2015年6月7日日曜日

東芝の「不適切会計」は4事業「のみ」なのか?





日経新聞の電子版の記事は以下の通り

以下抜粋 
東芝が不適切会計問題で第三者委員会の調査と並行して進めてきた社内調査をほぼ終えたことが分かった。現時点で重大な疑惑は新たに見つかっていないもようだ。第三者委は、インフラ関連や半導体など4分野で指摘された会計処理の妥当性を集中的に調べる。今後は意図的な粉飾や組織的な関与の有無が焦点になる 
 5月15日に発足した第三者委は電力システムなどインフラ、パソコン、半導体、テレビの4分野の会計処理が適切だったかどうかを調べている。東芝も4事業以外にも疑わしい案件がないか自主的に洗い出しを続けてきた。「対象外」の白物家電や医療関連などで問題があれば、追加で第三者委に調査を委嘱する手はずだった。 
 東芝の財務部門や新日本監査法人の担当者らが個別案件について質問票を送ったり聞き取りしたりして調査。5日に開いた第三者委では「本格調査を任せなければならない重大な懸念は確認されなかった」(東芝幹部)という。金額が小さなものも含めて問題案件の見落としがないか詳細な検証を急いでいる。 
 さらに第三者委の側から新たな問題点を指摘して調査対象に加える可能性もある。第三者委は7月中旬メドに調査報告を公表し、それを踏まえて東芝は2014年3月期までの決算修正と、15年3月期決算を発表する 
以上(赤字は筆者がハイライトしました)


今回のニュースでは、第三者委員会の調査対象が4事業に絞られた、それ以外は『無罪』だったという感じかな?

4事業が東芝に占める割合を調べてみました。153期の決算はお預け状態なので、143期の4事業の売上高を調べました。

  • 社会インフラ事業 18,122億円
  • パソコン     7,379憶円
  • 半導体      11,827憶円
  • テレビ      2,318憶円
  • 合計       39,646憶円

(注:半導体が属する電子デバイス事業には一応、ストレージが別途約4,700憶円あるが省いている)
なんと総額4兆円近い事業となる。そして、これは東芝の143期の連結売上高65,025憶円の実に61%に上る。(もっともこの数値自体も「不適切」な可能性がありますが、その大きさを知る目的で書いてみました)

4事業「のみ」という書き方だと、なんとなく大きな感じでもないように聞こえるが、6割の会計が「不適切」だった、となると、「組織ぐるみ」「会社ぐるみ」説を疑ってもよさそうなものだ。

政治に厳しく、財界にやさしい経済新聞社の悪い癖ですね(経団連の隣に本社を置くからなあ)。

さて、この東芝、こちらのブログの調査によるとコーポレートガバナンスの鏡のような会社だったようです。
以下抜粋 
先進的なグループガバナンス・内部統制を構築しておられるモデル企業として東芝さんが登場されているところです。東芝の監査委員である取締役さん(東芝さんは指名委員会等設置会社です)が自社の内部統制について図表を用いながら詳細に解説をされています。私はその解説記事を読み、(3・11の事故前の東京電力さんと同様)非常に素晴らしい内部統制システムを構築されているなぁ、これは人的・物的資源が豊富な東芝さんだからこそ構築できるのであり、なかなかここまで優秀な内部統制システムが他社で構築できるだろうか・・・と感じました。
ただ、このような名門企業でも今回のような会計不正事件が発生し、「内部統制が不十分だった」と記者会見で社長が悔しがるような事態に至っててしまうわけです。ちなみに東芝さんの場合、「不祥事は起こしてはいけない、起こさないためにはどうするか」といった視点、つまり未然防止の視点だけでなく、「不祥事は起きる、起きた時にどうすべきか」といった視点、つまり不正の早期発見のための内部統制にも配慮していたことがうかがわれます。 
以上(赤字は筆者がハイライト)

こういった仕組みが立派な企業ほど疑ってかかった方がいいのか、など思いました。
問題発覚の原因が、内部の派閥抗争って、アホらしいですね。

さて、安倍政権が目指す、ガバナンス改革のうち、自らの内部では、またまた年金問題が出てきました。民間企業では東芝問題が出てきました(まだ問題と決まったわけではないが)。

グローバルスタンダードな経営を目指す、として、東芝のような企業でこのような問題が起こってしまうと、安倍さんもつらいところだと思いますが、アメリカの景気回復も本格化してきた今こそ、思い切って膿を出してもらって(多少バタバタしても景気回復で吸収できると思う)、長期的に日本の投資環境をよくしてほしいものです。




不適切とは、国語辞典で調べると
その場の状況や話題となっている事柄に対する配慮を欠いていること。また、そのさま
だそうです。

要するに空気を読めなかったってことじゃない。

「不適切な会計」って、配慮を欠いた会計? 誰に何の配慮をしたのかな?
意図的に会計値を改ざんすることはやっぱり「粉飾」じゃないのか?

かつてNECは複数年に渡るシステム構築で、やっぱり損益の計上を複数年にわたって進行基準などの処理により作成すべきところを曖昧にしてしまったため、NASDAQから上場廃止を食らっています。


そしてIHI(旧石川島播磨重工業)でも工事進行基準で「不正会計」問題が起きました。

(さすが産経さん、見出しが日経より一歩踏み込んでいますね。しかし、もし派閥抗争だったら経営者が関与しているんじゃないの?)

オリンパスの件では、M&Aの買収費用で粉飾を誤魔化していました。

事件が起きるたびに甘い処理を行っているから、こんな体たらくな事件が続発するのだと思います。下らん名門意識や政治家にも近いなど、バッサリ切って、徹底的にやってほしいです。

かりに、本件もおざなりになるようなことがあれば、ますます、日本企業に投資する意欲が失せてしまいそうです。上場廃止になってもつぶれるわけでもないだろうし、事業ごと他社に買収されれば、一般従業員は首にはならないと思います。むしろ優秀な社員の場合は、かえって、可能性が広がるかもしれません。

東芝の株に投資していた人は、悲惨ですねえ。わかんないですね、投資先が適切か否かって。やっぱり教訓はコングロマリットは派閥抗争が多そうって、感じかな?

それと監査法人さん、不適切か否かを見抜くために(投資家が)雇っているのに。しかし、比較的お堅い新日本監査法人でもわからなかったんだから、監査法人の限界説も考えないといけないかも?


日本の投資環境全体を考えると、今回の事件は決して、4事業「のみ」にしてほしくないです。

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