2015年10月11日日曜日

原油価格は供給で決まる。なぜ中期的に原油価格が$70~$80に回帰すると考えるのか JOGMECの分析から その1

連続増配と直接関係ありませんが、連続増配ポートフォリオに欠かせない石油株の動向を地に足ついて理解し、自信持ってホールドまたは買いを行うためには役に立ちました。
当たるも八卦、当たらぬも八卦、しかし予測の前提条件はまあまあ納得感があるって感じです。

2番底で落ち込んでいる原油価格(最近底打ちの気配も見えるが、単に利上げが遠のいてドル安になっただけかも?)。この分野に投資している身としては、動向が気になります。ChevronEnbridgeKinder Morgan 売るつもりなんてありません。Chevronの追加投資をどうするか考えているぐらいです。


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要点
  1. 供給量と価格の相関性は需要と価格の相関性よりずっと高い。
  2. 油価は、遅くとも2016年には価格が反転するはず。
  3. 油価は2020年末には$70~$80が需給から考えて妥当なライン。
  4. 価格が上昇すれば、生産は増える。上昇しなければ生産量は増えない。投資しなければ増産できないし、投資するためには一定の油価がなければ採算が合わないので投資できない。
  5. 一方、世界経済が成長すれば、原油需要は一定量増えるため、結局需給がひっ迫する。
  6. 但し、価格は需給よりも金融情勢を反映する割合が増加しており、金融市場から目が離せない。
  7. 金融市場が原油価格の変動に与える影響を踏まえた原油価格モデルを今後は調査する


この内容だとロイターあたりでも盛んに言及されている程度の内容なのですが、そのメカニズムをもう少しご紹介。今回を含め3回シリーズです。ご興味ある方はお付き合いください。

原油市場は構造変化 シェールオイルが持つ意味
従来はOPECの原油生産が及ぼすインパクトが大きかったので、OPECの生産量が原油価格を決めていた。
今はシェールを中心に非OPEC諸国の生産量がもつインパクトが大きくなってきた。
このためOPEC諸国はシェアを維持するために増産している。
これが価格急落の引き金を引いてしまった。

一方、石油の需要は過去のデータから勘案するに、長期的な視点で見れば、原油価格にあまり関係なく、経済成長率との相関が非常に高い。このため、供給サイドで考えることが理にかなっている。


結論としては、足元は供給過剰状態が続くものの、シェールオイルの生産調整が進む2~5年後は需給が均衡する(製造業でいうところの在庫調整ですね)。

この図の左は、原油の需要が伸びた分(黄色の棒グラフ)、それに呼応する供給の増加分の内訳を表している。

2013/上半期(左図の左グラフ))は約140万バレル/日(b/d)の需要増加があったが、供給増はほとんど寄与しなかった。したがって価格もまだ高かったと思います。

2014/上半期(同中グラフ)になると、需要増加分がやや後退して60~70b/dとなったものの、シェールが約150b/dにまで急増産され、それ以外も増産されたため、供給超となった。下半期に原油価格は下落に転じましたね。

2015年上半期(同右グラフ)は、約170b/dの需要増加に対して、シェールは引き続き((前年に加え)150b/dOPEC130b/d増やし、それ以外も増えて、全体で300b/dを超える供給となってしまったようだ。

しかし、2020年に向けた中期的分析は70~80ドルで需給が均衡するはずだ(右グラフ)、ということを意味しています。

米シェールオイルの生産見通し
したがって、米国のシェールオイルの動向が非常に重要になる。
米国の原油生産はリグカウントが減少に転じ、石油生産量もゆっくりと減少に向かっているとのことのようだ。どうやら、生産量が減少する採算ライン?は$40~50の様です

これはシェールオイル業者の業績がいよいよヤバくなってくることを意味しているようです。彼らは金融機関からの要請で、生産した原油の価格の予約を入れていましたが、そろそろその予約が切れてくるころの様です。
15年上半期終了時点で、2016年分の予約をカバーしている平均は18%に過ぎないようです。予約価格は$77ドルが平均の様です。
当然、彼らに対する融資の枠の見直しも入ってきますので、いよいよ資金繰りが悪化するとのようです。

この図は、仮に原油価格が、たとえば黄色の線の場合、$40でずっと同じだった場合、水色の線ならば$80ドルで一定の場合を想定していて、その場合、シェールオイルの生産(バッケン、イーグルフォード、パーミアンの3大油田)がどれくらいになるかを試算しています(尚、省略しましたが生産者側のコスト効率化の見通しを織り込んでいるようです)。

結果、$40だと、採算割れなので、2020年末のシェールの生産量は今の水準と比較して、年間50b/dになります。今の生産量の半分以下になります。
$60(黄緑)だと、2018年ごろに今の生産量を回復し、2020年末時点では520b/d程度で今より+20b/d程度の微増です。
$70(ピンク線)だと、年間+40b/d程度の伸びが見込まれるようです。

以上が原油価格とシェールオイル生産者の生産量の見通しです。現在の油価だと生産量が激減することになりますね。

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