配当、さらに連続増配投資に欠かせないセクターの一つと言ってよい医薬品メーカーに関する話題です。
医薬品の世界ランキング?である、医薬品世界売上上位30品目のランキングを見つけました。厚生労働省が出している、「医薬品産業強化総合戦略」〜グローバル化を見据えた創薬〜 平成27年9月4日 からです(参考資料)。
日本では、かつては日本発の創薬品目がたくさんあったのだが、低分子薬からバイオ薬に主役が移動するにつれ、日本の世界における創薬プレゼンスが落ちてきたので、国も重い腰を上げて、医薬品産業の創薬を支援しよう、という感じになっているらしい。
さて、ランキングです。30品目を掲載すると、ちょっと多過ぎの気がしたので、17品目にしました。ごめんなさい。
トップ10のうち、赤字で書かれた6品目がバイオ医薬品です。
1位は、ヒュミラです。これは持ち株である、アッビイが開発・販売しています(エーザイは日本で販売権を持っている)。なんと$12B(約1.7兆円)を売り上げるお化け商品です。
毎年2ケタ成長で売上高を伸ばしています。
これは、関節リウマチや乾癬(皮膚病の一種)他の治療薬です。
3位レミケード(JNJ)、4位エンブレムも関節リウマチやクローン病(主として口腔から肛門までの全消化管に、非連続性の慢性肉芽腫性炎症を生じる原因不明の炎症性疾患)の治療薬です。
この3つで約$32B(4.5兆円)も占めます。
関節リウマチ等自己免疫疾患(自分の持つ免疫が、本来攻撃してはいけない関節などを異物とみなして攻撃してしまうもの)に対する注射薬です。老化してボケた(というと語弊があるが)免疫に、「それは攻撃してはダメです」という信号を送ることにより、痛みを和らげるというメカニズムだそうです。
そして、第2位に初登場したのが、昨年一世風靡?したギリアドサイエンシスの期待の新薬だったソバルディ/ハーボニです。これはC型肝炎の患者で、これ以上治療の余地なし、と言われた患者に投与したら、9割以上の確率でC型肝炎が完治した、という画期的な薬でした。
そのままC型肝炎を放置すると、移植手術、肝がんそして死に至る可能性が高かったので、話題になりました。12週間で8百万円の薬代、というのも話題になりました。
(ちなみにレミケードは1回あたり7万円ぐらいだったと思う。これを月1回~2か月に1回)
ヒュミラは2007年ごろ?のデビューで、かつ、適用される症状がたぶん10個以上ある万能薬でかなり世界中で売っていて、1.7兆円ですが、ソバルディ/ハーボニは世界第2位の薬消費国である日本では2014年当時は未承認だったはずで、それでもこの数値ですから、すごい の一言です。
5位のリツキサンはリンパ腫という血液がんによく利用されるバイオ薬です。これも特許が切れたと思います。バイオ医薬品初期のもののはずです。これを創薬したバイオジュン・IDEC社は確か特許料が年間1000億円ぐらい入ってきているはずです(2013年ごろです)。
特許料収入=営業利益と言っていいと思います。
7位のアバスチンは腸がん、8位のハーセプチンは乳がんでは定番で、この3つはいわゆる抗がん剤です。がん治療は放射線、手術、化学療法(抗がん剤)とあるため、薬の出番はやや限定されます。
しかし、今、分子標的薬(この3つも分子標的薬です)という、がん特有の分子だけを攻撃できる抗がん剤をバイオ医薬品で作ることが全盛を迎えつつあります。
こういった分子標的薬は適用できる人が限定されるので(ある程度決まった症状にしか使えない)、数千億円の超大型ヒット薬品になりづらいのですが、最近ガンガン上市されています。
かつて、証券会社のバイサイドのアナリスト(事業会社等にアドバイスするアナリスト。いわゆる証券アナリストは通常セルサイドのアナリストと言われる。バイサイドのアナリストはセルサイドのアナリスト経験者であることが多い)と武田薬品について議論した際、当時の武田の稼ぎ頭だった糖尿病治療薬でアクトスという商品がありました。アナリスト曰く、
「アクトスぐらいのブロックバスター(医薬品では世界で売上高が1000億円を超える薬をこう呼ぶ)だと、原価率なんてたぶん5%~7%ぐらいだと思いますよ」(当時アクトスは売上高が3500億円ぐらいあったと思う。ランキングも10位前後にあったはず)。
と言っていました。「そ、そんな儲かるのか」素人の私の感想です。
アッビイの粗利益率は77%もあります。そこからR&Dが15から17%、販売管理費がたぶん25から30%で残りが営業利益になります。
もちろん、開発中の薬が承認される確率は低いので、ハイリスク・ハイリターンな商売とも言えそうです。
2015年はソバルディ/ハーボニはが1位になるのでしょうかね。バイオ薬全盛時代に低分子薬でこれだけ売れるとは。
この薬も、ギリアド社が創薬したのではなく、バイオベンチャーが創薬研究中だったのを2011年ごろ?に、買収合戦の末、ギリアド社が買収して手に入れた薬です。当時買収額が1.4兆円ぐらいだったと思います(今のレートだと+0.3兆円ぐらいかな)。
当時は、皆、「高すぎる」と批判していましたが、1年で元本を回収できそうですね。
似たような時期に、ブリストルマイヤーズ・スクイーブ社が、やはりC型肝炎の開発をやっているバイオベンチャーを買収したのですが、その額が2,500億円ぐらいでした。その薬は、治療率が8割ぐらいあるのかな。1割の差で天国と地獄のような結果になってしまいましたね。
M&Aの買収額って、難しいですね。「勝てば官軍」なのですが。
バイオ医薬品は単価が高いので、今後もランキングでは趨勢を占めるでしょう。
応援お願いします。
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