村上世彰氏グループが臨時株主総会を起こして話題となった黒田電気(7517)に注目してみた。
臨総は結局会社側が勝利しましたが、現在村上絢さんに、「従業員に株主提案を反対と言わせたのは、経営陣の『やらせ』でしょ?」と突っ込まれ、「そんなことはありません」とか言っているみたい。
財務的にはなかなかいい会社なんですね(村上側に言わせると、コーポレートガバナンスはダメらしいが)。ちょっと黒田電気をいつもの配当貴族テンプレートで分析してみました。
黄色でハイライト下部分がいわゆる業績ファンダメンタルズで、アベノミクス・円安もあって絶好調と言っていいと思います。2ケタ成長です。
その結果、Net Debt(緑の部分;追記:純有利子負債=借入金-現金預金等、ここがマイナスということは実質無借金を意味する)、即ちキャッシュはジャブジャブになってきています。前期に買収を含む大掛かりな投資を行ったようで、キャッシュは減っています。
さて、コーポレートガバナンスを端的に数値で表すと、グレーの部分に該当すると思います。
いくら言葉であーだこーだ言ったとしても、最後は数値に現れると思います。
なんと、発行済み株式総数が増加しています。これは転換社債の転換が終わったための様です。日本企業は多いのですね。資金調達に転換社債を発行するパターンが。
これは経営者が、借入金より、実質的には増資の方がコストが安いと考えているからだと思います。そしてその発想は、ファイナンス音痴・すなわちガバナンスがうまく機能していない、というべきではないかと思います。
配当貴族銘柄を毎週紹介しているこのブログで、発行済み株式総数が直近5年で増加した企業はありません。
黒田電気はキャッシュがジャブジャブである点、黒田日銀バズーカ砲のおかげで銀行借入金はコストが非常に低くなっています。にもかかわらず増資対応した点は、突っ込まれなければならない点だと思います。他の企業の経営者さんは異口同音に、「銀行はナンボでも貸してくれる」(注:私が話を聞く企業は基本的に配当政策を語る企業なので財務的にはいい会社が多い)と言っています。したがって、転換社債の発行は責められるべきかもしれません。
こういう株主軽視の姿勢が村上氏のような「変な虫」に付け入るすきを与えたといって過言ではないと思います。当社は元々バリュエーションが安い卸売業ですから。
比較すると笑われそうだが、JNJはスイスの医療機器会社を買収した際、CASH+株式交換を使いました。これは先方の創業家がJNJの株が欲しいといったからだそうです。
しかし、その後JNJは株式交換で発行した株数を自社株買いで市中から買い戻しました。これがあるべき株主重視姿勢の一例だと思います。
村上氏は現在の黒田の持ち株のうち、一部は創業家から株を買い取ったらしい。創業家ご出身の前社長は2007年ごろ、反社会的勢力と接触があった、という理由により、取締役会で社長を解任されたそうだ。なんかあったのですかね?
投資対象として
電子部品業界・半導体業界というものをどう考えるのか(ルネサスとかエルピーダとか、さらに「不適切会計」の東芝とか、普通は「半導体」と聞いただけでゲッという感じ。インテルとかクアルコムと聞くとそうでもないのだが)にもよるが、村上世彰という『番犬』が睨んでいるのなら、それなりにしっかり経営してくれるんじゃないか、という期待もありますね。
村上氏が言っている「コーポレートガバナンス」自体は、やや無理筋な感想がありますが、彼が睨んでいるだけで、経営者も気が引き締まるってものでしょう。上記のような不注意な転換社債を再度やろうものなら、今度こそ村上氏に怒鳴り込まれるでしょう。
彼がサクッと黒田株を売却してしまうと、「どうせ村上は短期の値上がり狙いか」と言われると思うので、今回は腰を据えてやってほしいなあ。
配当利回りやPERから見れば妙味はありそうですね。
バフェットさんがウェルズ・ファーゴ経営陣を褒めまくっていますが、あれだけ褒められると(投資銀行はやってはならないと再三メッセージを送っている)、経営陣はかえって滅多なことができませんし、実際同社は投資銀行業務にあまり注力せず、商業銀行業務を愚直に推進して、株価も上昇し、全米1の時価総額の銀行になりましたからね。
ウォーレン・バフェットと村上世彰氏。アプローチが違いますが、一般株主が「ただ乗り」できた場合、株式市場においては同じ効果を生むとも言えますね。彼が世間から信頼を取り戻したい(その気があるのか知りませんが)のなら、やっぱりある程度長期で投資を継続することでしょうか?
本当は村上世彰氏とカール・アイカーンの方が、役割・イメージともぴったりなのでしょうが、今回村上さんは「自己資金」で投資しているとのことなので。
黒田電気側の対応が株主フレンドリーになって来れば、村上効果はあったといえるでしょう。今後も時間があれば見ていきます。
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