新日鉄住金とミタル、印鉄鋼大手を共同買収へ (日経新聞電子版 3月2日)
以下抜粋
新日鉄住金は2日、世界鉄鋼最大手のアルセロール・ミタルと、インド鉄鋼大手のエッサール・スチールの共同買収を進める方針を発表した。同日、ミタルとの間で基本契約を締結した。成長が見込めるインド市場を取り込み、需要を開拓する。
印中堅財閥エッサール・グループ傘下のエッサール・スチールはインド鉄鋼第4位の鉄鋼メーカー。2016年の粗鋼生産量は750万トン。現在、インドの倒産・破産法の下で経営再建の手続きに入っている。生産能力の増強へ積極投資したのが裏目に出て、17年3月期までの7年間に6回の最終赤字を計上し多額の負債を抱えていた。
以上抜粋終わり
いやあ、まさしく「昨日の敵は今日の友」と、鉄鋼業界に素人な私は思ってしまいました。
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この2社はかれこれ10数年前、粗鋼生産世界1位、2位の業界リーダーだったんです。
アルセロール・ミタル社はインド人経営者 ラクシュミー・ミタル氏が創業して、相次ぐM&Aで世界1位に上り詰めた辣腕経営者で、「次の標的」が新日鉄だ、と盛んに敵対的買収のうわさがマスコミで言われていました。
その時も私はブログで熱く語っています(旧ブログ)。これも早くも10年前。
「NHKスペシャル取材班 新日鉄 VS ミタル」(ダイヤモンド社)を読んで 2008/1/5
新日鉄 VS アルセロール・ミタル その2 2008/5/7
新日鉄など高炉メーカーは、今の60歳以上の方からすれば、大卒のころは超エリート企業だったので(1940~50年代だと就職人気ランキング首位とかだったと思う)、2006~8年当時、新日鉄がインドの成り上がり者?に買収されることに、世間は大きな抵抗があったんだと思います。
その後まもなく、リーマンショックで、両社ともそれどころ?じゃなくなって、誰も騒がなくなりました(と思う)。
(Yahoo! ファイナンス:日本より)
業績もパッとしません(中国他新興国がイマイチなのだろう)
16年12期は売上高 567億ドル、営業利益41億ドルで盛り返していますが。
今回、経営破たんしたインドのエッサール・スチールを新日鉄住金とアルセロール・ミタルで共同買収するとのこと。
アルセロール側は、同社が元々破たんした新興国の鉄鋼会社を安値で買収して、経営効率を改善して、大きくする、というビジネスモデルで成長した会社で、破たん企業M&Aが得意。
なおかつ、今回は、地元インドの案件です。
一方、新日鉄住金は、自動車鋼板では間違いなく世界ナンバーワンの技術とシェア?がある。また、インドという有望地域に拠点が持てるというメリットが大きい。また、同社の経営効率(生産改善とか)の経営品質の高さも武器だろう。
日本企業の現場レベルの生産性の高さは、確かだと思う。
両社の思惑が一致したようだ。
新日鉄住金(特に新日鉄)は、一気に買収する、というより、連携で「いいとこどり」をするM&A戦略が伝統的で(たぶん、昔々の富士製鉄と日本製鉄の合併から来ているとも言われる)、100%買収でなくともいいのでしょう。
ボロ家(エッサール)を掃除して(ミタル)、リフォームする(新日鉄)という感じかな?
破たん企業と言っても、買収総額が60億ドル(6300億円)と言われている(まだ正式に決まっていない模様。エッサールの管財人と銀行団が買収提案を検討している模様)。
資金負担は折半あるいはややミタル側が多くなるのでは、と観測されている。
エッサールの簡易財務
約7000億円の純資産の会社を6300億円で買収できれば、ディールとしてはいいかもしれませんね。
ただし、借入金が相当あるようです。営業利益が460億円あるのに、純損失▲840億円ってのは、利払い費用他があるようです。
今回、経営破たんしたということなので、銀行側が債務免除、いや、金融支援が前提になっているようです。
高炉も1基ほど持っているようですが、たぶん電炉が主体じゃないのか? エネルギーコストが高い、と同レポートでは指摘しています。
新日鉄は有望なインド市場への大きな足掛かりを得た、ということになるでしょう。
(特に同社株については、わかりませんし、あまり興味はありませんが)
念のため、アルセロール・ミタルについて簡単に触れておく
ミタル氏がインドで電炉からスタートし、破たんした世界各地(新興国)の鉄鋼会社を次々と買収し、欧米でもそのM&Aパワーを発揮しました。
2004年にアメリカのインターナショナルスティール社を買収して、力をつけ、2006年に欧州(ルクセンブルク)の名門アルセロールを敵対的買収で仕留め、たぶんそこで世界1位の鉄鋼会社になったはずです(その後中国の会社に抜かれていると思います)。
で、日本では、世界一位と思っていた新日鉄が、「どこの馬の骨」かわからないインド人に抜かれて、なおかつ、JFEや新日鉄を次の敵対的買収ターゲットにしているらしい、なんて書かれて、大騒ぎになった、というわけです。
しかし、リーマンショックで、借金がメインのM&A戦略は確かとん挫したと思っていました。その後、体力が回復したのでしょうね。
ちなみに、2004年にアメリカのインターナショナル社を売却したのは、現アメリカの商務長官であるウイルバー・ロス(ロスチャイルドとは関係なさそう)氏です。
彼も投資ファンドを経営していて、破たんした米鉄鋼メーカーを買い集めて、まとめてミタルに売却して、巨額の売却益を得たようです。
ちなみに、日本でも破たんした旧幸福銀行(大阪の地銀)を買収し、今関西アーバン銀行になっていますが、一儲けしています(あの時は、リップルウッドが日本長期信用銀行を瑕疵担保責任条項付で買収したことで大騒ぎになって、あまり目立たなかった)。
あと、タイヨウファンドというバリュー株主体のファンド運営をして、日本の上場株にも投資しているらしい(日立マクセル、トプコン、日本写真印刷他)。
とまあ、冒頭の日経新聞の記事を読んで、感じたわけでした。今はミタルも新日鉄も対中国包囲網を敷く方が先手かな?
アルセロール・ミタル社はインド人経営者 ラクシュミー・ミタル氏が創業して、相次ぐM&Aで世界1位に上り詰めた辣腕経営者で、「次の標的」が新日鉄だ、と盛んに敵対的買収のうわさがマスコミで言われていました。
その時も私はブログで熱く語っています(旧ブログ)。これも早くも10年前。
「NHKスペシャル取材班 新日鉄 VS ミタル」(ダイヤモンド社)を読んで 2008/1/5
新日鉄 VS アルセロール・ミタル その2 2008/5/7
新日鉄など高炉メーカーは、今の60歳以上の方からすれば、大卒のころは超エリート企業だったので(1940~50年代だと就職人気ランキング首位とかだったと思う)、2006~8年当時、新日鉄がインドの成り上がり者?に買収されることに、世間は大きな抵抗があったんだと思います。
その後まもなく、リーマンショックで、両社ともそれどころ?じゃなくなって、誰も騒がなくなりました(と思う)。
アルセロール・ミタルの業績推移 |
業績もパッとしません(中国他新興国がイマイチなのだろう)
16年12期は売上高 567億ドル、営業利益41億ドルで盛り返していますが。
今回、経営破たんしたインドのエッサール・スチールを新日鉄住金とアルセロール・ミタルで共同買収するとのこと。
アルセロール側は、同社が元々破たんした新興国の鉄鋼会社を安値で買収して、経営効率を改善して、大きくする、というビジネスモデルで成長した会社で、破たん企業M&Aが得意。
なおかつ、今回は、地元インドの案件です。
一方、新日鉄住金は、自動車鋼板では間違いなく世界ナンバーワンの技術とシェア?がある。また、インドという有望地域に拠点が持てるというメリットが大きい。また、同社の経営効率(生産改善とか)の経営品質の高さも武器だろう。
日本企業の現場レベルの生産性の高さは、確かだと思う。
両社の思惑が一致したようだ。
新日鉄住金(特に新日鉄)は、一気に買収する、というより、連携で「いいとこどり」をするM&A戦略が伝統的で(たぶん、昔々の富士製鉄と日本製鉄の合併から来ているとも言われる)、100%買収でなくともいいのでしょう。
ボロ家(エッサール)を掃除して(ミタル)、リフォームする(新日鉄)という感じかな?
破たん企業と言っても、買収総額が60億ドル(6300億円)と言われている(まだ正式に決まっていない模様。エッサールの管財人と銀行団が買収提案を検討している模様)。
資金負担は折半あるいはややミタル側が多くなるのでは、と観測されている。
エッサールの簡易財務
約7000億円の純資産の会社を6300億円で買収できれば、ディールとしてはいいかもしれませんね。
ただし、借入金が相当あるようです。営業利益が460億円あるのに、純損失▲840億円ってのは、利払い費用他があるようです。
今回、経営破たんしたということなので、銀行側が債務免除、いや、金融支援が前提になっているようです。
高炉も1基ほど持っているようですが、たぶん電炉が主体じゃないのか? エネルギーコストが高い、と同レポートでは指摘しています。
新日鉄は有望なインド市場への大きな足掛かりを得た、ということになるでしょう。
(特に同社株については、わかりませんし、あまり興味はありませんが)
念のため、アルセロール・ミタルについて簡単に触れておく
ミタル氏がインドで電炉からスタートし、破たんした世界各地(新興国)の鉄鋼会社を次々と買収し、欧米でもそのM&Aパワーを発揮しました。
2004年にアメリカのインターナショナルスティール社を買収して、力をつけ、2006年に欧州(ルクセンブルク)の名門アルセロールを敵対的買収で仕留め、たぶんそこで世界1位の鉄鋼会社になったはずです(その後中国の会社に抜かれていると思います)。
で、日本では、世界一位と思っていた新日鉄が、「どこの馬の骨」かわからないインド人に抜かれて、なおかつ、JFEや新日鉄を次の敵対的買収ターゲットにしているらしい、なんて書かれて、大騒ぎになった、というわけです。
しかし、リーマンショックで、借金がメインのM&A戦略は確かとん挫したと思っていました。その後、体力が回復したのでしょうね。
ちなみに、2004年にアメリカのインターナショナル社を売却したのは、現アメリカの商務長官であるウイルバー・ロス(ロスチャイルドとは関係なさそう)氏です。
彼も投資ファンドを経営していて、破たんした米鉄鋼メーカーを買い集めて、まとめてミタルに売却して、巨額の売却益を得たようです。
ちなみに、日本でも破たんした旧幸福銀行(大阪の地銀)を買収し、今関西アーバン銀行になっていますが、一儲けしています(あの時は、リップルウッドが日本長期信用銀行を瑕疵担保責任条項付で買収したことで大騒ぎになって、あまり目立たなかった)。
あと、タイヨウファンドというバリュー株主体のファンド運営をして、日本の上場株にも投資しているらしい(日立マクセル、トプコン、日本写真印刷他)。
とまあ、冒頭の日経新聞の記事を読んで、感じたわけでした。今はミタルも新日鉄も対中国包囲網を敷く方が先手かな?
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