2016年11月13日日曜日

日本たばこ産業(2914)の2016年度3Q 決算の雑感 

日本たばこ産業(JT)の決算は営業利益が対前年度比+8.5%となっている。しかし、継続事業ベースの営業利益(調整後営業利益)を経営指標としており、これは6.6%となっている。一方為替一定ベースだと+11.8%となっている。

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(調整後営業利益=営業利益+M&Aで生じた暖簾償却費+調整項目としている。調整項目=のれんの減損損失±リストラにかかった収益や費用など一時的に発生した収益費用)

JTの場合、ビジネスは比較的単純であるが、為替が複雑でわかりづらい。というのは、主戦場がロシア、英国等の欧州諸国であり、ドル円だけでなく、ルーブルとドル、ポンドとドルなどの相場変動も円ベースの名目上の利益に影響を与えるからである。

また、飲料事業の売却など事業ポートフォリオをゆっくりではあるが確実に向上させているので、比較がさらにむつかしい(株主にとって良いことではあるが)。

したがって、私はあまり会計ベースの利益の増減に一喜一憂せずに、(値上げなどを実施した後でも)たばこがいくら売れたか、調整後利益が前期比や対前年同期比でどうなったか、PMとのシェア争いがどうなっているか、といった点に焦点を絞って、ざっくりと全体を見ている。

調整後営業利益の概念は米国企業が発表する調整後EPSに類似したものであり、米国株に慣れていると特段違和感がない。

その観点から行くと、現時点では巡航速度の業績であると思います。JTでは、中長期的な成長指標として上記の調整後営業利益(国際会計基準なので、M&Aの暖簾は焼却されない)の年率平均の成長率を Mid to High Single Digit としている。ざっくり5%8%の営業利益の成長率と考えていいと思う。

JTの場合、筆頭株主が財務省(33.3%)であり、これと申し合わせすることなく自社株買いを行うと、財務省の議決権行使率が高くなってしまうので、PM(フィリップモリスインターナショナル)のような自社株買いを行いにくい、と想定すれば、MO(アルトリアグループ)やPMとそん色ない財務戦略といえると思う。

(彼らは事業ベースでEPS5%~7%ほど成長させ、自社株買いでさらにEPS1%~3%成長させ、合計で10%前後のEPS成長率を達成したいと考えている。JTには自社株買いが機動的ではない点、日米インフレ率の差などから考えると円ベースでの投資の場合、PMMOと同等と思う)

さらにSMBC日興証券のアナリストレポートによれば(2016829日)、配当金の決定方式に為替変動リスクを排除する方針であるとのことだ(JTIR資料では確認できず)。もしこれが本当ならば、調整後営業利益の増加率=DPS(一株当たり配当)の増配率となる。

毎年6%~8%の増配を円ベースで受けられるとなると、米ドル建てのMOよりも俄然いい投資先(もっとも現時点での配当利回りはMOのほうが高いが)となってくる。

今後の業績を占うに当たっては、電子たばこ(たばこベイパー)の売れ行きや、先日買収したナチュラル・アメリカン・スピリットという有機たばこの売れ行きなどがドライバーになるものと思われる。

特にたばこベイパーは日本が世界で最も普及が進んでいる国のようで、PMJTの激しいシェア争いがすでに繰り広げられている(ブリティッシュ・アメリカン・たばこは先日日本市場入りを表明したばかりで、同社は電子たばこでも日本では今一つ)。

電子たばこの状況を確認する必要があるだろう。(トランプパニックに乗じて拾う、という選択肢もあったが、先日書いた通り、KDDIを選択してしまいました)

私は依然、為替は円高リスクが十分にあると考えており、為替リスクがあるJTの株は、ドル円が100円を切ったりするようなパニック相場になれば、買い増しもいいかもしれない、と考えているが、そういう時って、多分、リスクオフ相場で、ベライゾンとかAT&Tとかを買ってしまいそう。

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