オーファンドラッグというのは、(私が理解している範囲です、ざっくりですが)国が難病指定している病気に対応する薬です。稀少疾病用医薬品と言われています。
難病指定されている理由ですが、患者数が少なく、治療方法もわからず、有効な治療が見いだせないような状況に陥っている疾病に対する薬。
製薬会社から見れば、患者数が少ないため、薬を作っても十分な投資リターンに見合わないため(臨床試験で必要とされるサンプル数を取るのに莫大な投資が必要な割に、市場=患者数が少ない)、開発の優先順位が後手に回るようなイメージです。
しかし、国(日欧米の先進国)は、それでは困ってしまうので、なんとか薬を開発してほしいのです。特に小児用の疾病に多いように聞いています。たとえば小児がんとかは大人用とは投薬の内容が変わったりするようです。
次世代を担う若い人が、かかった病気で帰らぬ人となっては社会的損失が大きい。
こういったバックグラウンドがあるため、国(日米欧の先進国が主導)製薬会社にインセンティブを持たせています。国によって違いますが、おおむね
l 薬価は製薬会社の意見を最大限尊重するような感じ(つまり原価計算方式が基準と思われる)→有利な価格
l 承認申請の際、優先審査の対象になる
l いったん承認すれば、他社の申請は承認しない(独占的な取扱い)
l 研究開発費の税優遇等が受けられる
等です。
非常に語弊がありますが、結構おいしい支援だと思われます。
優先審査の対象というのは、実は大きなポイントで、半年から1年でも早く審査が終わると、年商数百億円レベルの売上高が予想された場合、その半分でも1年分でも多く開発費が回収できることになりますので、医薬品会社では大きなインセンティブになりえます。
オーファンドラッグではブロックバスター(世界で売上高$1B以上)は望めないものの、スマッシュヒットレベル(売上高$2M~$5M)は計算できそうな感じになるようです。
欧米のメガファーマがリストラで切り捨てた、パイプラインの中に、このようなものが混じっていて、リストラされた研究者がその後独立して、ベンチャー企業で復活するケース(そのベンチャーを元の会社が買い戻したりすることもあるようです)、大学研究者が自分の研究をマネタイズするケースなどがあるようです。
日本でも、JCRファーマ(4552)とアステラス製薬だったかな、辺りはオーファンドラッグを積極的に取り入れるような方針を掲げていたと記憶しています。ただし、欧米には「周回遅れ」だと思います。
したがって、オーファンドラッグで稼ぐとは、ニッチ戦略と考えられ、メガファーマとは差別化できる要素になっています(しかし、メガファーマでもなりふり構わず、ヒット狙いに来ている会社もあります)。
野球に例えると、ホームラン狙いではなくヒット狙いですね。それがオーファンドラッグ企業の戦略になります。
バイオサイエンスの発達が加速化している
バイオサイエンスが発達し、病気を特定する細胞の分子や遺伝子の解明が進んできたので、分子標的薬といった、ピンポイントで病原を駆除する薬の開発が進んでいます。日本は90年代に低分子薬で世界的にヒットを飛ばしてしまったため(武田薬品やエーザイあるいは今の大塚HD)、バイオ技術を軽視し、気が付くと周回遅れになってしまいました。
自分も以前から、オーファンドラッグの存在は知っていて(アッビイが買収に失敗したアイルランドのシャイアーもオーファンドラッグ企業だった。買収して本社をアイルランドに移して、低い税率で過ごそうとしたら、オバマ大統領から「ダメ」と言われて、買収提案を引っ込めた。そのあとファーマサイクリックスを巨額買収した)、興味があったので、BXTLは少し楽しみな存在です。
製薬業界(グローバル)は2010年~2012年ごろ、「パテントクリフ」と言って、大型薬の特許切れが相次ぎ、オバマケアの導入で鳴かず飛ばずの業界でしたが、ギリアドサイエンシスの「ソバルディ」やジョンソンエンドジョンソンとファーマサイクリックスの「イブルチ二ブ」などの画期的新薬が相次ぎ発売され、一気に活気づきました。
更に、日本の小野薬品工業&ブリストルマイヤーズスクイーブ連合が作った、腫瘍免疫薬「ニボルマブ」が新しいがんの治療法の方向性を示すようになりました。
そして今度は、再生医療で盛り上がっています(これはちょっと気が早いと思いますが)。
数年先はどうなっているのか、なかなか読みづらいですが、科学の発達の速さに驚かされますね。
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