「原油価格60ドル台へ」なんて言ったすぐに、60ドルを割っちゃいましたね。あ~。今日はちょっと長い文章です。興味ある方はお付き合いください。
ENBの1Q決算が6日に発表されました。
ENBの1Q決算が6日に発表されました。
前年同期比より、調整後利益は約5%ダウンというものでした。
しかし、通期見通しは据え置いています。
以下ENBについてつらつらと書いていきます。
投資の目的
- 連続増配株として、今後も増配が期待できる。会社側の見通しでは、2018年まで年率約15%の増配を予想している。これは強い。ちなみに当社は20年連続増配中。
- つまり、保有しているだけで一株配当が結構高い成長率で増える(可能性が結構ある)。ちなみに増配のペースはKinder Morgan Inc. (KMI)よりも多い(10%のコミットメント)。
- KMIはシェールガス、ENBはオイルサンドと「非在来型エネルギー」の分散投資として。
今後の増配予想 |
これまでの増配実績 |
さらに昔の実績 但し株式分割しているので上図と連続性がありません |
事業の概要
当社は、カナダ・カルガリーに本社を置くパイプライン運営会社です。得意分野は石油製品のパイプライン輸送です。理由はカルガリーのあるアルバータ州は世界有数の油田があるからです(イギリス本土と同じ面積位の大きさだそうです!!!)。
油田、といっても、オイルサンドという「非在来型エネルギー」です。簡単に言えば、土に油が混じっていて、その土(オイルサンド)からオイルの成分(ビチュメンという)を抽出して、それを重油なりガソリンなりに分解して利用します。
ENBはその石油をカナダからアメリカに輸送するパイプラインの運営が基盤です。
当社の強み
カナダのアルバータ州からシカゴをはじめとする五大湖周辺の工業地帯に石油を運ぶMainlineが当社のEconomic Moat(経済の濠:競争優位性)で、五大湖周辺の企業は代替が効きません。
近年は、イリノイ州からオクラホマ州を経由して、ヒューストンの石油化学工業地帯にオイルサンドを運送するパイプラインが開通したこともあり、業績を伸ばしています。
将来性
今後、モントリオールやケベックにアルバータのオイルを運ぶ東部方面の拡大と、ブリティッシュコロンビア州を経てアジア地域に輸出を企図する西部方面への拡大、およびアメリカのノースダコタ州にあるバッケンシェールをシカゴ方面に運ぶバッケンルートなどのパイプライン建設計画があります。
現在、商業的にすでに確約を得ている(消費者が長期契約で石油を買うとコミットしている)と言われているプロジェクト計画がCA$340億ドルあります。これはKinder MorganのUS$180億ドルをはるかにしのぎます。
課題・留意点
2010年ごろに、パイプラインの事故を起こしている。五大湖のうち、スペリオール湖の水面下を通るルートがあったが、これが漏れてしまって、大きな損害を与えてしまった。
環境問題に発展し、大きく非難を浴びた過去がある。
会社側はCEOを刷新して、「安全第一」を経営目標に掲げるようになったが、イメージダウンだけではなく、資金計画にもちょっと狂いが出た点。
さらに、昨年から今年にかけて、financial optimizationと言って、パイプライン等の資産をMLPのような専用ビークルに売却しているが、連結の資本構造がややわかりにくくなってきている。この点は、私の現在のトップ・ピックであるKMIと正反対の資本政策を取っている点が少し引っかかる。
(KMIは資本構造が複雑だといって投資家から敬遠されていたが、昨年すべてをひとまとめにして、投資家から再評価された経緯がある)
KMIは天然ガスのパイプライン輸送が主要ビジネス。当社は石油製品が主要(注:KMIも石油製品を取り扱うし、ENBも天然ガスの輸送はやっている。比較感で言っている)。石油製品の方がパイプを通す段階でかける圧力が大きいので、パイプへの負荷がかかりやすい。よって、事故率は石油製品の方が比較的高い。
あと、根本的な点ですが、当然増配は利益から捻出されますが、配当性向が70%を超えますので、成長資金は増資や借入で調達する割合が大きいです(KMIも同じ)。したがって、リーマンショックのように資本市場が混乱すれば、不利な資金調達を強いられる可能性があります。
最新の情報では、決算発表と同じ日に、アルバータ州の州議会で選挙が行われ、左寄りの革新政党が政権を取って、エネルギー業界に不親切な政策を取るのでは(一時期の豪州のように環境税を課すなど)、など投資家が不安視している模様です。カナダは連邦国家なので、州ごとの自治権は強いようです。
最新の情報では、決算発表と同じ日に、アルバータ州の州議会で選挙が行われ、左寄りの革新政党が政権を取って、エネルギー業界に不親切な政策を取るのでは(一時期の豪州のように環境税を課すなど)、など投資家が不安視している模様です。カナダは連邦国家なので、州ごとの自治権は強いようです。
自分の投資方針
当面2ケタ増配が見込める連続増配株として、引き続きホールド予定。場合によっては買い増しも検討中。
しかし、アグレッシブに行ってよいと思う反面、石油・天然ガスに傾倒しすぎるのではないか、という自分がもう一人いる。つまり、今回の原油相場暴落のような、あまり予想がつかないような出来事を考えると迷うところである。
なんだかんだ言って、結局は割安圏内にあれば、もう少し買い増しを考えてみる、というステイタスである(株価が割安時にお金があればという条件が付くが...)。
計画プロジェクトの実現可能性は、ビッグピクチャーでいえば、十分ある。アメリカ合衆国はカナダ産オイルサンドを欲している(中東産より政治リスクもなく割安)。また、米国内のシェールオイルはおおむね軽油層であるのに対し、オイルサンドは重油層なので、競合しない(しかし、どういうわけか、米民主党政権は競合を脅威に感じているらしい)。
現在、シェールガス・オイルおよびオイルサンドの生産に対する最大のボトルネックは、パイプラインが十分に整備されていないことです。市場環境は未だフォローの風が吹いていると思います(原油相場が$70台であることが望ましいですが)。
中国や日本もカナダ産のオイル・天然ガスは分散調達の観点から好ましいと考えている。
ケベックやモントリオールといった東の製油所も、カナダ国産石油の方がアフリカ等からの輸入石油より安いので、メリットがある。
ケベックやモントリオールといった東の製油所も、カナダ国産石油の方がアフリカ等からの輸入石油より安いので、メリットがある。
しかし、原油相場下落が長引いた場合、生産者が事業継続不可能となるリスクなどで、思ったような生産高が得られない、という可能性もある。
当社自身はToll Gateビジネス(パイプラインへのエネルギーの通行料をもらうフィービジネス)なので、相場リスクがないが石油生産者にある。仕入先が業績悪化に陥れば、売るモノがなくなる(しかし現実には、生産者が経営悪化になれば、大手が買収するので、パイプラインは有効活用されると思う)。
ENBのDebt割合の高さはどうお考えでしょうか?
返信削除それは各人の投資目的やリスク許容度に依拠すると思います。
削除原発事故前の電力会社の負債比率の高さを気にした人って、少なかったと思います。