2015年10月13日火曜日

原油価格は供給で決まる。なぜ中期的に原油価格が$70~$80に回帰すると考えるのか JOGMECの分析から その3 金融市場が与える影響

原油価格は需給「だけ」で決まる時代は終わりました。ヘッジファンド他金融市場による影響も大きい、と言われています。

では、どれぐらいが金融市場で決まるのか、を分析したそうです。


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上の図の左の表は、2015年第1四半期における、1か月あたり世界の原油供給量が約1700億ドル、同WTI先物取引高が8400億ドル、同NYSE取引1.5兆ドル、同世界の株式取引高約8.2兆ドルで、WTI先物の取引高はニューヨーク証券取引所の取引高の半分にも達しているといっています(特に下落が激しかったからなあ)。

右の図は、1991年から原油先物市場における機関投資家やヘッジファンドの取引高の割合を示しています。

2002年ごろを境に、青とピンクの色分けをしていますが、そのころから非当事者の比重が大きくなっていますね。

2002年以前は、そういった実需外の取引はせいぜい2割以下だったのですが、それ以降はグングンその比率が増えています。これはITバブル崩壊において、FRBが劇的に金利を引き下げたことが要因と言われています(時を同じく新興国ブームが始まったことでもあった)。

分析では、原油価格は供給、需要、為替指数(ドルインデックス)、株式指数(S&P500)、金利(米国10年債)を使って、VARモデルで表しているのと事です。
結果としては当然、需給の変動情報を基に金融要因が変動して、価格に影響を与えているようです。
左のグラフは、少し見づらいですが、青線が実際の変動率で、赤線がVARモデルによる理論値だそうで、実際の数値と理論値はまあまあ当たっている、という事を言っています。

右のグラフは、価格変動に与える要因が需給要因と思われるものが緑、明らかに金融要因と思われるものがピンク色、その中間(受給由来の金融要因:たぶんサウジが減産するぞ、と言えば、それを基に取引するヘッジファンドとかそんなイメージだと思うけど、金融由来との違いがイマイチ判らない)が黄緑です。

2002年までは金融系の要因は33%でしたがそれ以降は45%に増加しています。
「その他」とは地政学的なことや市場心理あるいは分類・分析不能なものの様です。
つまり、2002年までは金利が上昇すると、それは経済活動が上昇することを意味するので、原油価格は上昇する、という動きがあった。

しかし、現在では金利が上昇すると、投資家の資金が原油市場から他の高利回り商品に移動する、との読みから価格が下落する方向に移っている、とのことです。
(今後もこのような動きになるのかは別の話だと思います、念のため)

そして、今後は、その1、その2で見た需給要因に金融市場の動きを加味したVAR要因を合わせて、より精緻な原油価格予想モデルを作りたい、とJOGMECさんでは考えているようです。

感想
  1. OPEC諸国のうちいくつか、特にサウジアラビア、は原油価格が最低でも$90ぐらいないと国家財政の収支が赤字になるはずです。
  2. 他の湾岸諸国でも、価格は違えど、ある程度の油価を維持しなければ財政赤字になるはずです。
  3. 今は多少の赤字国債を出しても、消化できますが、原油価格が低いままだと財政問題が政情不安につながるリスクを心配してしまいます(今のうちはSWF:ソブリン・ウエルス・ファンドの取り崩しで対応しているようですが)
  4. また、IMFの成長見通しは少しずつ低くなっているような感じです。2015年は3.3%16年は現時点で3.8%ぐらいだと思います。この成長率が下がれば、需要自体が下がるリスクがあります。
  5. そういった要因を加味しても、プラスマイナスで2020年に$80という現時点での予想は受け入れやすい数値かな、と。

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