アメリカの通信機器メーカーでルーター・スイッチで60%以上のシェアを持つ、シスコシステムズ(CSCO)は、7月26日付で、ジョン・チェンバースCEOが退任し、後任として、チャック・ロビンズ氏を指名した、と発表した。
感想
ついに、という感じです。チェンバース氏はITバブル時代の最後の戦士?と言ってよかったかもしれませんね。オラクルの創業者であるラリー・エリソン氏も、経営の第一線は後任に任せていますから。
リーマンショック以降、シスコの成長力が衰えてきた、ということで投資家はチェンバース氏の手腕に疑問を呈すようになっていました。2012年ごろから、後任者探しをするといっていましたが、世界的に景気が盛り返さないため、リストラをやったり、中国での問題があったり、でなかなかバトンタッチができなかったのではないかと個人的には推察いたします。
(中国での問題とは、中国の通信機器メーカーで華為(Huawei)という国営企業がありますが、この会社がアメリカで低価格でルーターやサーバーを売り込んでいたのですが、アメリカの保守派の国会議員が、「華為の製品を取り入れると、情報が全部人民解放軍に筒抜けになって、国家安全上同社の製品を米国が買うのは良くない」と言ったことが発端となって、中国が裏から対抗措置を取って、CSCOやIBMの製品を買うな、と中国の大企業に圧力をかけたというもの。おかげでこういった企業は中国向け売上高が激減して、業績が伸び悩む一つの要因となっている)
CSCOを取り巻く環境は、世界経済をそのまま反映しているといえそうで、先進国やその政府機関からの受注はおおむね回復し、新興国でのそれは、今一つと言った感じです。中国では、低粗利の商売を削った、ということで採算的には改善しつつあります。
潤沢なキャッシュフローで、毎期積極的な自社株買いをしています。
M&A戦略には一長一短があって、悩ましいです。確かに、効果測定やその買収価格に疑問がある取引もみられますが、ライバルを先に叩くというか、自社にない技術を取り込んだり、戦略的なM&Aも結構あると思います。
SDN(Software Defined Network)という新しい領域(きわめて簡単に言えば、これまでインターネット通信をスイッチやルーターといったハードウエアでコントロールしていたものを、ソフトウエアを使って制御しようとする技術)を得意とするベンチャーにシェアを奪われており、長期的な競争力を失っているにもかかわらず有効だが打てていない、というのが株式市場のCSCOへの評価だといわれています。
この分野でも、買収で少しずつ、存在感を出しつつあると思っているんですが、違っているかな?
ロイターの配信では、新CEOはM&A戦略を変更するのではないか、という行間をにおわせますが、さてどうでしょうか。近年、M&Aで売上高は伸びていますが、利益が伴っていません(リストラコストなどの「一時的費用」が毎期嵩んでいるので、ノイズが混じっていますが、そういった費用込の利益率は落ちていますね)。
世界景気もそろそろ落ち着きつつあるので、心機一転、次の成長路線を示す時期だったので、良いタイミングだったように思います。
COOにゲーリー・ムーア氏という人がいましたが、彼は決算のテレカンでもあまりしゃべらなかったので、影が薄かったのかな? COOがそのまま昇格するというわけでもないようですね。
CSCO株をすぐに買い増しする意図は、現状ありませんが、シスコの言う、Internet of Everythingという概念といわゆるInternet of Things (IOT:モノのインターネット)は似たような概念?で、インターネットというのがPCやスマホ上の通信手段だけではなく、モノ同士にもつながって、人の意思決定に益々重要になっていく、という過程の中で、シスコは一番アクセスが近い企業だと思っていますので、しばらくホールドしながら機をうかがうこととします。
自社株買いで、一生懸命EPSを支えていた、という感じですね。別に悪い話ではありませんが。
ちなみに、シスコは、2011年から配当を開始しています。現在、年配当は$0.84ドルで、配当利回りは約2.9%、配当性向は39%(予想EPSに対して)となっています。PERは12.9倍です。
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