2015年10月14日水曜日

アサヒビールにチャンス到来か? SAB Miller AB InBevの買収提案を受け入れる 巨大ビール会社の誕生予定

日本ではパソコンのDellEMCを買収したことのほうが大きく取り上げられている印象がありますが、あっちは630億ドル、こっちは1044億ドルですからねえ。

日本のマスコミはキリンやアサヒに気を遣っているのでしょうか?
いずれにせよ、短期間で大型M&A2件も成立したのは、株式市場にとって明るい話題でしょう。


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Anheuser-Busch InBevBUD)は5度目のオファーで、ついにSAB MillerSAB)の取締役会を説得しました。世界1位のビール会社が2位の買収をすることになりそうです。

今後、1028日まで、他の買収候補者からの提案を猶予したのち、各国の規制当局の独禁法審査(特にアメリカが注目されると思う)をクリアし、ABIの株主総会で決議されれば、決まるようです。

私もあっちこっち欧米企業の(敵対的な)M&Aを見てきましたが、5度目の提案で決まった、というのは初めてだと思います。
3度目ぐらいが多いかなあ。東西問わず「3度目の正直」だと思っていました。
SABの取締役会が粘りましたね。筆頭株主のAltria GroupMO)がたぶん3度目ぐらいで賛成したのに、その後まだ粘っていましたから。

ABIの発表による買収提案経過は
  • 917日 1株£38の現金買収と一部株式交換の提案
  • 922日 1株£40の現金買収と一部株式交換
  • 107日 1株£42.15の現金買収と一部株式交換
  • 1012日 1株£43.5の現金買収と一部株式交換
  • 1013日 1株£44の現金買収と一部株式交換

このうち、917日と22日の提案はPrivateなもの(非公式)だったといっています。
したがって、提案を公表してからだと「3度目の正直」になりますね。

なお、£44というのは買収提案直前のSABの株価から約50%のプレミアムということになるそうです。TOBのプレミアム相場は30%程度なので、かなり思い切った提案ですね。

一方、「一部株式交換」(partial share alternativePSA)だと、ABI1株に対し0.48369の制限株と約£3.8の現金を配るそうです。

この制限株(Restricted Shares)は5年間非公開株とされ、5年間の売却制約(lock up)期間があり、5年後にはABIの普通株1株に交換できるという仕組みだそうです。

なお、配当や議決権はABIの普通株と同じです。

つまり、5年間はじっと持っていてくれ、という意味があるようです。

尚、独禁法などで仮に買収が成立しなかった場合、ABIはSABに違約金30億ドルを支払うことになっています。この30億ドルというのは、記憶ベースでは、AT&TがT-Mobile USAへの買収提案時に提示した金額と同じだったような(M&Aは当局から反対されダメになった縁起が良くない数値です)。

MOとしては、ABIの大株主として残るつもりなのでしょうかね。ABIの大株主は確か3G キャピタル(バークシャー・ハザウエイと組んでケチャップのハインツを買収したファンド)と、ベルギーの大株主が君臨していたと思います。

ABIのカルロス・ブリトーCEOは、ブラジル人ですが、アメリカ人以上にコストカッターらしいので、50%もプレミアムを乗っけたら、かなりきついリストラが待っていそうです。
(昔のブログでインベブがアンハイザー・ブッシュを買収した経緯を細かく書いていますので、インベブはある程度知っています)


出来上がりの会社はネスレやP&Gよりも時価総額で大きくなる、と言われています(果たして単純にそうなるかな?)

ABIの資金調達方法は開示されていないと思いますが、借金と増資だと思います。ちなみに確かアンハイザー・ブッシュを買収した際には、買収総額の7割近くを借入金で賄ったと思います。

その当時(2009年)は、インベブの主要マーケットのブラジルが絶好調で何とかうまくいきましたが、今はブラジルや中国はスローな経済状況なのでやや心配が残ります。

それにしても、ABIのホップ・ステップ・ジャンプでのM&Aを梃とした買収戦略は今のところ、世界で最もうまくいっているといってもいいかもしれません。

  1. 2004年ブラジルで圧倒的なシェアを持ったアムベブ社がベルギーのインターブリューという大手麦酒メーカー(ハイネケンのような会社)を買収。インベブとなる。おそらくこの時点ではSABのほうがビールの生産量は多かったと思う。
  2. 2009年 インベブ社はアンハイザー・ブッシュを買収ABIとなる。これで圧倒的世界1位。
  3. 2015年 ABISABを買収

さて、独禁法当局を説得させるためには、買収後の各市場でのシェアをある程度落とさなければなりません。つまり資産売却です。売却代金で借入金の返済も見込んでいると思います。

その「おこぼれ」資産を買収して、世界市場への足掛かりを得たいのがアサヒビールではないかと思っています。

キリンはあっちこっち買収して、たぶんこれ以上は投資家から批判を受けそうです(海外買収はあんまり成功していない)。

サントリーは、昨年アメリカでビーム社をドカンと買収したので、今はむつかしいような気がします。

アサヒは上記2社と比較して、M&Aは中規模の買収を繰り返し、これまでのところ最もうまく業績を安定成長させています。インベブがアンハイザー・ブッシュを買収した際、韓国のビール会社を売却しようとしたことがありましたが、買収候補にアサヒがうわさされていました(どうも提案価格で負けたようでした)。

日本企業がこの巨大買収に関係するとしたら、この辺でしょう。
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