2016年1月31日日曜日

配当貴族銘柄 PPG Industries Inc 44年連続増配 #29 S&P Dividend Aristocrats その2

2回目はいつものように、定性面、戦略面、当面の見通しなどです。



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これは、売上高の内訳のうち、2005年と、それから10年経過した2014年を比較しています。

2005年の売上高は$10.2B(約1.2兆円)で、2014年は$15.4B(約1.8兆円)となっていますが、その間、売上高に占めるCoating(塗料)の占める割合は55%から93%にアップしています。
一方、Chemicalはゼロとなり、Glass10%を割り込んでいます。


このCoatingビジネスをけん引したのは、M&Aのようです。まるでマイクロソフトやシスコのようなIT企業のように買収を繰り返しています。

一方、2013年には基礎科学事業(コモディティ)を分社化し、2014年にもノンコアのJVの持ち分を売却しています。

さらに、積極的な海外進出を進めています。

現時点では、新興国諸国の経済が不振であり、Emerging Marketに投資、というと「高値掴み」のように見えるかもしれませんが、例えば自動車産業はすでに新興国で根を張った生産・販売活動を行っていることや、結局今、新興国で大きなシェアを持っている企業(例:P&G、ユニリーバ、ネスレなど)も、時代に関係なく当該地域で継続的に活動していたからこそ、地盤がしっかりしているのであって、少なくとも継続的な投資を行うことは大事だと思います。

90年代後半に日本では、円高や通貨危機あるいは国内の不況で、海外進出を中途半端にしてしまった企業がその後苦労しているのだと思います。

塗料の販売先です。建築用途が43%、一般産業28%、自動車産業(新車生産用)8%、再仕上用(自動車)6%他となっています。

さらに、数量ベースだと65%が特定用途向けで35%が一般建築用の模様です。

一般論ですが、高利益率をもたらしそうなものは、航空機・船舶と自動車(新車生産段階)だといわれています(Special Purpose)。一方、建築塗料でMaintenance(修理・リフォームや日曜大工的なもの:Architectural)は利益率が落ちるといわれています。

航空機や新車などは、塗料も新型の開発段階で依頼主(ボーイングやフォードなど)と密な協業が不可欠であり、いったん採用が決まると、その後同じ型のものはずっとそれを使う可能性が高くなります。さらに、それは他社への参入障壁にもなります

一方、建築のうち、新築はまだしも、DIYなどのMaintenance系は価格重視で顧客はペンキを買うことや、店頭販売となるケースが多いので、流通・販促コストが嵩みます。

MorningStar社は、現時点では売上高に占める割合が小さいものの、航空機産業などは有望ではないかと言っています。この分野は当然シェア1位のようです。

1980年ごろは、売上高に占める設備投資の割合は13%もありました。しかし、ここ6年間の平均は2.8%にまで減っています。投資効率を高めて、今のCoatingビジネスに移行しているので、当然といえばそれまでですが、感覚的で恐縮ですが、一般の製造業では5%程度のCapexをイメージしていますので、やはり塗料業界はあまりキャッシュを必要としない産業ではないか、という風に私は理解しました。

その分、M&Aで出来上がったものを買ってくる、というビジネスモデルはアメリカの大企業に共通してみられますね。

製薬業界では、バイオベンチャーを買収して(最近は共同開発が多いけど)、自社の製品として販売しています。

IT業界でも、IBM、インテル、マイクロソフト、グーグルなどは自社にはないノウハウや技術をM&Aで補完して目的を達成しようとしていますね。

当社も自社への設備投資は抑えて、M&Aでシェアをとっていく戦略ですね。

M&Aを除けば、大胆な自社株買いと連続増配で株主に報いています。

当面の見通し
会社側のアナウンスはありませんが、MorningStar社では、売上高が4%程度、EBITDA7%程度のOrganic Growth(為替影響なしベース)が可能ではないか、と言っています。
配当成長も同程度を見込むのが妥当でしょう。

意見・感想
  • 塗料業界はPERが低くなって、配当利回りが3%を超えてくれば、面白いかな(比較的Cash Cowな印象)、という感想を持ちました。
  • 日本の塗料メーカーのIRを読んでいますと、規模拡大が先で株主還元はまだ、というメッセージを行間に読み取れますので、株主還元を期待する向きには米系のPPGあるいはシェアーウィンをお勧めします。
  • 私もロングリストの1社に加えてみようと思います。

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