ろうとしている「新しい芽」を大事に育てるべし
「経済特区」で起こっている規制打破の新波をうまく経済成長に取り入れてほしい。
例
農業生産法人(注:従来の農業生産法人は、農家が株式の50%を持つのがルールであり、民間企業の参入インセンティブが落ちる。経済特区ではこのような縛りがなく、ローソンやオリックスといった法人が特区で行っている成果を見守りたい)
コンセッション:公共サービスの運営を民間が受託するもの。
空港など。仙台空港の運営を日本の東急・前田建設が受託した。関西国際空港がオリックスと仏企業との合弁で受託した。
海外では空港が民間受託になったら、発着数が3倍に増えたとか、空港のすぐそばに大学を作って、一流教授を講師として授業に招いたら、その大学の人気がすごくなったとかそういう成功事例があって、公共部門が「ただ運営しているだけ」以上の付加価値が空港やその周辺経済で、できるはずだ、ほか。
また、日本の中長期的な課題にも安倍内閣で取り組んでほしい、として
移民問題
地方分権
の2つを挙げていました。これは人口減少社会の解決策の一つでもあるので、私も関心が高いです。
日本では、タブーな話題に少しでもタッチすると、アレルギー的な反応を示し、その課題とまともに向き合えなくなってしまう風潮がある(政治家もこのようなアレルギーに立ち向かってまで、採り上げできない)。
しかし、移民問題は、基本的な方針や法律が何もない。その時の世論(いつも、「犯罪が増える」という理由で話が拒絶されるが、シンガポールのように犯罪を最小限に抑えて移民を受け入れる方法などを議論したためしがない)に流される。
労働人口の減少は、当然やってくる。したがって移民に頼らざるを得ない。初めのうちはいろんな議論があるが、メリット・デメリットの議論を行い、デメリットを抑制しながら、日本にとってメリットある仕組みはどうあるべきか、ぐらいの議論をスタートしてほしい。
地方分権も同じようなもの。20年後には地方は特に人口が2割程度減少する。もう地方の県はその管轄人口から県としての管理能力として不十分な規模になる。道州制などを敷き、管轄範囲の効率化を考えるべきである。これには憲法改正が必要であるが、「憲法改正」というと第9条の話が真っ先に出てくるため、話し合いにならない。
以下、個人的な感想
竹中氏に対して、従来は議論の引き出しが多い人だ、と思っていましたが、彼は同じ主張を繰り返している、とやっと気が付きました。
彼は日本では、他の先進国と同じような政策をとれば、まだまだ成長できる余力が残っている。民間企業はいいのだが、既得権益者がかこっている規制が経済の成長を邪魔している、というのがメインメッセージでしたね。改めて思いました。
一人の人間が、あれもこれも専門的にしゃべるのはかえって好きになれない性分なので、少し安心しました。
年金に関する指摘は、もう3年以上しゃべっていると思います。画一的な社会保障の給付制度に反対しているということです。マイナンバーなんかできると、技術的に実現してしまうかもしれませんね。
彼は強者(既得権益者)に厳しい点がウケの悪い原因ですが、「マスコミ」というフィルターを通じて、「弱者切り捨て」論者になってしまう点にマスコミの悪本質が見え隠れしますね。
コンセッション・特区経済は安倍内閣に彼が進めた肝いり政策です。特区で成功すれば日本人の性格からして、「ではウチも」と言って取り入れる自治体が増えて、いつかそれが津波のように日本を変えるという点に期待しているようです。
ボトムアップアプローチ、という感じでしょうか? オリックスの関西国際空港の取り組みは同社の株主(といっても優待目当てですが)として少し調べてみようと思いました。
日本では、特定の話題(憲法改正、地方分権、沖縄基地問題)になると議論が一方的になってしまい、話し合いにならない土壌がある、という彼の指摘には大いに同感するところです。
医薬品に、作用・副作用があるのと同じで、物事を進めると、メリット・デメリットは必ずあります。投資にもリスクもあればリターンもあります。しかし、なぜ日本では片方の側しか見ようとしないのか、私にもよくわかりません。
日本の国が(全体として)よくなっていくという点はいいことだと思いますが、できることとできないことがあるのも事実です。全体の成長がそれほど期待できない中で、現実的な解決策をとれない日本の風土にやや残念に思ってしまいますが、政治の表舞台に立たなくても日本を変えていこう、とする竹中教授の姿勢は今後も見守っていきたいと思いますし、その恩恵に授かれるようにウオッチしていこうと思いました。
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