前回
石油市場へ影響をもたらすものはOPECの生産量からアメリカのシェールオイルに移った。
シェールオイルは1バレル$40だと採算割れであり、生産者の資金繰りも悪化するので、生産量は減少に向かうだろう。
今回
- OPECやアメリカ以外の原油生産国の生産も増加傾向にあるが、産油国の政治など不安定要素もある。
- OPEC以外の国(例:カナダ、ブラジル、メキシコ等)でも、原油価格が低いままだと、投資が不足するため、供給に影響が出る可能性もある。
- 一方、需要の方は、2020年まで世界GDP成長率を4%(IMF予想)とした場合、年間110~130万b/dの増加が予想される。
- 需給に基づけば、年間110~130万b/dの需要を満たすためには、石油価格は$70~$80でなければ生産者側でもインセンティブが働かない。
- したがって、需給で見た場合、2020年末の原油価格は$70~$80と予想する。
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シェール、深海油田、オイルサンドなど高コスト油田の生産量は減るが、OPECやロシアが保有する油田は採算ラインが非常に低いので、現時点で採算割れではない。
更に、国家予算を石油収入に依存するOPEC諸国は、安い油価で減産となると財政上も苦しくなる。よって、油価を安く据え置いても、採算の良くない油田を締め出して、シェアを確保することが重要となる。→ 増産
しかし、メキシコ、カナダあるいはOPECでもベネズエラなどの国では、今の油価だと投資採算が合わないので、これ以上増産ができなかったり、生産減に陥るリスクもある。
更に、イラク・イラン等の国では、精製設備の老朽化、港湾も古く最近の大型タンカーの寄港可能な数にも限りがあるので、これらに投資した場合、やっぱり採算ラインが上昇するので、思ったほど増産できるか不透明。
(現時点では、産油国のソブリン・ウエルス・ファンドが資金回収しているという話もありますね。それが株価下落の一因だとも)
先ほどの、2020年末に需要を満たすための石油の必要量(毎年の増産量)が年間110~130万b/dとして、そのうちの約半分である60万b/dがアメリカ以外の国での増産可能予想となっている。
(その1で、アメリカの場合は石油価格と供給可能量が決まっていて、110マイナス60万バレルb/dとすれば、約50万b/dが米国一国で増産可能な量で、その量を供給しようとすれば、原油価格は$70は最低限確保できないと、増産が間に合わないことになる。
なお、Chevronによれば、油田は毎年一定の投資を継続しないと、15%ぐらいのスピードで埋蔵量が減っていく。継続投資をしても年率3%ぐらいの埋蔵量の減少に見舞われるので、この3%を補って、ネットで増産していかなければならない点を申し添えておく(私見)。要するに純増で、米国とそれ以外で年間110万b/dの増産が必要である。
需要
所得弾力値とは、世界GDPが1%増えると、石油消費量がどれだけ増えるのかを表す値のことの様です。先進国(OECD)は経済成長してもそれほど石油消費量は増えませんが、新興国(No- OECD)はGDPが1%増えると石油消費量は0.675%増えるという分析になっています。
全体としては、世界経済が1%増えると石油は0.45%つまり、約半分のペースで増加するそうです。
(この説明であっているかな。やや心配)
一方、石油価格が上昇しても、それほど原油消費量は影響を受けない、という統計結果になっています。
GDP成長予想が4%となっていますが、ちょっと心配なような気もします。
ただし、それによると、世界全体で年率約1.4%程度の石油消費量の増加が見込まれています。年間増分は130万b/dとなっています。
需給の面から均衡点は?
このグラフは、やや極端ですが、仮に原油がずっと同じ価格だと、世界でどれぐらい供給量が見込めるのか、というのを試算したグラフです。
それにIMFの世界経済成長率予想に基づいて、過去実績並みの石油の需要増加分を加味した世界全体の石油需要を点線で示しています。
たとえば、原油価格が1バレル$40ドル(ブルーのグラフ)で2020年までずっと推移したと仮定した場合、原油の供給量は96百万b/dにも満たない量になります。IMFの経済予想を基にした原油総需要は101百万b/dであるにもかかわらず。
したがって、大幅供給不足という事になります。
そうやって見ていくと、需給が均衡するのは、$70~$80という事になります。
要するに今は在庫調整期間中ということ。
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