2015年10月4日日曜日

市場平均に勝つことが経営目標の会社? 配当貴族銘柄の紹介#13 Leggett & Platt (LEG) 44年連続増配 その2

その1で「投資家からみて、かなり戦略的な会社である、という印象を持ちました」と書きましたが、その理由を書いていきたいと思います。


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売上高の内訳

その1ビデオをご覧いただきましたが、当社の取り扱い製品の内訳等をざっくりと。
消費者向け製品が55%、自動車向けが20%、それ以外は自動車以外の法人向け、となっています。米国内が約7割でダントツです。製品ミックスは用途別におおむね準じていると思います。

戦略
投資家向けの説明資料なので、当然?なのか、本当にそうなのかわかりませんが、当社が目指すのは、ずばりTSR in Top Third of S&P 500”(トータルリターンでS&P 500企業の上位1/3になる:トータルリターンは株価リターンに配当利回りを足したもの)という投資家本位のものになっています。

2007年に現在の戦略に舵を切ったようです。それまでは、もう少し一般的な成長する工具キット会社 といった感じの定性的な目標だったようです。
そして、TSRで上位3割を目指すために、何をすべきか、ということをブレイクダウンしていき、それを業務執行に落とし込む、という感じの経営です。

日本企業でも、「あるべき姿」、「なりたい企業像」から落とし込むような中期計画を見かけますが、当社の場合もっと具体的でわかりやすく、目的から逆算してそれを実行している点で、より戦略的といえると思います。
なぜ売上高年率4~5%成長、利益率を2から3%改善、配当利回りが3%4%、自社株買いで毎年2%~4%の株を買い戻す、そうすれば年率12%~15%のTSRが達成可能と言っています。TSR12%あれば、1/3以上行けるのか?に言及がなかったが。

なぜ売上高成長率が4から5%なのか、という点については、23%はGDP成長率、それ以外は自助努力で(革新的な製品提供を続ける、と言っていますが、GDPの名目ベースでアメリカなら4%~5%はイケそうな感じもしますけど)やるとのこと。

M&Aはあんまり大きいのはやらず、コアな投資戦略に見合えばやる、という位置づけ。
したがって、Organic Growthがメインになると思います。

利益率の改善は、これが最も大変だと思うのですが、既存製品の数量増加による効率化・革新的新製品の提供(高付加価値製品の提供)、製品ポートフォリオの機動的な見直し(不採算事業の切り離し)、優先顧客・製品の見極め(売れ筋集中)といった日本でもよく聞かれる程度のことです(しかし、不採算事業の切り離しはもっと機械的でドライに実行していると思います)。

営業CFの使途は、①設備投資、②配当(配当性向60%めど)、③M&A(戦略に合ったものがあれば)、④自社株買いとなっています。

ただし、今の「TSRS&P上位1/3」という経営目標を掲げたCEOが今年で退任するそうです。次期CEOは現COOなので、普通の内部昇格なので特段問題ないと思いますが、現CEO2006年に就任して(当社生え抜きの人だった)、2007年に現在の大胆な目標に切り替えたので、次期CEOがまた別の方法でアプローチするかもしれません。

いつもの配当貴族銘柄の誉れの一枚

44年分が掲載されていなかったので、ちょっと残念ですが、44年間の年平均増配率は13%であるといっています。すごいですね、最近はちょっと寂しいですが。

当社が48年前に上場してからの財務数値がずらっとFactSheetには記載されているのですが、それを見ると、1970年から1971年は配当が減配ではなく据え置きになっていました。
したがって、上場来一度も減配実績がない企業といえると思います。これはすごい。

感想
  • 製品競争力は業界12位の企業(ということのようです)だが、経営的に何か特別なものを感じたわけではありません(上場来減配実績がない、というのは超特別ですが)。
  • 売上高も$3B程度で、アメリカだと「中堅企業」だと思います(MorningStar社もカバーしていません)。
  • しかし、当社は44年の連続増配記録を持っていて、安定的に業績(EPS)を拡大しています。
  • 今後の増配ペースは13%というわけにはいかなさそうですが、まだ増配余力はあると思います。
  • 取り立てて面白みがない業務内容ですが(というと失礼だが)、株価リターンを重視する人には投資妙味があると思います。何しろトータルリターンをS&P500の上位3割以内というのが経営目標ですから、言い換えれば、自社の株価を市場平均以上にすることが自社の存在意義と言っているようなものですから。

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