売上高の7割近くを占めるABBVのヒュミラの特許切れ政策は、①ヒュミラの特許を訴訟などでプロテクトしていく、②ヒュミラの売上高減少を補う新薬を開発する、③コストカットに励んで利益を確保する、などの対策が考えられます。
これは分社以前から課題となっていたことで、経営陣は強力なFCF(売上高に対するFCFは3割近く、50億ドルにも上る)で②に注力していたと思います。すなわち金で時間を買う、M&Aや共同研究です。
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それがシャイアーの買収提案(失敗)や、最近のファーマサイクリクス買収などにつながっていると思います。特に後者のファーマサイクリクス買収は、2.5兆円という大枚をはたいた巨額買収で市場をあっと言わせました。
なぜなら同社はジョンソンエンドジョンソンと共同開発した「インブルビカ」がやっと上市できたばかりのベンチャーだったこと、買収するならJNJだろうと思われていたにもかかわらず、ABBVが買収しちゃったからです。
この「インブルビカ」は、臨床試験段階ですでに米FDA(薬の承認機関)から優先審査対象の薬として注目されていました(治験段階で画期的な新薬となる可能性があるものは、他のものに先駆けて時間をかけずに審査する)。それだけ注目度が高い新薬だったのです。
その他の新薬にも有望株があるので、同社は先日2020年を目標とした「Long Term Strategy」を発表しました。
この内容は大きく分けると、①できるだけヒュミラの売上高を伸ばす、②「インブルビカ」の研究を最大限に生かす、③ベキラパックというC型肝炎治療薬をさらにバージョンアップさせた新薬を投入する、④ヒュミラの後継薬を投入するなどの医薬品戦略が柱です。
(長期計画には上記以外のパイプラインでも、2024年までに売上高が30億ドルになるといっていますが、これはちょっと)。
このヒュミラ+新薬の連発攻撃で、2020年には売上高が370億ドル、営業利益率が50%になるといっています(2015年の会社予想は売上高230億ドル、営業利益率は42%ぐらいかな)。
2020年の売上高370億ドルのうち、ヒュミラは180億ドル程度(2015年は140億ドル)、インブルビカは50億ドルぐらいと見積もっているようです。
これが達成できると、EPSはアナリストの試算段階では10ドルになるそうです(2015年のAdjustedベースのEPS予想は4.27ドルです)。EPSの年平均成長率は17%ぐらいあるのではないでしょうか(14.4%で5年で倍増する計算)。
それに対し現在の株価が60ドル台前半というのは大きなギャップがありますね。
(予想EPS4.27ドルに対し15倍前後でしょうか)
まず、ヒュミラが、アメリカで2016年12月、EUでも2018年に特許が切れるのに、そんなに売上高が伸ばせるのかという点でしょう。
会社側が特許が何重にも張り巡らされているので、これにまったく抵触せずにいきなりバイオシミラーをリリースするのは非常にむつかしい、と主張しています。すぐに訴訟に持ち込む算段のようです。訴訟に持ち込んで、時間稼ぎをしている間にどんどんパイプラインを充実させて、和解後の売上高減少を補う戦術の様です。
インブルビカは現在、慢性リンパ白血病(CLL)の第一選択薬になるのでは、と期待されています。
また、非ホジキンリンパ腫の「リツキサン」という薬がありますが、これと併用すると同症状の成績がさらに良くなるのでは、という臨床試験が行われています。
その確率が高そうだ、というのが下馬評です。かりにそうなると、売上高はぐっと増えます。リツキサンは毎年7000億円~8000億円程度の売上高を誇るスーパーブロックバスターです。2014年、世界で最も売れた薬は? を参照
C型肝炎薬は、当社のベキラパックは残念ながらギリアドサイエンシスの「ハーポニ」に大きく後れを取っています(ハーポニを投与すると完治する率が9割以上で、ベキラパックだと8割台という僅差ですが、売上高は数倍も違う)。
この薬の後継薬(完治までの時間が短縮出来たり投薬量が少ないなど)でもかなりの売上高を見込むようです。
しかし、そんなにうまくいくのか、それが課題ですね。
特にヒュミラは、訴訟に持ち込めば、平均5年程度は和解までに時間が稼げる、と言っていますが、医薬品の薬価が高いという声は年々上がってきますし、弱肉強食の世界ですから。
感想
- ABBVの長期計画は、すべてがうまくいった場合のケースと考えたほうが、現時点では無難でしょう。最大ポテンシャルぐらいの感じ。
- しかし、370億ドルはむつかしくとも、250~300億ドルは確保しそうな印象です。
- バイオシミラーは特許訴訟の行方はいざ知らず、浸透するのに時間がかかると思います。2020年だとひょっとして、現状と同じくらいの売上高を確保しているかもしれません。
- (ヒュミラで満足している患者が、「シミラー」というものにどれだけスイッチするのか、副作用などの違いがはっきりするまで、なかなか踏み切れないのでは)
- 2020年までなら連続増配はやってくれると思います。
- 最近、バイオ株全体はボラティリティが高くなっており、当社も例外ではありません。株価がガクッと落ちたら、少しポジションを増やすことも考えたいと思います。
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こんにちわ、私もアベクロ成立時にインフレ懸念から米国株投資に目覚めました。最大で資産の95%がリスク資産でしたが、今年1月から円転しています。2012年-2014年のパフォーマンスは49%でした。FRBが2、3回利上げ後に再戦したいと考えています
返信削除参考にしたいのですが、現在のPPと年平均利回りをお示し頂けないでしょうか
私の場合ですが、2013年4月のPP 総額42,575千円
SPY6%、VB4%、QQQ4%、VGK4%、VWO3%、RWR6%、JNK4%、EMLC3%、LQD11%計45%外貨投資
日本株13%、Jリート5%、日本債権18%、ネット定期等19%計55%円投資
でした
2015年10月末 PP 総額 53,478千円
EMLC1%、ドルMMF47%、日本株10%、Jリート3%、残預貯金39%となっています
過去記事にある程度該当するものがあったと思いますので、そちらをご参照ください。
削除相互リンクのご連絡 お世話になります。貴サイト拝見しまして非常に良いコンテンツを配信されており勝手ながらリンク集に追加させていただきました。(以下URLのヘッダはスパム対策で外していますが、こちらです) konkatsuhack.website/ 相互リンク、ぜひご検討いただければ幸いです。管理人
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